羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
ウブヲの席

9月17日の羽生ノート。『オジサン・フォー』というタイトルでウブヲのことを書いた。たった3つ前の書き込みである。さあこれから好きな芝居をやるぞと、希望に燃えているウブヲのことを書いたのだ。

ウブヲも希望に燃えていたかもしれないが、私だって燃えていた。50歳以上の男優達を集めて芝居を創るのは面白いと思ったからだ。

すでにオジサン達は私の頭の中で動いていた。山中さんや中村さんには大御所風に出てもらって、ウブヲは狂言回し。あと、現役のソニーはもちろん、トミーや渡辺一哉にオファーをかければ、舞台はかなり充実する。歌の上手い役者がたくさん居る。いやいやいや、めっちゃカッコイイ舞台だ。

だからあのあと一度会ったときに、「ウブオじゃなくて、私のプロデュースでやるよ」と言っておいた。私がやった方がいいと思った。その方が自由に創れて面倒がない。そのくらい私は本気だった。

 

まさかウブヲが死んじゃうなんて。

 

このところウブヲはここ数年で一番元気そうだった。ウブヲが若返って楽しそうだと、まわりで噂し合っていた。

12月5日木曜日の午前中。私は自宅で、例の1003号室兄弟(羽生ノート『大パニック』参照)と一緒に、保険書類に振込先銀行口座を記入したりしていたのだ。

「銀行コードって書いてある。何、これ? 知らん」

1003号室兄が教えてくれた。

「みずほ銀行ならたぶん0001番です」

「ええっ、なんでそんなこと知ってるの?」

「まあ…仕事で」

「金融関係にお勤め?」

なーんてことを呑気にしゃべったりしていたのである。

途中ピロロンとスマホが鳴った。Eメールの着信だ。ふだん24時間マナーモードにしていて気づくのは翌日、なんてことがしょっちゅうなのに、このとき解除していたのは、1003号室兄弟と朝からメールのやり取りをしていたからである。

兄弟が帰った後、そういえばメールが来ていたなと思い出した。陽子さんからだった。件名は「四柳さんのこと」。嫌な予感がした。

 

ウブヲが危篤だという。暗い穴にずーんと落ちた気がした。

陽子さんと話した。彼女は午後一の電車で病院のある飯能に向かうと言う。ウブヲは集中治療室にいるのでたくさんが押し掛けるわけにはいかない。陽子さんが行けるのは、奥様と特別な絆があるからである。わかっていたが、私はどうしても会わないわけにはいかなかった。

森に囲まれた美しい病院にウブヲは居た。奥様は信じられないくらい落ち着いていて、暖かく対応してくださった。私は、押し掛けた非礼を詫びた。

ああウブヲ、どうしてこんなところに寝っ転がっているのだ。顔色は良く、肌のツヤだって申し分ない。この前会った時より白髪混じり髪の毛が伸びていた。

「ウブヲ」と私は言った。もう一度「ウブヲ」と呼び、それから「まゆみだよ」と言った。

するとウブヲが仰天したように身体をよじらせた。私は「あっ」と飛び上がり、陽子さんが「聞こえてる!」と小さく叫んだ。きっと陽子さんも奥様も私とウブヲの強い絆を思ったに違いないが、私にはウブヲがビビッて逃げ出そうとしているように見えた。

私はウブヲの腕をさすりながら、オジサン俳優達を集めた芝居のことをグズグズと喋った。

「ウブヲが居ないとできないよ」

ほとんど愚痴と泣き落としだった。

 

泣き落としでウブヲが起き上がるはずもなかった。

翌朝、訃報を聞いた。やはり陽子さんからである。結局、集中治療室に転がっているウブヲに会えたのは、十月劇場関係者では私だけだった。奇跡のような幸運を、私にウブヲの危篤を知らせてくれた陽子さんに心から感謝したい。

この日はEricoの芝居の初日だった。ウブヲは予約を入れていた。きっと今夜劇場に行くに違いないと思ったら、涙があふれて止まらなくなった。

まりえとKAZUHOにメールを入れて、劇場の片隅にウブヲの席を作ってもらった。

 

ウブヲ、隣の席に座っていたのは、私の娘だよ。

気恥ずかしかったでしょ、と思ったらまた泣けてきた。

 

