羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
ダラダラな近況

お芝居をやっていないとものすごくナマケモノになるのがこの頃の私だ。

『シリウス〜』の稽古に入っているときは、「よしっ、終わったらいっぱい書くぞ!」と気合い充分だったのに、いざ公演が終了すると毎日ダラダラするばかりで、PCの前にさえろくに座っていないのは羽生ノートが更新されていないのを見れば明らかである。

一年365日、眠っているときでさえ芝居のこと劇団のこと役者のことが頭から離れなかった日々はもう遥か遥か昔のことである。

もういいの、心行くまでダラダラしたい。なんだか身体が重たいし頭も重たく、日々の体調があまり思わしくない。先日なんか検診で血圧を測ったら、上が80下が50であった。体温は35度1分しかないし、思わず先生に「私、死にかけてません?」と訊いてしまったくらいだ。

しかし、たったひと言で片づけられて唖然となったね。

「ちょっと低いですね」

そ、それだけ? 何か質問することはないの? 「ストレスは?」とか「睡眠は?」とか「食欲は?」とか、なんかあるでしょーよ。

あったまきた。いかん。病院を替えねば簡単に死んでしまいそうだ。

自分でなんとかするほかない。とりあえず体温を上げねばと生姜を爆食いしている。口が痛い。

 

もっとも身体が重たいのは物理的なことかもしれない。体重が増えたのは隠しようのない事実である。ボクシングジムに週3日通い、フィットネスクラブもずんばだけではなくマーシャルを再開し、その際は必ず筋トレもやっている。それでも体重が増える。数だけはこなしているが追い込みが足りないのだと思う。自分に甘いということだ。

運動は楽しい。頭が重たくても身体がだるくても、とりあえず動き始めるとシャキッとする。再開したマーシャルは振りが覚えられずオタオタしまくりだが、でもボクシングのおかげでフォームが本格的になった。アッパーをお見舞いするときの鏡の中の私にうっとりしている。

 

書道も続けている。しかし昇段試験になかなか合格しない。当然である。週に1回くらいのお稽古で簡単に上がらないから「段」てもんだ。これでガンガン上がっていたらむしろ協会の先生方に不信感を覚えるね。

本当はおウチでもっとお稽古しなくてはいけない。しかしこれはPCのスイッチを入れる以上に、半紙を広げるのがおっくうである。紙や筆を出しっぱなしにしていてもいいお習字部屋があったらいいのに。水道も完備されていて振り返ったら筆や硯が洗えるといいなあ。

あと何をやっているかというと何もやっていない。たまに映画や、美術の展覧会に行き、ロビーや公園でソフトクリームを食べるのを楽しみにしているくらいだ。

そんなことくらいかなあ。芝居とは程遠い日常だ。時々役者の顔を思い出すこともあるがほんとに時々である。

一番思い出すのは『サンタクロース〜』のときの役者たちだ。ドアが開かなくてバタバタだった4場の役者たちそれぞれの顔と、「ハンバーガー食べる?」と登場した際の千歳の顔がなぜかしょっちゅうよみがえる。

 

久々の羽生ノートなので近況をまとめてみた。

生姜を食べて口が痛くなった近況なんか発表しても仕方ないよね。鏡の中の私にうっとりしている近況も。

近いうちになんとかドッカーンとした事件をお伝えしたいものである。

 

| 羽生まゆみ | - | 02:40 | - | -
思い出だって思い出さないと…

掲示板が突然消えてびっくりだ。よくわからんがいろいろ事情があるのだろう。思い出が消えてしまったのがちょっと寂しい。

そういえば『羽生ノート』も、書き始めの頃のものが途中でなくなっちゃった。当時はネタも豊富で筆力も今よりマシだったから書くのが楽しかった。ゲットとの別れのシーンなんかかなり上手に書けていた記憶がある。匡人の悪口も筆が冴えわたっていた。消えたのはもったいなかった。

