羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
採火式を見た

春だ。暖かくて素晴らしい日よりである。自転車に乗っていたらドッと幸福感がこみ上げてきた。

疫病による暗い世情に、私たちは意識している以上に痛めつけられているのかもしれない。ちょっとした幸福が心に染みる。

昨日はギリシャでの聖火の採火式に泣きそうになった。

古代風衣装に身を包んだ女優さんがひとしきり長ゼリを喋った後で、一人目のギリシャ人ランナーに火を移す。ひざまずいたその女性ランナーが手にしているのはもちろん東京2020のトーチで、それを目にしたとたん感動のあまり涙がこみ上げてきた。

誰がデザインしたのか知らないが、なんて美しいトーチだろう。ニュースなどで見たとき時に興味も覚えなかったのを申し訳なく思った。ピンク色のトーチが美しくて胸がいっぱいになった。

オリンピックが中止になるかもしれないなんてこと、今は考えたくない。中止になったらなったでそのとき考えればいい。

桜の開花も今年に限っては格別だ。例年テレビで大騒ぎしている開花予想やら開花宣言などを、「ホント鬱陶しい」と思っていたのに、今年は桜の映像に感動する。たった一輪の可憐な姿が胸にこたえるのだ。

 

そんな中で、1組『冬の家(仮)』のホンを書き始めた。

そう、1組2組、同時進行で書くことにしたのだ。

本日書き始めた1組が地中海性気候になってしまったのは、もちろん昨日見た採火式の影響である。ニッポンの中に温暖湿潤な12月が出現した。

 

いつものように、風景はニッポンの中の外国である。お楽しみに。

| 羽生まゆみ | - | 15:17 | - | -
2つ連続

新しい情報がHPに上がったよ。

そう、今回は2作品を連続で上演する。同じ物語をキャストを変えてとかではない。正真正銘、まったく違う作品を創る。

大丈夫かなあ。ホン書けるかなあ。と、心配は尽きないが、私はやるよ。頑張る。陳腐な台詞だが、命を燃やして頑張る。

キャストは、1組がヤングチームで2組がオジサンチームになった。これは別に私がそう振り分けたわけではなく、役者の希望でこうなった。この組み分けはかなり面白い。

役者たちのことはここでもおいおい書いていく。

ちなみにクレジットの順番は1組が若い順。2組が年上から。

2組のEricoが下から2番目でビックリだ。トミーだって若い方だ。小劇場ではありえない座組である。乞うご期待。

 

みんな、私のオファーを快く受けてくれてありがとう。オファー開始から今日まで、役者達の「やる気」が私にたくさんの力をくれた。良いホンを書く。役者が喜ぶような。とにかく今は、それが私の仕事だ。

 

取り急ぎ書き込んだ。

玉組のお客様にまず報告を。

 

 

 

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 00:13 | - | -
この頃のこと

買いなおす予定だったノートPCは購入を延期した。調子は悪いがとりあえず生きているし、もうしばらく様子を見ることにした。贅沢が許される身ではないことを突然思い出した。

ホンはデスクトップPCで書いているので、ノートの方が突然つぶれても「ギョエーッ!」とはならないから大丈夫。

デスクトップの方は古くてびっくりのVistaだよ。ネットにはつながっておらずワープロとして使っているだけだから、ストレスがなくて愛着は湧くばかりである。(愛着が湧くのは私の物語がいっぱい詰まっているせいもあるかもしれない。愛する歩太や小雨や八歩が中に居るってこと)

ノートの方は大変申し訳ないがもう一つ愛せない。Outlook開いて大量の受信メール見ただけで(そのほとんどが販促目的メール!)ノートに対して憎しみが湧く。本人には何の罪もないのにね。

ネットに関してはしょっちゅうauサポートセンターのお世話になっている。私もストレスだがセンターだって「またかっ」て感じだろう。

PCは買うのをやめたが、プリンターは買った。年賀状作成以来久々に使おうとしたら「修理に出してください」というエラー表示が出た。あんまりキッパリしているのでこっちも素直に「はい」てな感じだった。故障の悔しさも感じなかったくらいである。突然止まってあたふたすることを考えたら、簡潔な指示に感謝の気持ちでいっぱいだった。