明日、Ericoや麻理枝と会いにいく。

| 羽生まゆみ | - | 06:43 | - | -
大パニック

洗濯機の給水ホースが水栓から外れたときの水漏れ事故がどんな状況になるものか、ご存知の方は少ないと思われる。私自身、とんでもなく大変ということはなんとなく聞いていたが、実際の状況は私のイメージをはるかに越えるものであった。

空青く晴れ渡った晩秋の午前中、私も洗濯に大忙しだったが、あっちでもこっちでも洗濯機は回っていたに違いない……もちろん1003号室も。

 

ふと、キッチンでミョーな音がしていることに気づいた。シンクに水が落ちる音である。水道を閉め忘れたのだろうか。それにしては音がデカい。何だか変だ。

様子を見に行って腰が抜けかけた。なんと、天井から滝のように水が流れ落ちていたのである。

滝は一つで治まらなかった。抜けかけた腰を立て直す間もなく新たな音が加わったのだ。玄関だ! このときはもう「1003号室がやらかしやがった!」とわかっていた。洗濯機の給水ホースが外れていることも。ぼーっとしているヒマはない。頭に浮かんだのは「電話をしなくては」であった。どこに? 管理会社だ。携帯を手に取った。その時、居間に三つ目の滝が出現した。

どひゃーっ!

そばにはパソコンがある。ノートパソコンとデスクトップの両方を大わらわで避難させた。

そんなあいだも滝はますます勢いを増している。さあ電話だ。ところがどこを押せばいいのかわからない。ラインを開いたりEメールを開けたりめちゃくちゃである。ああ、私パニックに陥っていると思った。

電話帳アプリを見つけた。これだ。だが今度は管理会社の名前が思い出せない。電話帳の「あ」から順番にさがしていき「み」で見つかった。こういう時お友達の少ない私はラッキーである。これがKAZUHOやEricoだったら登録件数が多すぎて明日の朝までかかるだろう。

 

長くなるので管理会社との細かい遣り取りは省く。とにかく「早く来てくれ」と叫びまくった。

耳にスマホを押しつけたまま階段を駆け上がる。1003号室のドアをノックし、ドアノブを回して引っ張った。あら? 開いた。居るの? 洗濯機の回る音が聞こえた。

私は奥に向かってわめいた。

「ちょっと! 何やってるの! 洗濯機のホースが外れてるわよっ!」

休日を楽しんでいたに違いない青年が「へ?」という顔で出てきた。

不幸中の幸いだった。これですぐに水は止められる。

「洗濯機! 水! 早く止めて!」

休日男子はなんだかわからないという顔でいったん引っ込み、再び出てきた。

「ホース、外れてたでしょっ」

「はい」

「うち、水漏れでとんでもないことになっているんだからねっ!」

「すみません」

私は役者を怒鳴るときと同じくらいの声を張り上げた。

「すみませんじゃすまないわよ!」

シマッタ、携帯はまだ管理会社と繋がったままである。

「ごめんなさい。今の1003号室に言ったの」

「はい、わかってます」

「とにかく早く来て。生易しい水漏れ事故じゃないんだから。すごいんだから。滝みたいに落ちてるんだから」

「わかりました」

電話を切ってから青年に、

「一緒に来て」

二人で階段を下りた。

玄関に立ち、二人で流れ落ちる滝を眺めた。

青年は言った。

「ホースが外れるとこんなふうになるんですか?」

わりと落ち着いた声だった。

私は答えた。

「そうだね。なるみたいだね。なってるよね」

この時点ですでに怒りは収まっていた。なんかもう笑っちゃいそうになっていた。

 

この後、大量の給水シートを抱えてやってきた、本人言うところの「施工会社の下請けの下請け」という人とのやり取りも面白かったが、ここまでの書き込みですでに長すぎるのでこれも省く。

 

重ねて不幸中の幸いと言うか、不幸中の幸いが二個あればたいした物だが、滝は電化製品を避けるように落ちており、滝の大きさの割に被害は小さかった。

1003号室の兄弟はちゃんとしており、夜、兄がビシッとスーツを着て挨拶に現れた。菓子折持参である。

「弟がごめいわくをおかけしました」

私は「もう怒っていないから」と言った。それから、こうも付け加えた。

「今後一生私に使い倒されることになるんだからね。重たいもの動かすときは呼ぶからすぐ来てよ」

実際、間近に濡れたカーペットの取り換え作業がある。カーペットはすでにAmazonに発注済である。

「わかりました。いつでも呼んでください」

いい子だ。私の男優たちよりよほど役に立つと思った。

 