そういえば最初の頃の羽生ノートから何篇かを選んでエッセイとしてまとめたものが存在する。HP上で発表したことがあったかなあ‥‥あんまり思い出せない。そこそこ良い出来で自己満足に浸ったはずだ。みんなにも読んでもらいたいけど、退団者が活躍しているから完全な時期外れで、今読んでも面白くないか。

 

掲示板は一から出直しで、その最初がミケのライブネタなのはちょっと良かった。写真もいつもの女子5人が勢揃いしているし。玉組って結局最初から最後まで女子頼りだったなあと思う。

強い男子が私たち女子をぐいぐい引っ張ってくれていたらどんなに幸せだっただろう。男子(カズさんだのマーさんだのゲットさんだのゴローさんだの‥‥あ、モミーさんも)が女子の重たい荷物のほんの少しを持ってくれていたら、今の私の不幸はなかったな。と思うが、私の荷物を引き受けてくれるどころか、彼ら自身が私にはめっちゃ重たかったんだからどうしようもない。一人につき100圓らいあった。

 

幸せだと思う瞬間もある。いまだにホンを書いているではないか。『シリウス〜』の本番を観ながら客席で「あー、幸せだ」と思っていた。(役者がトチるたびに「あー、不幸だ」とも思っていたが。)

繭子(小雨)や歩太と別れてひと月がたつが、会いたくてたまらない。こうやって書いていると涙ぐんでしまうくらい会いたい。

ホンの登場人物の多くが私にはリアルだ。どこかで生きているような気がしてしかたない。あれからひと月、繭子と歩太はもうお喋りはしていないけれど、散歩する繭子に付き添う歩太の姿を私はリアルに想像することができる。

そして想像できる幸せを思うのだ。私はたいした人間じゃないし後悔や失敗の多い人生で、なので私を「運のいい人チーム」に入れてくれなかった神様をめっちゃ恨んでいるが、ただひとつ、物語を創る力を与えてくれたことにはしぶしぶながら感謝している。

その力のおかげで私は孤独ではないし、人生にわずかながらの彩りもある。友達は皆無だし、それどころか「ただのい知り合い」さえ微少な私だけれど、私が創った物語にわくわくしてくれる「知り合いじゃない人たち」の存在に、私はどんなに大きな喜びをもらっているだろう。

役者たちも、好き嫌いは別にしても、ともかく私を忘れることはないはずだ。死んだら偲んでくれる役者さえ一人二人は居るかもしれない。そして私の物語で演じたキャラを懐かしく思い出すだろう。つまり彼らとの絆も物語あってこそなのだ。

 

今日は何の話をしたかったかというと「思い出」と「記憶」だったのだがあまり上手に書けなかった。

先日Ericoと、今回のどらえもん映画の宣伝コピーがちょっといいねという話が出て、私はしずかちゃんバージョンの「思い出だって思い出さないと消えてしまう」てのが心に残っていたから。

それと、NHKドラマの『トクサツガガガ』の最終回は、「長い間忘れていても、ふとしたきっかけで好きだった気持ちを思い出す」がテーマだった。そんな二つに「掲示板が消えた事件」が重なって、この書き込みになった。

 

やっぱり初期の『羽生ノート』をアップしようかなあ。

Ericoが、今では無関心なカズさんや大嫌いなマーさんを好きだった気持ちを思い出すかもしれないから。羽生ノートがふとしたきっかけになれば幸いである。

| 羽生まゆみ | - | 18:03 | - | -
セコンド(練習生日記4)

『シリウス〜』の稽古期間は一ヶ月ちょいしかなかったので、休みがほとんどなかった。息もつかずぐわーっと入り込んでいたから、稽古も終わり近くになった頃、急に不安になった。

「公演が終わったら何をしていいのかわからない」

私が心配を口にすると、Ericoは言った。

「ボクシングがあるじゃないですか」

まあ、そうだけど‥‥

Ericoが笑いながら言った。

「試合のときは私と純一でセコンドにつきます」

勝手に決められた純一が驚いて言った。

「ゴングと同時にタオル入れていいならやりますけど」

私のボクシング姿が痛々しくて見ていられないらしい。

ふん、失礼な。

 