「了解。いっそのこと買い直しちゃいますね。教えてくれてありがとう」

購入したのは修理代より安価なプリンターだったが、帰ってつなげたらコピーやらスキャンやらができるのでびっくりした。最近のプリンターってすごいのね。ちっとも知らなかった。

スマホで撮った写真がそのまま直でプリントできたりもするらしいのだが、面倒だからこれは設定していない。いざとなったら1003号室弟(羽生ノート『大パニック』参照)を呼べばいいやと思ったのである。今や1003号室弟は私のスーパーマンかドラえもんか召使いである。

 

さて、世の中がとんでもないことになっている。

昨日買いたいものがあって薬屋さんに行ったら、トイレットペーパーと箱ティッシュが一つ残らず消えていて、いったい何が起こったかと心臓がドキンとなった。理由はみなさんご存じのとおりである。今日はスーパー西友から、肉のパックが一つ残らず消えていた。これにもビビった。

疫病に限らず危機管理は大丈夫なのかと、このコロナ騒動で初めて日本に疑いを持った。東北の震災の時でさえ思わなかったのに。こういう場合はこうするといった計画がきちんとできていないことに驚く。

ただ、こうして政府を批判をすることはたやすい。今は批判のための批判で、指揮執る者の手足をもいではいけないような気もするのだ。決意と判断することを、怯ませてはならない。正しい判断に、私たちの命運がかかっているのだから。

 

日本の底力を、信じている。

| 羽生まゆみ | - | 23:28 | - | -
考慮せねば

前回の書き込みで衣装を美しくしたいなどと言ったばかりだか、今回の芝居では衣装替えがあまりできないということを思い出した。楽屋がせまい上に、なんと舞台袖が無いのだ。舞台から引っ込むと、そこはいきなり楽屋である。

舞台関係者以外のお客様にご説明申し上げると、舞台袖とは舞台の左右に存在する、客席からは見えないスペースのことである。登場前の役者はここで出番を待つし、舞台監督が居るし、小道具が並べられたりしている。役者が舞台上からスタンドマイクを持って飛び込んで、袖でスタンバっている誰かにポイと渡して再び舞台に戻る。そんな場所である。

楽屋に戻っている暇のない超特急の早替えもここで行われる。Ericoは着物の早替えが必ずあるので、いつもいっちゃんいい場所にEricoの専属スペースが設けられる。悩ましい赤い襦袢がぶら下がっていたりするが誰も気にしない。

袖とは、つまり芝居を打つ上でとっても役立つ便利な場所なのだ。今回はこの便利な場所が無いことを、脚本を書く段階から考慮に入れておかなければならないだろう。

いつもは早替えの考慮なんかしたことがない。どうしたって間に合うわけがないと思われるようなシーンに早替えをぶっこんでも、稽古と工夫と精神論で乗り切ってきた。

あまり大きな声では言えないが、早替えについては今回年配の役者がそこそこ居るので、これも考慮しなくてはならない。テキパキ動けないと思う。(私がこんなことをここに書いていることはもちろんオジサンたちにはナイショである。絶対チクったらダメだからね。)

しかしエバって考慮考慮と言っているが、たぶん誰も信じていないと思う。とくにEricoはこれを読んで「チッ」と舌打ちしたに違いない。考慮に関しては信用度ゼロなのである。

実際、今すでに5ページほど書いてみたわけだけれど、考慮が存在するかと問われれば答えに窮する。

芝居はいきなり歌で始まる。ト書きに、「歌う」とか「歌い終わる」とか書いてある。私は舞台を頭に描いて書くので歌のシーンがはっきり見えている。しかし歌い終わった後、マイクスタンドがどこへいくのか、そのあたりはボヤボヤである。

まあ誰かがなんとかするだろう。

 

5ページから進んではいない。しかし芝居のことはいつも考えている。何かを思いついたり、思いつたものが消えたりを繰り返しているのだ。今はそんな日々である。

昨夜も思いつきで麻理枝にメールした。

「某ミュージカルのPVの冒頭で大勢がちょびっとだけ歌っているやつと、ダレソレがちょびっとだけ歌っているやつの曲名を調べてほしい」

両曲ともちょびっとだけである。自力でなんとかしようとしたがダメだった。

10分後に「動画見つけました」のメールがきて、その10分後に曲名が来た。なんと優秀な演助だ。「私は蜷川幸雄かいっ」と思った。

 