そんなわけで電話番号を訊き、しばらくしてスマホの電話帳に登録した。

すぐさまラインが来た。

「登録しました」

びっくりした。ひょんなことから貴重なライン友達ができた。

 

「おやすみ」のスタンプを送っておいた。

 

| 羽生まゆみ | - | 01:21 | - | -
フェアリーたち

新体操の世界選手権。フェアリージャパンのお嬢さん方が団体総合で銀メダルを取ったというニュースが入ってきた。俄かには信じがたい出来事である。

「ブルガリアは出ていなかったの? イタリアは?」

本当に失礼な私。

大急ぎでスマホ検索をかけるも金がロシアだったことくらいしかわからない。

翌日、今度は種目別のボールで金メダルを取った。金!

そんなわけで昨夜は夜中に新体操の録画中継を観て楽しんだ。結果がわかっているから落ち着いて観ることができた。ところが結果を知らなかったフープ・クラブ種目でも銀を取ったから眠りかけていた目がピッカリ覚めた。いったいいつのまに、フェアリージャパンはこんなに強くなったのだ。

おめでとう、フェアリーたち。きついお稽古の様子をTVで観たことがある。頑張ったね。

点数から言ってもロシアの尻尾は確実に見えている。五輪での団体総合金もあながち夢ではないぞ。

ああ、打倒ロシアをアーティスティックスイミング(シンクロ)ではなく新体操に託すことになるとは。まったくもって信じられない。

 

強化本部長の山崎浩子さんがTVにちらっと映った。お若い。奇跡の若さだ、バケモンだ。現役だったロス五輪のころとちっとも変らない。8位入賞だったことやボールのパフォーマンスをはっきりと覚えている。技術は上位と差があったかもしれないが、しなやかさがウリのヨーロッパの選手とは違う、独特の力強さが好きだった。髪型もお団子じゃなくてポニーテールだったのだが、それがとてもかっこ良かった。

山崎さんに一つお願いがある。素顔はとっても可愛らしい妖精たちの、あのヒドイお化粧をなんとかしてほしい。あれではあんまりだ。可哀そうだ。

数年前に見たとき「今回のメンバーはとってもスタイルが良いのにちょっと顔が惜しいな」と、ファンの勝手さで勝手なことを思っていた。でもお稽古場の素顔の彼女らはみんな、びっくり仰天の美人さん。となりで練習していたロシア選手にも負けていなかった。

なんで大切な本番でわざわざブスにするのだろう。アーティスティックスイミングもそうだが、スポンサーに化粧品メーカーが入るとこうなっちまう。

「審査員のみなさんに表情がよくわかるように」とか「立体感がポイント」などとステロタイプの御託を並べて、せっかくの美人さんをブス顔にしてしまうのだ。「シンクロやバレエや新体操のメイクはこういうもの」と決めつけるのではなく、それこそアーティスティックな頭の持ち主がメイクサポートに入って、可愛らしいお嬢さん方をますます可愛らしくしてほしいと願うのである。

山崎さんはヘンテコなメイクはきっぱりやらなかった。そういうところが好きだった。

 

私はうちのフェアリー達には、メイクについてもあれこれダメ出しするよ。5回行われる通し稽古のときに必ずメイクはチェックする。役柄なんか関係ない。どんな役でも美しくあることは必須条件だ。舞台では正真正銘の妖精でいてほしい。

ダメを出しても言うこときかないけどね。どーも全体的に薄いのが不満である。「唇赤くしろ」と言ってもききゃあしない。

こんなことを書いていたらEricoがメイクが激しく下手だった頃のことを思い出した。

まだ劇団を揚げる前のこと。衣装・メイク合わせのとき、プロデュース兼主演の中村さんに叱られた。

「おいっ、誰かEricoにメイク教えてやれ!」

 

Erico24才。若き日の思い出である。

| 羽生まゆみ | - | 23:47 | - | -
オジサン・フォー

昔の役者仲間ウブオが長年お勤めした西武を早期退職したとのことで、お祝いの集まりがあった。山中さんが集合をかけて、ソニーや陽子さんや中村さん、またチカとも久々に飲めてうれしかった。