ボクシングの練習はさっそく再開した。

先日トレーナーにマスボクシングを指示されて仰天した。

マスボクシングとは、本気を出さずに寸止めで行うスパーリングのことである。ときどきやっているのを見たことがあるが、マイシューズやマイグローブを持っているような上級者がやるものだと思っていた。

やだあ。恐いというより恥ずかしい。こんな初心者なのに。

相手は上級者の壮年男子である。シューズやグローブがマイであることはもちろん、バンデージも私のようなスポッと装着する簡易タイプではなく本物である。ぐるぐる巻くやつ。

「ナントカさん、羽生さん始めたばっかりだからよろしく」

トレーナーがそう言うと、ナントカさんは私ににっこり笑いかけてくれた。あー良かった。睨みつけられたら(タイトルマッチでありがちなやつね。記者会見のときなんかにやるやつ)どうしようかと思っていた。

リングに上がり、ブザーと同時に3分間のスパが始まった。ジャブとストレートとフックしか持っていない私にどうしろって言うのよーォ、と思ったが心配無用だった。せっかく持っているフックを使用するチャンスさえ無かった。ジャブとストレートを交互にくり出すだけの、ほとんど幼稚園児のケンカ状態であった。純一が居たら絶対にタオル投げられていたと思う。

セコンドからトレーナーの声が飛び、それはちゃんと聞こえた。

「四つ打て!」とか「二つ!」とか、「下に飛び込んで!」とか「足動かす!」などの指示である。「まじ、ボクシングだ」と思って感動した。

1ラウンドだけのスパだったけどけっこう息が上がった。ひどいデキだったから、たぶんしばらくやらせてもらえないだろうなあ。

よーし、またやらせてもらえるように頑張るぞと、決意新たな私であった。激を飛ばされるのが好きなのだとつくづく思う。もっと怒られたい。

 

すべての練習が終わってお水を飲んでいたら、ナントカさんが話しかけてくれた。

「初心者とは思えない良いパンチでしたよ」

「ええっ、ほんとですか?」

やだあ、嬉しいじゃん。怒られるのも好きだけど褒められるのはもっと好きだ。

そしてナントカさんは相手のパンチを払う方法を教えてくれた。とっても良い人だ。やっとここでお友達が一人、できた。

| 羽生まゆみ | 練習生日記 | 20:51 | - | -
楽しいお誕生日

Ericoがご飯を食べないかと言うので、「土曜日も日曜日も空いてるよ〜ん。じゃあとりあえず土曜日にしておこう」と返事をしたとき、土曜日が誕生日だということはすっかり忘れていた。(スケジュール帳に書き込む段になって気付いた。)

公演中Ericoが全員のご飯代を出してくれていたが、しかし私としてはそれに甘えることはできない。

「私がいただくわけにはまいらぬ。武士としての沽券にかかわる」

と、楽日にいくらか渡そうとした。

するとEricoはEricoで、Ericoのルールがあるらしかった。

「できぬ。武士は食わねど高楊枝」

強情である。

結局、「では近いうちに食事でもご馳走してくだされ」と言うので、じゃあそうしようということになった。

ご飯の誘いはてっきりそこから続いているのだと思っていた。つまり私がご馳走する気満々だったのである。今日が誕生日であることはバレないようにしなくてはと、用心したくらいである。

だから待ち合わせ場所にKAZUHOが居るのを見てマジびっくりした。久々に「あっ!」とか言ってしまった。

わ〜い、お誕生日会だ。そうこうしているうちにトミーからも「お誕生日おめでとう」とラインがきて、お祝いムードは一気に盛り上がるのであった。

麻理枝を加えた4人で鳥料理を食べた。ケーキも食べた。ケーキはお約束の花火がバチバチしていた。プレゼントをもらった。

それから、終わったばかりの公演について自画自賛で盛り上がった。いつもだと自画自賛をするのは私ばかりなのだが、今回は素晴らしいチームワークについて称賛し合った。「いいチームだったよねえ」とか「少数精鋭だった」とか、そんなことだ。とにかく「嫌なことが一つもなかった」というのが一致した意見だった。