ねっ、誰かが何とかするでしょ? 私の言うとおりである。

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 20:03 | - | -
春につき、新タマ食べた

2月だというのにもはや春の気候である。暖かい。

これがこのまま続くわけはない。きっとまた寒波がくる。と、ガッカリ度合を軽めにするためしっかり自分に言い聞かせる私であった。私は何においても前向きには考えられない性質である。悪い方悪い方に考えて安心する。これが私の人生に幸せが来ない最も大きな要因だとわかっているが仕方がない。

暖かくなると俄然テンションが上がってくる。この冬は玉組会議が発足して忙しかったから、あっという間に乗り切った感がある。良かった良かった。冬は嫌いだ。ヒートテックの発明で信じられないくらい冬が楽になったが、それでも寒いのが本当に苦手である。

なのにしょっちゅう冬のお話を書いている気がするなあ。登場人物がいつもマフラーを巻いてコートを着ている。気のせい?

春が近いから八百屋さんに行くのが楽しい。ここのところ新タマネギと新ジャガを食べ続けている。高級オリーブオイル(お誕生日にKAZUHOにもらった!)と岩塩ふりかけて食べたら絶品でやめられなくなった。タマネギは丸ごとレンジでチン。ジャガイモも皮つきのまま丸ごと蒸かす。新がつくものはこれに尽きる。「丸ごと」と「チン」。小さな新ジャガは見た目も好き。可愛い。春はいいなあ。

 

ホンを5ページくらい書いてみた。上記のようにまた冬のお話である。トミーやソニーが「寒っ」とか言っている。暖まるために酒も飲んでいる。(おっと、この二人はすでに発表しちゃってるからいいんだよね? もうとっくに口滑らせてるもん。)

まだ本当に仮である。すっかり書き直す可能性がある。だから二人とも「げっ、冒頭から出るんかい」と緊張する必要はない。ま、緊張するような二人でもないけど念のために言っておく。(仮だ仮だと念を押すのがそろそろ面倒になったきた。もういいか。みなさん、ここに書く芝居の内容は仮であることをくれぐれも忘れないでね。)

場所を半地下にするつもりだったがあっさり捨てた。これはアカデミー賞映画の登場人物たちが半地下に住んでいる設定だと聞いたせいもある。あっちがアカデミー賞なのにこっちが無理に半地下にする必要はない。1階でよい。1階で、お金に困っていない人たちがわあわあ騒ぐ物語だ。つまりいつもどおりである。

私の芝居の登場人物たちが毎回お金に困っていない設定なのは、舞台美術と衣装を美しくしたいからである。劇団をあげた時に宣言したとおり、私は小劇場の「暗い、汚い、貧乏臭い」というイメージを私の劇団では覆したかった。役者たちは皆、現実の世界ではアルバイトに追われる貧乏人だが、物語の世界ではお金の心配など微塵もない、優雅な人たちであってほしかった。

今もそれは変わらない。優雅であること、背中が伸びていること。比喩的においても、また視覚的においてもだ。

美しい芝居を創りたい。

今回セットは組めないけど、照明も伸一郎じゃないけど、でも舞台はきっと美しいと信じる。いつもどおりに。

 

春だ。幸せは来なくていいから、ストーリーは降りて来ますように。役者たちが元気で初読みを迎えられますように。コロナで降板なんてことになりませんように。

公演が終わるまで私がシャキッと生きていますように。

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 22:33 | - | -
プロのお仕事

まーたやっちまった。リュックを電車の棚に置いたまま降りてしまい、なんと15分も気づかなかった。新宿からとことこ歩いていたのだが、地下道から新宿2丁目に上がったところで「へ?」となった。

しかし15分も経過しているとかえって慌てないね。電車はとっくに発車しているから戻る気がしない。そのまま喫茶店に入って休憩することにした。ゆっくり考えよう。

前回やっちまったときはリュックに財布もケイタイも入っていて、文庫本だけ手にして降りた。(当時はまだ脳がテレビにやられていなかったので、電車の中では読書をしていた。テレビ脳になっている現在はスマホでエンタメニュースを観ている。)