ウブヲの就職が決まったとき、みんなでおめでとうと言ったのを覚えている。私や仲間の多くがアルバイトをしながらの役者生活だったから、慶応大学から一流企業に就職をしたウブヲは、もう眩しい別の世界の人だった。それまで真っ当な人とはまったく思っていなかったが、やろうと思えば真っ当な人にもなれるんだと思った。

就職おめでとうから退職おめでとうまでの時間……今日まで切れそうでついぞ切れなかった私たちの長い月日を思う。

 

で、これから真っ当じゃない生活が始まるわけである。ウブヲの芝居への思いは消えることなく、身体の奥にチロチロと、熾火のように在ったのね。

心持ちがスッキリしたウブオは見た目までスッキリして、お肌はツヤツヤして若返ったように見える。見た目ってメンタルが影響するとあらためて思った次第。前に稽古場で会ったときはなんだか具合が悪そうで心配したものだ。

もっとも私はあの人もこの人もみんな「具合が悪そうだ。死ぬんじゃないか」にしてしまう癖がある。痩せていても太っていても、食欲がなかったり少し顔色が悪いだけで、「死ぬんじゃないか」と心配になる。頼むからみんな、私の前に登場するときはなるたけパリッとして、右手に菓子パン、左手にバナナを持って現れてほしい。

なんかもう、心配するのは嫌だ。耐えられない。私には心配事がたんとある。特に、エアポとイナゲさんとセイちゃんが独身なのが気がかりだ。

 

話が逸れた。

というわけで、お肌ツヤツヤのウブヲは芝居を打つ気満々である。昨日の席でもみんなにオファーをかけていた。私には「演出か女優のどっちか選べ」と言う。

Ericoが即答で「出ますよ」と了解して、さすが私の役者だわとほれぼれした。かっこ良かった。これは私に演出をやれということなのだろうかとちょっと考えたりしたが、よくわからん。いずれにしろEricoに説得されたら私は演出を受けてしまうので、しばらく会わないことにしよう。今の私に女優はもちろん演出も無理だ。

もっともホンのオファーは「喜んで書く」と、これは私も即答した。過去の作品をオジサンたち用にリメイクする仕事は楽しそうである。Ericoは「『地下室のダンディ(ロング・グッドバイ)』が良い」と言っていた。出演者の一人だったチカも「あれはオジサンがやった方が合うかも」と賛成であった。

さっそく頭の中でウブヲ、ソニー、中村さん、山中さんのオジサン・フォーが動き始めている。しかしこれは危険だ。正式に決まってもいないのに動き始めるとたいがいぽしゃる。まだ真面目に考えない方がいいと、急いでオジサン・フォーを頭の中から追い出す私であった。

 

山中さん、お疲れ様でした。こういう時に集まりをかける山中さんを本当にすごいと思う。尊敬する。

 

| 羽生まゆみ | - | 02:18 | - | -
難しいお年頃(練習生日記6)

久し振りに羽生ノートを開けてびっくり、8月は一回も更新していなかった。

ダラダラ病が悪化して、家に居るときはたいがいソファにごろりんと寝転んだまま過ごしている。芝居に対する意欲も湧いてこないし、何を書く気もしない。もういいの。このまま一生ダラダラする覚悟である。テレビ観ながら死んでやる。

 

ボクシングの練習だけは楽しい。玉組HPの掲示版にジムでの姿をアップしたが、白いグローブがとても似合っているのがおわかりかと思う。洋服は何を着てもたいがい似合うがまさかグローブまで似合うとは予想していなかった。こうなってくるとフェンシングのスーツや剣なんかも似合いそうだ。自分が恐い。

ただ、何でも似合うと豪語するわりにはボクシングの練習着だけはもうひとつパッとしない。練習生の皆さんに合わせてスパッツとショートパンツの重ね履きをしてみたりするのだが、これがどうにもオトボケた感じになってしまうのだ。たぶん足が短かすぎるのが敗因だと思う。残念である。

何を遠慮しておる、自由に好きな練習着を着ればいいじゃないかと言われそうだが、ダメダメ、あまり目立ちたくない。周囲に溶け込んでいたい。同じでありたい。何しろジムでは年齢が圧倒的に上である。ムキダシの頑張った格好して「勘違いした運動オタクのババア」などと悪口言われたら舌噛んで死んでしまいたい。