あー楽しかった。こんなことなら毎年2月の頭に公演を打ちたい。気分上々のままお誕生日に突入できる。

みんな、ありがとうね。

そうそう、公演中にnobからも「少し早いけど」ってプレゼントをもらった。もちろん楽屋で純一とErico相手に大自慢である。

「あのね、nobからもらった。『少し早いけど』って」

もう一回言っておいた。

「あのね、『少し早いけど』って。nobが」

Ericoはおおいに感心していた。

「さすがnobだ。えらい」

純一も感心していた。

「すごいよなあ。おれには絶対できないな」

私は内心思った。

「やれよっ」

 

でも純一もお祝いメールくれたよ。「少し遅いけどおめでとう」って。

笑った。Ericoも言っていたけど、今回純一はけっこう頑張って私たちを笑わせてくれた。

 

純一、来年もメールくれたら本物だ。

| 羽生まゆみ | - | 18:03 | - | -
謝辞

打ち上げは、役者2人と、毎日コヤ詰めだったKAZUHO、ゆーすけ、優樹、麻理枝に私を加えた7人でこじんまりとやった。

その日のうちに帰宅し、翌日は起きたり眠ったりダラダラ過ごし、その翌日と翌々日はさっそくボクシングで汗を流した。否応なく夢から現実に戻りつつあるここ数日である。

昨夜はEricoと電話で話をした。どうやらEricoはペットロスに陥っているようで、話している最中にも「歩太ーーーっ!」と3回くらい叫んだ。かなりの重症である。かく言う私も「歩太に会いたいよォ」と呟く日々だ。

その歩太はすでに歩太の皮がむけて純一に戻り、次回作の稽古に入っているはずである。珍しくご挨拶メールをくれた。「すごく大変でした」「どうなるか怖かった」「出来上がる気がしなかった」等々、気弱な発言が並んでいて笑った。さすが麻理枝に豆腐メンタルと褒められていただけのことはある。

 

(以下、敬称略)

音響プランの鳥越優樹に心からのありがとうを。コヤ詰めどころか稽古場にも詰めて、稽古場での通しと本番のすべてを私と一緒に観た。音楽の知識が圧倒的に不足している私は、具体的な指示を出すことができない。あーだこーだと抽象的なことばっか言って困らせてしまった私を許して。コヤで舞台の掃除までさせてしまった。ゴメンナサイ。コヤで掃除をしたら羽生のスタッフという規則が玉組にはある。よその劇団で音響の仕事をする際は私の了解を取ってからにしてね。

すばらしいBGMを提供してくれた作曲のウエノアヤコにお礼申し上げる。美しい旋律が役者の下手な芝居をカバーしてくれた。やっぱりオリジナル曲は心に沁みる。お会いできなくて残念だった。いつか会ってお礼を申し上げたい。どうか今後ともEricoをよろしくお願いします。

歌唱指導の中川真希に特別の感謝を。いやはやしばらくぶりに聴いたらEricoの歌唱力が上がっていたのでびっくり。真希ちゃんのおかげであることは言うまでもない。最後までダメ出しのあった『ナオミの夢』が、本番では一番ステキに仕上がっていたよ。ああ、あれがもう聴けないのかと思うと萎える。12月の作品を楽しみにしています。

KAZUHO、ああKAZUHO、本当にありがとう。長い友、ゆにっとのKAZUHOに心からの感謝と尊敬を捧げる。チケット管理から受付、雑用の数々と、多岐にわたって活躍してくれた。デキルオンナということは知っていたが、それ以上だった。Ericoはどんなに助かっただろう。もちろん私も。私に恩が返せる能力も方法も無いが、どうか見捨てることなく長いお付合いをと願うばかりである。