あの時はかなり慌てまくった。何もないのに本だけ持っている姿の心細さったらなかった。その本を仕舞う場所もないのだから。

今回は違う。貴重品その他の入った小さな手提げカバンを持っている。お金とスマホがあればなんとかなる。喫茶店に入り、いったいリュックに何が入っていたかを思いだそうとした。ボクシングの練習着一揃いであることはわかっている。

大丈夫。失くせばもったいないけど、歯ぎしりしてまで悔しがるようなウェアは入っていない。ボクシンググローブが入っていたら歯ぎしり度はぐわーんとアップするが、幸いこれはジムのロッカーに置きっぱだ。あー良かった。

落ち着いてスマホ検索。教えてくれた電話番号に電話をした。スマホを使いこなせている私がステキ。見つかるという自信もあった。前回ちゃんと取り戻せたし。

ところがダメだった。全部の駅を調べたが見つからないと言う。ががーん。

私は訊いた。

「じゃあこのあとどうしたらいいでしょう? 時間をおいてまたそちらに電話すればいいですか?」

電話の相手はちょびっと不機嫌だ。

「そうですね、このあと届くこともありますし」

「じゃあそうします」

「・・・・・・」

なーんか感じが悪い。

「あの・・・・・・電話しますね」

ともういっぺん言った。すると、

「今度電話するときは忘れ物センターにしてくれますか」

はい?

「ここは忙しいのでなかなか電話がつながりませんよ」

「あのォ・・・・・・そこはいったいどこですか?」

「新宿駅です」

「・・・・・・」

どこでどう間違ったのかわからん。新宿駅じゃダメなの? でも疲れたからもうどうでもいい。考えたくない。

1時間近く休憩を入れてからやっと忘れ物センターに電話した。どうせ見つからないと思っていたし。

案の定、各駅を調べてくれたがやっぱり見つからなかった。お礼を言って電話を切ろうとしたら、

「乗っていた電車を追いかけてみましょう」

「え?」

新宿駅とは違い、さすがに忘れ物センターは違う。忘れ物に注力している。ちょっとやそっとじゃあきらめないぞ感がひしひしと伝わってきた。

「何時発の電車に乗っていたかわかりますか?」

もちろんだ。それはさっきスマホの『駅探』を使って調べてある。新宿駅さんは訊いてもくれなかったが。

「何両目に乗っていたか覚えていますか?」

おおっ、それも珍しくはっきりしている。

「先頭車両の一番後ろ。リュックは進行方向右側のシルバーシート上の棚に置きました」

「わかりましたっ」

センターさん、「そこまではっきりしているのか!」と感動ひとしおの声音である。やる気満々とみた。

私は電話番号を伝えて結果をまった。

 

ほどなく電話があった。

リュックはあった。新百合ヶ丘で見つけてくれた。プ、プロだ!

私の水色のリュックは小田急線に乗ったまま、あっちへ行きこっちへ戻りを繰り返していたわけだ。

ありがとう、忘れ物センター。困ったときは専門家に助けを求めるのが一番。新宿駅は忙しい。スマホにしっかとセンターの電話番号を登録した。

 

3回目が、たぶんあるから。

| 羽生まゆみ | - | 03:39 | - | -
公演日発表とオマジナイ

いよいよ公演日が解禁になる。

今現在は土曜日の夜。日曜が明けたら書いていいんだって。なんで今じゃダメなのよっ。

どうやら情報解禁は大安、チケット発売日は友引というオマジナイがあるらしい。Ericoのオマジナイだ。

私は別に仏滅だろうが天皇誕生日だろうがいっこうにかまわないのだがオマジナイは神聖なものだから守らねばならぬ。あとで何かあって、「あれは羽生さんがオマジナイを無視したせいだ!」などと責任を問われたらたまらんからね。

そういえば東京オリンピックはオマジナイが足りなかったのではあるまいか。振り返れば、国立競技場の設計変更に始まって、ポスターの盗作騒ぎやらマラソン会場の変更など気分が盛り下がることだらけである。

そしてとうとうオリンピックそのものの中止も取り沙汰されるようになった昨今、その原因がまさかの疫病である。平安時代かよっ。

心から、がんばれニッポンである。がんばれニッポン、がんばれ小池都知事、がんばれ桃田!