チラホラお見かけする20代30代の女子練習生とも、もう少しこっちが上手になってから張り合う予定である。もちろんいずれ張り合う。今は大人しくしているほかはない。

 

前にも書いたがトレーナーの皆さんは感じが良くてとっても親切である。「バカっ」とか「センス悪すぎ」とか罵倒されない。あまりにも優しいので、まさか私を年寄り扱いしているんじゃないでしょうねと疑念を抱くこともある。それはそれで舌噛んで死んでしまいたい。

メンドクセーなあとお思いだろうが、実際私は難しいお年頃なのである。『取り扱い注意』とオデコに貼っておきたいくらいだ。

毎回違うトレーナーの指導を受けられるのが楽しい。指導にもそれぞれ個性があって、たとえばミット打ちなど、フォームをあまり気にせずガンガン打たせてくれる人も居れば、ひとつひとつ細かく指導してくれる人も居る。だから飽きない。こちらも皆さん20代30代の指導者である。しかし私はきっちり敬語で話している。馴れ馴れしくならないよう、これはもう本当に肝に銘じている。

 

突然話題は変わる。

私はかねてより「平等」を標榜する共産主義国家に独裁者が生まれるのが不思議で仕方なかった。

私たちは今、民主主義国家が共産主義国家に変貌していく過程を、間近で見ることができているのかもしれない。それが良いとか悪いとかという問題ではない。その国の国民がそれを望むのならば、よその国の人間がとやかく言う筋合いではない。(とりあえず安全保障の問題はこっちに置いておいての話だけど)

私の長年の疑問が解けるかもしれない。今大騒ぎになっている反日やらなんやらは表面的なことである。あちら様の反日行動を批判したり気分を悪くしたりしている場合ではない。

ものすごいお勉強の機会を与えられていると、私自身は思っている。

| 羽生まゆみ | - | 11:04 | - | -
芸能通

宮迫さんと亮さんの記者会見に泣いてしまったよ。昼間ネットで読んで泣いて、夜TVで観てまた泣いた。

特段ファンでもないし、芸能人が記者にいたぶられるのは観ていて気分の良いものではないので観るつもりもなかったのだが、Yahoo! JAPANについ引っかかり、そしたらそのままむさぼり読んでしまった。

人を説得するのはやはり「覚悟」なんだよなーと改めて思った。相方とのやりとりのくだりで亮さんが口にした「腹をくくって」という言葉が最も私の胸を突いた。

今回の件が表に出てから今日まで、なーんか嫌だったのは仲間たちの偉そうなコメントで、「反省してもらいたいと思います」なんて台詞が片っ端から不快だった。とにかく嫌なのだ、悪い事した仲間を批判するシーンが。仲間なのに。たとえその意見が正しくても。あんたどれだけ立派な人なのよと言いたくなる。この世で偽善者が最も嫌いだ。

その点、私これまで石野卓球って人をこれっぽっちも知らなかったのだけれど、相方が逮捕されてからずーっと、ひたすらかっこ良かったなあ。なので今回も私には、宮迫さんを責めない蛍原さんをステキと思ってしまう。宮迫さんが泣きながら相方を語るシーンは圧巻であった。私、もらい泣きの爆泣きだったもん。

で、思った。麻理恵がコカイン吸っても、トミーがタクシーの運転手さん殴っても、Ericoが酔っぱらったあげくヘンタイしても、私は最後までみんなを守るからね。

(このところすっかり芸能通に変身した私の書き込みでした。とは言え不快な書き込みに思ったら俄か芸能通に免じてお許しください。西川きよしファンやTOKIOファンの皆さまに叱られそうだ。)

 

さて、作品一覧に『シリウス、あるいは犬の星』がアップされた。クリックしたらいきなりEricoの写真が出てドキッとした。

「え? 私?」

似てた。衣装が私の私物で髪型もベリーショートだからかな。

これまで玉組に書いた作品と他に書き下ろした作品は分けてアップしていたのだけれど、今回それを一緒にして発表順に並べた。(劇団旗揚げ以前の作品だけ枠外にあり。)

それでページをしみじみとながめたわけだけれど、平成24年〜平成27年がぽっかり空白であることに気付いた。私この4年間何やっていたんだろうとあれこれ記憶をまさぐってしまったよ。父とラリーとゴトーさんが死んじゃったことは思い出した。