同時にゆにっとの舞台監督、浅見雄介には感謝の言葉もない。なにしろ私のいつものスタッフが参加しておらず(舞監の稲毛健一郎は楽日に客席に座っていた! こんなところで何をしておる! と言いたかった)仕込みが心配でならなかったところ、浅見君が颯爽とプロの仕事を見せてくれた。ありがとう。

照明と音響オペをたった二本の腕でやってくれた高橋ゆーすけに愛と感謝を。吊り変えられないという厳しい条件の中、最大限の努力で美しい明かりを創ってくれた。KAZUHOが撮ってくれたツーショットの写真、私はすっかりエロばばあの顔でした。男前と写真を撮るとたいがいこうなる。次回はゆーすけが演出ね。Ericoをよろしく。

向井登子。ここに感謝を書き込んでいいのかわからないが、当パンに名前が載っていたのでたぶんいいのだろうと思い、書く。Ericoとお茶をしてくれてありがとう。そのとき脚本の一ページに、なんか落書きしてくれてありがとう。その落書きは私のファイルに収まって、いつものように稽古の間じゅう、演出席のテーブルに置かれてあった。ゲネの前にコヤへ来てくれてありがとう。舞台を歩いてくれてありがとう。たくさんたくさん、ありがとう。

宣伝美術のオガサワラトールに感謝申し上げる。Ericoに掴まったら逃れるのは至難の業だ。この企画が終わるまで、いやその後も、Ericoはトールさんの首ねっこにくらいついたまま放さないだろう。私もまた、ほっこりした優しい見た目に癒された日々だった。どうぞ長いお付き合いをと願っている。

えあぽ、木箱を塗ってくれてありがとう。突然呼び出してゴメン。久し振りに会った。ちっとも見た目が変わっていなかったのでホント安心した。死んだんじゃないかという噂まであって(私が流したのかもしれないが)、もし激やせとか激太りとかしていたらどうしようと思っていたが杞憂だった。頼めばスーパーマンのようにやってきて私を助けてくれる。変わらず愛しているわ。

演助の木村麻理枝。ここで感謝を述べるのは変な気分だ。スタッフに専念した麻理枝がこんなに優秀だとは知らなかった。私よりホンの台詞が頭に入っていたので愕然とした。これで私はますますバカになるに違いない。バカになっても大丈夫だとわかったから。ありがとう麻理枝。そして麻理枝を育ててくれたKAZUHOに、あらためて感謝申し上げたい。

 

笹本純一とErico。二人の役者に感謝は言わない。私は演出だから。

役者は二人だけ。濃密な一ヶ月だった。きつくて焦りまくりで大変だったけど、楽しかった。芝居についてのあれこれはまた別の機会にゆっくり書いていく。ただ一つ、いろんな評価はあるだろうが、この芝居が良い作品であることを、二人には言っておきたい。なぜそう思うかも、またの機会に書く。

役者としてのEricoにありがとうは言わないが、プロデユーサ―としてのEricoには、この機会をくれたことに感謝したい。

私はまた一つ創ってしまった。幸福である。

 

ご来場のお客さまに心より御礼申し上げます。

今後、私以上の才能を持つ演出家たちの作品が続々2ヶ月おきに登場します。どうか再度、再々度足を運んでいただき、そして同じコヤで、同じEricoで、演出によってどのように作品が変わるものなのかを楽しんでいただけたらと願っています。

ありがとうございました。繭子(小雨)というばーさんを、歩太という犬を、時々思い出してくださいね。

 

演出/羽生まゆみ

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 18:03 | - | -
通し稽古(稽古場日記7)

さあ、ついに明日で稽古も終わる。残す通しはあと1回。

先週の今頃は絶望のどん底に居た。でも結局仕上がった。そう、いつも結局仕上がるのだ。

玉組ではいつも5回通し稽古をやってからコヤ入りするが今回は4回だった。つまり通し初日に間に合わなかったのである。通しは取りやめて、抜き稽古と止め通しをやるしかなかった。そのくらい仕上がりが遅れていた。