小池さん、今からでも遅くはない。水ごりするなら付き合うよ。怪しいマジナイ師のバーサンも紹介できる。

 

中止って嫌な言葉だ。背筋が凍る。もし本番に入ってインフルエンザの役者が一人でも出れば、公演は即中止にしなければならない。考えるだに恐ろしい。

これまで30本以上の芝居を打ってきて、本番中何事もなかったことを奇跡のように感じる。

最大の危機は「役者が牡蠣に当たっちゃった事件」だろうか。(公演2日目だったか3日目だったか、牡蠣に当たって入院したマチャを匡人が引きずり出してきた事件。)あれは危なかった。危うく公演中止だった。以来役者たちには、本番期間中に牡蠣を食べないよう訓示している。

今後心配なのはむしろ私自身である。もう長いこと高熱を出していないのがむしろ不安。そろそろ来るんじゃないかと恐れおののく。まあ本番中に私がコヤに居なくてもなんとかなるから、役者がインフルになるよりはマシだ。

これが稽古期間中だと困る。インフルだとさすがの私も休むしかないが、役者の「自主練して頑張る!」なんて台詞、マジナイ師のバーサンの占いより信用していない。私が休んで役者が喜ぶと思うと、絶対にインフルだけにはなるもんかと思う。

 

なんてことを書いている間に日曜日が明けた。

公演日の発表だいっ。

2020年12月19日(土)〜12月27日(日)

 

どうだ麻理枝! 私が発表したぞ。

乞う、ご期待! て、書いていいんだよね? 口、滑らせてる?

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 00:01 | - | -
指示待ち女

スマホを一日に30回は開けると自慢したばかりなのに、Ericoの「KAZUHOさんとここで待っていますメール」に2時間近くも気づかなかった。シマッタ、屈辱的だ。

でも大丈夫。何も知らずに入ったカフェにEricoとKAZUHOは居た。

私の姿を見て二人はびっくりしたらしい。

「既読がつかないのに羽生さんが来た」

ふん、私は鼻が利くのだ。匂いでわかる。

というわけでミケのライブへ行く前に玉組会議。新たな報告と相談事を聞いた。

私は自信満々に言った。

「全部まかせる」

EricoとKAZUHOの前では私も「指示待ち女」に成り下がる。だって口の出しようがないんだもん。

KAZUHOからの指示が出た。

「出演する役者たちの、クレジットの順番を考えておいて下さい」

おおっ、やっと私にお仕事がまわってきた。いいぞ、やる気満々だ。

でもこれは簡単過ぎるお仕事である。すでに決まっている。クレジットは年齢順。上からか下からかはまだここには書けない。(匂わせが多いぞ私。本当は、書けない事情を喋りたい。ああっ、口が滑りそうだ。)

Ericoからの指示は、

「羽生さん、タイトル決めないと」

ええっ、もう? まだ一行も書いていないのに。

これまでなら間違いなくムッとしているところである。実際200回はムッとしてきた。

「私はね、麻理枝やEricoにタイトル決めろって言われるのと、役者達に衣装のイメージ訊かれるのがいっちゃん嫌なのっ」

などと冷たく言い返してやるのが常であった。

でも私は大人になった。こんなことでいちいち腹を立てたりしない。今回はひねり出すよ。玉組会議の女達にはいっぱいお世話になっているからね。私だってやるときはやる。

ちなみに、衣装はともかく、その他諸々何かにつけ「羽生さんのイメージは?」と訊かれるのは本気で嫌だ。

イメージなんか微塵もないことがバレてしまうからである。

 

今夜もまた、グループラインが大騒ぎだった。私は入力がモタモタしているので、クエスチョンマークはどこ押せばいいんだーっ、などと焦っている間にお話し合いのテーマはガンガン移ってゆき、私はオタオタするばかりである。返事書いているヒマがないのでとりあえずスタンプ押しまくっている。クールな私のイメージが台無しだが仕方ない。スタンプって便利。

役者がほぼ出そろったので(すごい! 瞬く間に決まった。)、役者達のフルネームをライン画面上に並べてほしいとポツポツ入力していたら、送信ボタンを押してもいないのにいきなり名前がずらっと出て、一瞬びびった。どうして思っただけで通じちゃうのだ?!