空白ののち、急に『狐の姫と詐欺師たち』を打つことにしたのだが、まあ打ってよかった。やめるところだった。危なかった。

 

十代のころ思い描いたような人生にはならなかった。「何者」かにならずに私は一生を終える。

でもHPに並んだ作品の一群を見るとき、告白を許してもらえるなら、私は少しばかり満足である。ちょびっとだけね。

| 羽生まゆみ | - | 18:04 | - | -
不安的中

年に一度の健康診断である。

あー嫌だ。私の心配は、血がドロドロかサラサラかとか、肺に白い影だのピンクの影が存在するかではなく、ズバリ、身体測定であった。

ああっ、不安は的中した。体重は増加し、体脂肪率は4%近くアップし、そして身長ときたら、頭が抜けて飛んでいくんじゃないかと思えるほど首筋を伸び上げたにもかかわらず、4仆未鵑澄私のちっこい身長で4个歪砲ぁ身長って高くなるもんだと思っていた。まさか低くなるとは驚きである。

4年半続けてきた激しい筋トレをいきなりやめてしまったのだから覚悟はしていた。太るリスクは充分考えての、あえての決断だったのだ。それでも現実をつきつけられるとガックシ肩が落ちるね。

リスクはなるたけ押さえようと頑張ってはきた。週3日のボクシングジムと週2日のフィットネスクラブ通いはよほどのことがない限り休まない。元々決めたことは守りたいタチである。4年半の筋トレも週3日、休むことは滅多になかった。あちら様の都合で休みになると怒りを押し隠すのに苦労したくらいだ。

週5日も運動していてダメとなるとどうしていいかわからない。ボクシングもずんばもマーシャルもけっこうな有酸素運動なのだがまだ足りないというのか。筋トレだって怒ってくれる人はいないけど自分でやれることはやっている。プッシュアップもランジもいまだ美しいフォームだ。ホントだよ。

ま、食べ過ぎってことだね。自分じゃ普通の量だと思っているのだがそうでもないらしい。でも食べないなんてダメだよ。しっかり食べなくては。(食べ過ぎると後ろめたくなるのは私も同じだけど。)

先日ボクシングジムのトレーナーに、

「ちゃんと食べてますか」

と訊かれた。

「はい、食べてますよ」

トレーナーはにっこり笑って、

「良かった」

ちょっと心がほんわかした。人に食べろと言われると嬉しくなるのはなぜだろう。そういえばモヒカントレーナーにもよく「ちゃんと食えよ」と言われたものだ。私にそんなこと言ってくれる人はもう居ないんだなあと思ったら、退会して初めて、退会したことが悲しくなった。

そしてふと思った。私は大昔から役者たちに「ちゃんと食べてよっ」と稽古場で言いまくってきた。心はほんわかしたでしょうねっ。してないなあ、きっと。

食べる姿を見ないと心配でしかたないのだ。お金がないんじゃないかとまで想像が膨らむ。心がほんわかしなくていいから、とにかく稽古場では何か食ってくれ。私の目の前でモグモグ食べて、私を安心させてくれ。

 

さて、羽生ノートや掲示板の書き込みから、周囲がざわざわっとざわついているようだ。玉組、そろそろ何かやるんじゃないかってね。そんなことないよ。まだ大丈夫だよ。

お腹はぽよよんだけど気持は充実している。だからいずれ何かやるだろう。

 

さあ、今日もボクシングジムだ。

体重のためではないよ。戦いに行く。

戦うのが好きだから。

| 羽生まゆみ | - | 07:18 | - | -
9時間!

Ericoからご飯のお誘いメールがあって了解の返事をした。

KAZUHOからもご飯のお誘いメールがあって了解の返事をした。

それぞれ私に内緒のお話があるというわけではないらしい。で、2コを1コにまとめちまった。

悪意むんむんの内緒のお話があればそれはそれで面白かったのだが、まあ平和でにぎやかなお食事会の方がいいに決まっている。

前半の話題はもっぱら公演が終わったばかりのEricoプロジェクトのことだったかな。Ericoはコヤ入りしてから稽古中に過呼吸を起こして皆さんにご迷惑をかけたらしい。