初通しは笑っちゃうくらい台詞をトチっていた。トチってはいたが、しかし初通しを見て仕上がると確信した。何度も芝居を創っていれば、いくらヘボ演出家でもそのくらいはわかる。なんかホント、安心した瞬間だった。

それにしても二人芝居というのは、役者には本当に大変なことなのだとあらためて痛感した。相手にまっ白悪魔が来たとき、対処するのは自分しか居ないというプレッシャーは相当なものである。

それがわかったのは、今回の通しで純一に2回も悪魔が来たからである。かわいそうなErico。見ていられなくて私は思わず台本に視線を落としたね。

それにしても純一は面白いわ。堂々と舞台上でミスる。ごまかさずにミスをやりきる。

昨日なんて舞台上で突然、キョロキョロと何かを探し始めた。

私は隣りに座っている演助の麻理枝にこっそり訊ねた。

「純一はいったい何を探しているの?」

「わかりません」

麻理枝は小道具に責任があるので、たぶん私より純一の捜し物が気になったに違いない。

通しが終わって、私はさっそく純一に訊いた。

「何を探していたの?」

純一は言った。

「立ち位置です」

「はい?」

「急に立ち位置がわからなくなって……」

捜し物は小道具ではなかった。まさかの立ち位置であった。立ち位置が、キョロキョロ探して見つかるものだろうか。びっくりである。

 

純一は今回本当によく頑張って私を笑わせてくれた。一人しかいない男子としての責任感からだろう。

いよいよ明日は最後の稽古場。いっぱい笑わせてね。

 

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 22:05 | - | -
ライブハウス(稽古場日記6)

初日一週間前に、公演会場で場当たりができた。これは画期的な出来事である。

今回は乗り打ちなのでなんだかんだの不安でいっぱいだったがこれで安心できた。Spase CUBEさんのご配慮に心から感謝申し上げたい。

一番の不安はやはり「劇場ではない」ということだった。

私はこれまでリアルセットを組まずに芝居を打ったことがほとんどない。芝居の内容と雰囲気から美術のリアルは命題だった。なのでパネルを立てなかったのは劇団を揚げる前の1、2回のみである。(『地下室のダンディ』は立てていないが、新宿モリエールの壁をそのまま使って地下室感を出した。間違いなくリアルであった。)

私は「いつもと違うこと」が苦手だ。役者たちには「勇気を出せ」とわめいているが、自分自身はかなり勇敢さに欠ける。臆病者である。

しかし杞憂だった。親切な方々の活躍で、私はまた憂いなく本番を迎えることができる。(役者の芝居に関してはまだ憂いだらけだが。)

なんだかさ、私はいつも解決策のないまま、こんなんは嫌あんなんは嫌、こんな感じあんな感じ、と言うだけだ。そしたらいつの間にか誰かが解決してくれるのだ。今回の舞台美術も、「床につるつる感があるのは嫌だ」とか「幕芝居は嫌だ」とか、「物置感」だの「ごっちゃり感」だのと繰り返していたらなんとかなっていた。

三脚を利用した芝居も実は心配だった。稽古場に三脚が無いのでパイプ椅子を相手にやっていたからだ。どんなに想像力を働かせてもパイプ椅子はパイプ椅子で三脚には見えない。これも会場で本物の三脚を使って試すことができた。三脚が相手では純一がフェロモンを飛ばすことができないと、早めに確認できてよかった。猛稽古して飛ばせるようにしなくては。

 

KAZUHOのお世話になっている。ライブハウスの仕様がまったくわかっていないので(それ言ったら劇場もだが。しかしそんなことをベテラン演出家の私が告白したらまわりがビックリするのでなるたけ内緒にしている)ぽわんとしていたら、KAZUHOが私の代わりにあれこれいっぱい確認作業をしてくれた。

KAZUHOの気が付くことったらないよ。知っていたけどやっぱりすごい。制作の仕事なんぞ、もう完璧である。激疲れのEricoも、KAZUHOと麻理枝の言うことをヘイヘイ聞いていればなんとかなる。