 

こういうところがKAZUHOのすごさである。Erico以上に気の利く女がこの世に居るとは知らなかった。

もうKAZUHO無しでは生きていけない。KAZUHOの指示待ち女として今後の人生を歩みたい。

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 13:55 | - | -
水漏れその後

水漏れ事件のその後を報告するのを忘れていた。

2月に入ってやっとすべてが片付いたよ。いやあ、大変だった。天井から水が落ちてきたときも大変だったけれど、そのあと管理会社や施工会社の下請けの下請けと電話のやり取りをする方がもっと大変で、「うちの木村に電話させるから打ち合わせは彼女とやって下さい」といういつもの台詞を言いそうになった。

何が嫌だったかと言うと、こっちが何も言っていないうちから、とにかく「うちは何もできません」のアピールがすごかったことだ。責任を負いたくないというものすごい緊張感が電話口から漂ってくる。私は工事日程の質問をしているだけなのに、まるでクレームに対するように身構える。絶対に言葉尻を捉えられてなるものかという悲愴なまでの決意である。

これはまあやたらクレームをつけたがる現代の風潮のせいではある。気の毒とは思うが、しゃべっていて気分が悪い。

施工会社の下請けの下請けの場合は、「家具は必ず他へ移しておくように。うちでは椅子一つ動かしません」のアピールだ。打ち合わせの間じゅう何回も言うのでいいかげん頭にきた。

「知ってる。やっておくって私、何べんも言ったよね。あと何回言えばいいの?」

冷たく言ってやったら黙りこんだ。ふん。

というわけで、1003号室弟の登場である。家具を動かすのも、新しいカーペットを敷くのも、粗大ゴミの日に古いカーペットを捨てるのも、みーんな1003号室弟が手伝ってくれた。今では私んちに最もたくさん入ったことがある赤の他人である。光栄に思ってもらっていい。

感心したのは、私の嫌いな「指示待ち男」ではなかったことだ。ちゃんと頭を使う。「こうしたらどうでしょう」と提案もする。そんなわけで仕込みを手伝わせたいと思うほど気に入った。

そう、私たち玉組の女にとっては「男の価値は仕込みで決まる」のである。

ほんと、いいもん見つけた。水、漏らしてくれてありがとうなのであった。

 

公演の準備も着々と進んでおるよ。昨日、今日と、続けざまに女優が2人決まったし。あまり遠くないうちにHPに公演情報載せられるのではないかと思う。その前にちびちび羽生ノートで口滑らせてKAZUHOに叱られたい。

こういった情報は「2020玉組会議」というグループラインであがってくる。楽しくてたまらない。これまで1日に3回くらいしかメールチェックなんかしなかったのに、最近は30回はスマホを開けている。2020玉組会議のところに,箸△箸の数字があるとワクっとするね。しかし悪い情報が上がる可能性だってあるわけで、開けるときはそれなり緊張する。そんな緊張感もまた楽しい。

上記女優情報を得たときは「歓喜して踊るパンダ」のスタンプをぺったんこしてやった。

 

おっと、Ericoから新情報。

ええっ、某オジサン俳優が出演を了承したとのこと。

詳細は明日話すとのこと。今ラインで言えないってことは何かあるのね。ドキドキだわ。

 

明日は玉組の女優ミケのライブだよ。

その後Erico、KAZUHOと打ち合わせ。あー忙しくてステキ。

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 23:22 | - | -
行き当たりばったりについての何度目かの書き込み

演出家のブログなのだから、たまには創作について話をしよう。

つまり、どのようにホンを書くかである。ここに何度も書いてきたことであるが、新しい読者も3人くらいは存在すると思うので。

 

私には普段、書きたいことがまるで無い。作家によっては日頃からテーマをいくつか抱えていたりもするらしいのだが、私にそんなものは無い。

私に創作意欲が湧き出てくるのは、俄然やる気が出てくるのは、出演の役者がはっきり決まったときである。それまでは台詞なんぞ一行も書きはしない。

だから、麻理枝やEricoから出演の依頼があったとき、役者たちは「どんな役なんだろう」とか「台詞はいっぱいあるのだろうか」と考えても無駄である。私はまだなーんも考えていないのである。