私は驚いて言った。

「過呼吸ってほんとになるんだ。AKBなどのアイドルがちょいちょい倒れるやつでしょ? 甘えてんじゃねーよと思ってた」

Ericoも頷いて言った。

「私も甘えてんじゃねーよと思ってた」

過呼吸なんて、てっきり若いお嬢さん方の自意識過剰病だと思っていた。誤解だった。深く反省した。

そういえば私も「めまい」なんぞ病気のうちに入らんと思っていたが、自分がなってみて初めて辛さがわかったものだ。万が一稽古中にメニエールが再発したら、私きっと稽古を休む。気合いではどうにもならないことを今では知っている。

まさかEricoが具合が悪くなるとはね。

2ヶ月に1回という過密な稽古と公演で、Ericoもさすがに疲れがたまってきているのだろう。それはコヤに詰めているKAZUHOと麻理枝も似たようなもので、続けざまに公演を打つことの大変さは並大抵のことではない。

コヤでEricoとKAZUHOにハグされたよ。Ericoは涙ぐんでいるし、KAZUHOは収穫3日目の菜っ葉みたいに萎れていた。二人とも私の顔を見て脱力したらしいが、こういうのは大変めずらしい。たいがいの役者(特に男優)は私を見るとむしろ筋肉が固まる。ハグや脱力どころか、後ずさりで逃げにかかるもの。

 

帰宅したときすでに10時を回っていた。お腹が空いていることに気付いた。冷蔵庫から手羽先を取り出しながら、お食事会だったのになんでお腹が空いているんだろうと不思議に思った。そして気付いた。お食事は「昼ごはん」だったのだ。つまり私達は「晩ごはん」を忘れてずーっとお喋りしていたのである。9時間も!

そんなわけで夜の10時に手羽先を焼いて食べた。

そうそう、掲示板にも書いたが、昼ごはんより和風喫茶で食べたクリームあんみつとほうじ茶セットの方がよほど高額だった。貧乏臭いことは言いたくないが、最後に入ったベローチェのコーヒー200円にホッとしたね。

ベローチェでは合流した麻理枝も加えてたくさんお話した。やっぱり頼りになるのは女だわ。玉組は大昔からそうだった‥‥実感。

さあErico、ちょっと休んだら次だ。Roundぁ 共演者のトミーにたっぷり甘えなさい。

トミー、Ericoを頼むよ。

 

トミーは男の中では例外的にマシな方である。

| 羽生まゆみ | - | 04:19 | - | -
記憶違い

EricoプロジェクトRoundの公演も本日が楽日である。

早いなあ、もう3つ終わったよ。私のときは「極寒の2月」なんて台詞が作中あったくらいなのに、気づけば梅雨だ。4つめの次回は真夏の公演である。

Ericoは謙虚に真摯に取り組んでいる。えらいよまったく。私なんぞ、ベテランと呼ばれるようになった頃は「文句」しかなかったもん。全然謙虚じゃなかった。いっつも怒ってた。ヘボい役者ほど文句が多い。

 

お芝居を観るたびに稽古場が恋しくなるが、しかしこの頃の私は芝居とは関係のない日常を過ごしている。サンドバッグ相手に戦ったり、ソファに寝転んでお菓子食べたりTV観たり、オリンピックのチケットを取る為に50万人の行列に並んだりね。

ほかには、この頃はよく映画館に通っている。先日何十年振りかで『ゴッドファーザー』を観て激しく感動した。その数日前に観たばかりの『空母いぶき』がぶっ飛んだもの。それなりに面白かったのに、そんな気持ちも敵潜水艦と一緒に海の藻屑と消えてしまったよ。

感動したのは多分に「懐かしさ」もあったかもしれない。ドン・ヴィトー・コルレオーネという名前が出てきただけで「そうだった、そうだった。コルレオーネだった!」と胸がいっぱいになった。

『ゴッドファーザー』は気ら靴泙任△襪里如記憶にあるシーンがごっちゃになっていたり、良いシーンがすっかり記憶から脱落していたりで、ああ私って残念な数十年を過ごしていたのねと悔いた。こんな良い映画、しっかり記憶しておきたかった。

私の記憶ではなぜか、パパ・コルレオーネ(マーロン・ブランド)と三男のマイケル(アル・パチーノ)には大きな確執があったのだがとんだ勘違いだった。記憶ってほんと、当てにならないものなのね。