KAZUHOのおかげでいろいろ覚えた。今度どこかのライブハウスで公演を打つことがあったら下見のときに、

「ツラにあるスピーカー、もう少し低くできない?」

これは絶対に言ってみたいと思っている。

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 18:04 | - | -
賀正メール(稽古場日記5)

稽古も佳境の四場である。

ここは稽古するのが、やる前から気が重たくてしかたなかった。役者の芝居がヘタ過ぎてガクーッとへこたれるに違いないと想像していたからである。そんなわけで稽古したくなかったけど、そういうわけにもいかないので今日初めてちゃんとやってみた。

なんか知らんがわりと良かった。

なんか知らんがEricoはちゃんと喋るし、なんか知らんが純一の受けがいちいち決まる。

ちょっと気が楽になった。

いやいやまだ油断はできない。私が「きっとひどいに違いない」と思い込んでいたせいで衝撃が薄められただけだったのかもしれない。

さて、今回は一時間に凝縮されているせいか、私が創る芝居の特徴がよく目立つ。全編通して過去を語り、死者を語る。私の芝居ではたびたび主題となるレクイエムである。

鎮魂の対象が誰であるかはまだ言えない。Ericoに怒られる。残念である。いろいろ喋りたい。

玉組をいつもごらんになっているお客様には「ああ、安定のいつものやつだ」と思っていただき、新しいお客様には私の創る「物語」を楽しんでいただければと願う。

 

せんだって稽古場で雅紀の噂話をしたら、翌日雅紀からメールがきた。

年明けの挨拶かと思って大喜びで開けたら芝居の宣伝だった。なんだよっ。

いちおう明けましておめでとうの挨拶はあったが、こっちの方がついでであることは間違いない。

先ず年始の挨拶、それから二週間後に宣伝。二つに分けろっ! と思った。

まあよい。麻理枝とEricoを除けば役者で挨拶メールがあったのは優太くらいだ。次回、もし優太が玉組の舞台に立つことがあったら台詞10個は増えるね。

純一でさえ挨拶なしだから他の者のメールなんて端から期待していない。全然していないし。ホントにしてないもん。

Ericoは正月前純一に、羽生さんにメールするようにと進言しようとしたらしい。しかしいくらなんでも今回はするだろうと思って余計なお世話はやめておいたら、やっぱりしなかったと言っていた。

稽古場でそれを聞いた純一がめっちゃ渋い顔をしていた。

 

いいのよ、純一。もちろんそんなことは問題ではないわ。あなたがとびっきりステキな芝居さえしてくれれば。

素晴らしい俳優でいてね。私の望みはそれだけよ。メールなんて全然。ホントに全然。ホントよ。ホントだから。

 

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 00:45 | - | -
通過する(稽古場日記4)

音響のゆうくんと歌唱指導のまきちゃんが来てくれたので稽古場が賑やかだった。

なにしろ毎日4人ぽっちで稽古しているのでとっても寂しいのである。いつもの稽古場だったら喋らない(無駄なエネルギーを使わない)純一でさえ、なんとかせねばと頑張って喋っている有り様だ。

これまでの作品の中でもちょいちょい歌シーンは作ってきたが、ちゃんとした歌唱指導をやってもらうのは初めてである。いったいこれまでどうやって仕上げていたのだろうかとふと疑問に思い、Ericoに訊いた。すると、

「羽生さんが『うーん、なんか気持ち悪い』とか言いながら」

ええっ! そんなんで仕上げていたのか。びっくりだ。役者たちがよく私の悪口を言わなかったものである。私だったら言うね。

BGMについては今回作曲家がいる。久々のオリジナル曲である。歌の楽曲もあっという間にオケを作ってくれたから本当にありがたかった。テーマ曲もすでに上がっている。

曲に手を加えるのはゆうくんだ。ゆうくんが楽器を足したり変えたりイロイロしながらBGMとして完成させる。プランもゆうくんである。

まきちゃんとゆうくんは私を挟んで左右に座っていたのだが、歌練の間に何か問題が発生するとプロらしくすぐさま打合せが行われる。専門用語がびゅーん、びゅーんと、私の目の前を右から左へ、左から右へと通過するのである。私はウインブルドンの観客のように、ただ頭を右や左に振っているだけであった。