過去、Ericoに誘われた役者が、私と直接話したいとのことで電話をかけてきたことがある。(ここにも書いたことがある。)

どんなストーリーなのかと探りを入れ、自分がどんな役なのか更に探りを入れたあげく、彼は言った。

「稽古期間と映画の撮影が重なるが、もし芯を取る役なら玉組の稽古を優先してもいいとマネージャーが言っている」

なんと、私と取り引きしようと言うのだ。驚いた。

探りを入れられている間、今は何も決まっていない旨を、私はホンの書き方を交えながら丁寧に説明したのだが、何も理解していなかった、というか私の言葉を信じてもらえなかったのである。

 

ホンの書き方は作家によって千差万別だと思う。まずストーリーを箱書きしてから書き始めるという作家もいれば、行き当たりばったりに書くという作家もいるだろう。私は完全に後者である。

「何もないところからなどと言うが、そんなことはおよそ信じられない。書きようがないではないか」

当然の疑問である。

私が最初にやる作業は、チョーメンの第1ページに、出演する役者の名前を縦にずらっと書き、横に役名を付けていくことである。(この作業はなぜか手書き。PCではない。たぶんオマジナイみたいなものなのだろう。)

それから、いったいここはどこだと考える。物語の背景となる場所(湖畔とか深い森とか)と、実際に役者が芝居をする場所(バンガロー風の邸宅とか階段があるとか)を考えるのだ。

そしてキャラクター同士の関係を仮に、あくまで仮として考える。この人とこの人は叔母と甥とか、この人達は幼馴染みとか、そんなことだ。この時点では仮でしかない。

そんなことを集中して考えている間に、何かがぴかんとひらめく。私はそれを演劇の神様のご降臨と呼んでいる。神様は私に何かを授けてくれる。それはたいがい「絵」であることが多い。湖畔に轟く銃声と飛び立つオオハクチョウ、クローバーの絨毯に寝転ぶ幼い兄弟、月光輝く湖で泳ぐ馬とかね。そんな絵を結びながら物語の筋ができてゆく。

今私は『いななきの森』を例にとったわけだけれど、これも役者の顔ぶれを見て4人兄弟の話にしようと思った。4人兄弟の物語にしたいから4人の男優を集めてね、と言ったわけではない。

『いななきの森』は内藤家の家政婦である砂子の長台詞から物語は始まる。なぜ砂子に喋らせることにしたのかは思い出せない。過去を語るのは内藤家の当事者ではない方がいいと思ったのかもしれないし、単にEricoの長台詞を聞いてみたい衝動にかられただけなのかもしれない。(危険な衝動である。)もう忘れたけれど、Ericoに長台詞を喋らせたかったから、Ericoを家政婦にしたのかもしれない。

そうやって物語は創られていく。書き始めてから創られてゆくのだ。

 

まだ書き始めてもいないのに、何かの「絵」を見てしまうこともある。私のいけないところはそれを黙っていられないことだ。書き始めていない時点で思いついちゃったことなんぞ大概が変更になるのに、よけいなことを口走ったせいで役者に妙な期待を抱かせてしまったりする。

「Erico、次は演歌歌手だからね」

「えっ、イメージで言うと坂本冬美ですか」

「うん、そう」

で、髪の毛をドッカーンと結い上げた妖艶な演歌歌手をEricoは想像しちゃうわけである。当然である。

ところが稽古が始まると「髪型はオカッパ」などと言われてしまう。Ericoのガッカリは想像に難くない。

というわけで何が言いたいかと言うと、役者達は初読みの際、ホンを読んでガッカリしないでね、ということだ。ストーリーはまだわからない。キャラもわからない。何もわからない。だから何も想像しないで。想像するときっとガッカリする。

今この書き込みをしている今日、物語は何も決まっていない。オジサンたちが歌を歌うとか、舞台を半地下にするとか口走っているが、はっきり言ってそれもどうなるかわからない。

私はまだ、一行も書いていないのである。チョーメンに、役者の名前さえ記していない。

 

めっちゃ言い訳がましい書き込みになったぞ。

私の真意は伝わったかな?

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 16:40 | - | -
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