長男のソニー(ジェームズ・カーン)についても大いなる記憶違いをしていた。ソニーはバカタレだと記憶していたのだ。とんでもなかった。私、登場人物の中でソニーが一番好きかも。これについてはたぶん、私自身の成長によるものだと思う。無垢な少女の私は気短ですぐ逆上するソニーを「良い」とは思わなかったのだろう。「バカタレ」の烙印をペタリと押して、それが記憶に残ったというわけだ。

今は逆上する男が好き。いざという時、家族が危険な目に遭う時、侮辱された時、男は殴らなくてはいけない。腕っぷしが強くなくてはいけない。と、無垢な少女から垢まみれの大人に変身した私は思う。なにはともあれ、ジェームズ・カーン、めっちゃいいわ。『ミザリー』と『愛と哀しみのボレロ』にも出ていたことを思い出した。やっぱり良かった。この二つもまた観たい。リバイバル上映してくれないかなあ。

 

もっとちゃんとしたストーリー説明と感想が書ければよいのだがむつかしい。ごめんなさい。

そういえばTVで『美女と野獣』をやっていてやっぱり面白かった。野獣の皮がむけて中から野獣疲れしたヘロヘロ王子が出てくるところが好き。二度目の鑑賞だから覚悟ができていて楽しく観ることができた。映画館で初めて観たときは、ヒラヒラな王子ファッションの王子が颯爽と出てくるとばかり思っていたので、ヘロヘロ姿に激しくガッカリして椅子の下に崩れ落ちそうになった。できればヘロヘロ姿よりヒラヒラ姿が観たかった。今回は「きゃあ、疲れてる〜ぅ」と笑った。

面白かったので、現在上映中の『アラジン』を観ることにした。

 

| 羽生まゆみ | - | 05:09 | - | -
男女平等

ちょっと考えさせられる新聞記事を目にした。

カンヌ国際映画祭の記者会見で、アメリカの女性記者がタランティーノ監督に「才能ある女優を起用しているのになぜ台詞を与えなかったのか」と質問したらしい。そのせいでタランティーノ監督のご機嫌が悪くなったというのだ。

別にタランティーノのご機嫌が気になったわけではないよ。気になったのは質問の方である。質問は暗にタランティーノ監督を女性差別主義者と批判しているわけで、監督のご機嫌が悪くなるのは当然であろう。

この頃アカデミー賞やら国際映画祭やらで、私にはわけのわからん人権問題が議論されている。女性や黒人の受賞者が少ないとか、過去に女性差別発言のあった俳優が受賞するのはおかしいのではないかとかね。

人権について書くのは恐ろしい。私が目にした新聞記事とは日経新聞の署名記事なのだが、記事自体がなんとなーく奥歯に物のはさまったような文章で、記者自身の意見はあまりよくわからなかった。

私も気を付けながら書く。

さて、私は男性差別主義者である。劇団を揚げてからは、女優達に男優達の悪口を言いながら生きてきた。「男は役にたたん」と、たぶん一千回くらい口にしていると思う。

しかしその主義者の私が、主義者だからといって男優の台詞を少なくしたことなんぞいっぺんもない。むしろ女優より多いくらいで、主役の重責も、その「役にたたん」男優が担ってきた。

私の芝居を観て「女優になぜ台詞を与えないのか」と質問されても困る。

「だって自然にそうなっちゃうんだもん」と答えるほかない。思いついちゃったことを書くだけだ。

脚本くらい自由に書かせろと言いたい。だいたい台詞の数を男女平等にしたくても、そもそも数えるのが大変である。一場書き終わる度に、いち、にっ、さん、と勘定して、「うげっ、男の方が多い!」と次の場で調整しなくてはならんかったらそれだけで私は力尽きるだろう。執筆どころではない。私のワープロソフト、愛する一太郎君には、男女別の台詞数を数える機能なんて備わっていない。ライバルのMr.Wordはどうか知らんけど。

 

そもそも役の重要度に台詞の多い少ないは関係ない。私の芝居だって、台詞は少なくてもステキな役はたくさんある。そういう役を愛してくれる役者を、次回作でぜひ依怙贔屓したいものだ。台詞、いっぱいにするぞ。

て、結局私は差別主義者?

 

ここに何度も書いてきたが、「正義」を振りかざす人が嫌いである。

報道に自由があるように、表現にも自由があることを、件の女性記者は忘れている。

 

| 羽生まゆみ | - | 18:02 | - | -
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