などと呑気なことを言っているが、各スタッフさんは私と組むのが初めてだからさぞ不安だろうと思う。私は、私が何を希望し、どんなイメージを描いているかを、本来具体的に提示するべきなのだろうと思う。

しかし謝るほかはない。私にはそれができない。それができないポンコツの演出家なのである。スタッフだけではなく、ある意味役者に対しても同じである。イメージを訊かれるとただ困惑して佇んでしまう。

 

ところで、このところEricoがあっちやらこっちやらに忘れものをするから心配だ。今回稽古が始まってから電車やらバスにバッグや化粧ポーチを置き忘れているし、昨日は稽古場に借り物のマイクスタンドを置きっぱにした。あー心配。

これからEricoとどこかへ行くたびに大事なものは私が預かり、帰る際私が「Erico、忘れものない?」と言わねばならぬのだろーか。これまでEricoが私にやってくれたように。

メンドクサイ。

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 23:58 | - | -
もっと褒めよう(練習生日記3)

昨日は宣言どおり稽古前にボクシングジムで汗を流した。

やっぱり運動すると気分もいいし体調もいい。

平日の昼間だったせでジムはがらんとしていた。このあたり、やはり住宅地のフィットネスクラブとは様子が違う。住宅地のジムだと元気なマダムたちで昼間の方が圧倒的に混雑しているもの。

トレーナーも二人だけだった。顔なじみのチーフトレーナーと初めて会うトレーナー。トレーナーは次から次へと新顔登場で名前が覚えられない。トレーナーの方は初めてでも必ず私を「羽生さん」と呼ぶから、私が更衣室に居る間に名前を確認するのだと思う。

この初顔トレーナーが昨日は面倒を見てくれた。ミット打ちは2ラウンドと決められていて、楽しいのにあっさり終わってしまう。10ラウンドくらいやってヘトヘトになりたいとよく思う。

当然だけど、同じミット打ちでもトレーナーたちはそれぞれ指導法が違う。細かく止めてフォームの修正をする人もいれば、とにかく気持ちよく打たせてくれる人もいる。私はまだ初心者だから両方大事で、毎回トレーナーが変わるのがけっこう楽しい。

みんな親切で優しい。モヒカントレーナーとは大違いだ。でもボクシングでも筋トレでもダメは同じことを言われている。

「アゴを下げて」

このダメが一番多い。

モヒカントレーナーに言われるとムッとしていたが、こちらでは「あーん、またやっちゃった」と可愛く受け答えている。

それにしてもよっぽど上がっているんだなあ、私のアゴ。苦笑する。自分ではわからないのだ。

そこで反省するのが役者へのダメである。一回で直さないとすぐイラッとしてしまう。そんなに直したくないならこの台詞カットしてやると思うくらいだ。現にカットしちゃうし。

いかんいかん、もっと大きく広い心で役者を見なくてはね。

 

昨日のボクシングの練習は稽古前だったので1時間で切り上げた。

ストレッチをやっていたらチーフトレーナーが来てくれた。

「今日は早いですね」

「はい。このあとちょっと用事があるので」

「そうですか。こういう、人が居ないときにディフェンスのやり方を教えたかったんだけど」

え? 稽古なんかどうでもいいからすぐさまもう一回グローブを装着したくなった。

「羽生さん上達が早いから。フォームもきれいだし」

ええーっ。喜びで心が震えたね。犬だったらブンブン尻尾振ったところである。

「やーん、チョー嬉しい」

可愛く受け答えた。「チョー」とか言っちゃって。

なぜだかわからんが、こちらでは「可愛い人」と思われたいらしい。

 

褒めるって大事ね。役者へのダメももっと褒め言葉入れよーっと。

と、思わず決意してしまった。

| 羽生まゆみ | 練習生日記 | 11:42 | - | -
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