羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
常備薬はブスコパン

アッキーラのことは何も知らないが、非暴力主義者のガンジーだということはわかった。恋人が居て、休日にステーキを食べることも知っているので、これでアッキーラに関する知識は三つになった。

しかし突然のガンジーにはびっくりである。ガンジー伝と野口英世伝は伝記好き小学生が通る道だが、二十歳過ぎた男子でガンジーを積極的に話題にする人はあまり居ない。

それから彼は私の創るお芝居をちょびっと気に入っていると思う。次回作はサンタクロースの話だとチアキさんに説明していて、私は「おや?」と思うと同時にちょっと嬉しかった。

先日スタジオロビーでトレーナー達と過ごしたひとときが楽しかったのは、お芝居の話になったからでもある。

リュウドは確実に私の芝居を気に入ってくれている。トレーニング中話題にすることもある。

「見終わったあと、もう一回観たいと思った」

これは玉組を初めて観てファンになったお客さんがよく口にする台詞だもの。ホンに布石が打たれていることを理解していて、ラストを知った上で布石を拾っていきたいようだ。

『サンタクロース〜』はそれこそ二回観てほしいなあ。ドンデンがシャープなので布石をたどるのは面白いと思う。オチを知っていると、初見で見逃したことをたくさん発見できる。初見はたいがい台詞を喋っている役者を追うからね。二回目のときに喋らない役者を観ながら「なるほど、ただぽけーっと立っていただけではないのね」という納得と発見は楽しいはずだ。

ちなみにリュウドのことも私はほとんど何も知らない。両足首の骨折経験があることと、静岡に素晴らしい食事を作ってくれる実家があることくらいかな。それと現在恋人はいない。

恋人の件はそんなわけないだろと思い、水を向けてみた。

「静岡に居るんじゃないの?」

「居たら東京に連れてきてますよ」

この台詞の言い方がちょーかっこよくて感心した。私もぜひ「東京に来い」と言われたいと思った。

一方アキは芝居なんぞあまり興味はないようだ。前回「早い段階で寝ていた」というアッキーラからのチクリ報告がある。

アキについては胃腸が弱いという情報を最近仕入れたばかりである。私と同じく胃痛持ちでブスコパンが常備薬とのこと。恋人が居るかは不明。

 

別にトレーナーの恋人チェックや胃薬の紹介をしたいわけではない。

こんなにしょっちゅう会っているのにたったこれだけのことしか知らないということが言いたいのだ。彼らとの絆はあの小さな空間の中にだけある。

これは役者も同じである。プライベートについてはほとんど知ったこっちゃない。ブログもツイッターもフェイスブックも読まない。

 

役者は私の物語の中でだけ生きていればよい。

 

| 羽生まゆみ | - | 00:52 | - | -
マハトマ・ガンジー(体幹トレ日記78)

暖かくなってきたせいか気分は晴れやかだ。カバも観たし。そして運動をするとますます元気になる。

今日はトレーニング中二回トイレに駆け込んでオエオエした。普段はオエオエだけでおさまるが、今日二回目は少し出た。こんなにオエオエしながらどうしてトレーニングが楽しいのかわからない。

ミット打ちとトレッドのサーキットだったからかなり堪えた。トレッドは傾斜をつけられると息も絶え絶えになる。箱根を涼しい顔で走る山の神たちは本当にすごいと思う。私なんぞ坂道は一分半で限界だ。一分半なんて、冷たいご飯をチンするときはあっという間だが、勝手に動く坂道を全力で走るときはとんでもなく長い。

だからわめく。

「止めて!」

「止めるわけないでしょ」

回し車を全力で走る、私はハムスターである。

リュウドの檄が飛ぶ。

「一分四十秒までっ。残り十秒!」

「ウゲゲーッ!」

なんだよっ、一分半て言ったじゃん! と言い返したいが息も絶え絶えなので台詞が長すぎて言い返せない。

「死ぬっ!」

が精一杯である。

「死なないよ」

私を指導しているときのリュウドが恐ろしいとかで、他の会員に避けられているらしい。

「怖〜い。リュウドさんは私には無理」

冗談じゃない。他の会員にもきっちりハムスターをやらせてほしい。

 

今日は久しぶりに女性トレーナーのチアキさんに会えた。彼女は現在秋田在住で、ときどき上京してトレーナーのお仕事をしている。小学生のお子さんがいるママだから『サンタクロース〜』をぜひ観てもらいたいのだが無理かなあ。この前の『狐の姫〜』はちょうど骨折治療中でやっぱり観てもらえなかった。

トレーニングが終わりシャワーを浴びて、プロテインをいただきながらロビーでゆっくりした。めずらしく他に会員の姿はなく、トレーナーたちと他愛もないおしゃべりをして楽しかった。チアキさんがカウンターの中、カウンターの横にアッキーラが立ち、リュウドが王様椅子にゆったりと身を沈めている。スツールが私の場所。

この頃、私の独占の時間であったはずの土日のラストが取れなくなっていて、代わりに平日の明るい時間にトレーニングすることがちょいちょいある。

最初はかなりワガママな文句を言っていた。

「土日ラストは他の人をブロックして私を入れて。私を特別扱いしてっ」

だが平等が大好きなアキにきっぱり断られた。

「みんな平等です」

ふん、平等なもんか。とっても不平等だ。

だが私の理屈は通じず、しかしいったんあきらめると明るい時間のトレーニングも少しずつ楽しくなってきた。特にこんな気持ちのよい春の日の午後は。

 

開け放したスタジオのドアを抜けて心地良い午後の風が入ってくる。

みんなの顔を一人一人ながめながら、私はみんなのことを何も知らないと気づく。でも知らなくていいのだ。充実したトレーニングと、皆で過ごすこのひとときさえあれば。

「僕は非暴力主義者です。マハトマ・ガンジーです」

アッキーラの口から突然ガンジーが出てきてビックリする。プロテインにむせそうになる。

みんな、笑う。

私はアッキーラに「愛してるわよ」と言いたくなって、我慢する。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 00:02 | - | -
パンダ、カバ、ハダカデバネズミ

動物園へ行った。

なんと今年は多摩動物公園ではなく上野動物園。初めてではないはずなのにすっかり記憶を失くしていて、こんなに素敵な動物園だったのかとビックリした次第。

どうして「上野はたいしたことない」と思い込んでいたのか不思議である。清潔で、センスの良い植栽がほどこされていて、春の一日を楽しむのにもってこいの場所だった。

私が選んだ上野ベストスリーは、ふだんは悪口言いまくっていたパンダと、元々大好きなカバと、もはや好きとか嫌いの問題ではないハダカデバネズミである。(ちなみに多摩動物公園ベストスリーはオランウータン、コウノトリ、イヌワシ。オランウータンは不動の第一位。オランウータン舎の前で私はよく泣く)

 

パンダ。彼らに対して持っていた偏見を深く反省した。

「頭悪そうだし、ノソノソしているだけ。お尻附近が汚い」

などと、心の中でとんでもなく「悪い人」の本領を発揮していた私だったのだ。しかも「赤ちゃん産まないしっ!」と、悪い姑みたいなことも思っていた。ここに潔く告白し、反省したいと思う。

いやいやパンダは面白かった。ドテーッと座り込んでただ竹を食べている様子を40分くらいながめていた。竹を縦に裂く。二つに折る。皮を剥ぐ。食べる。延々と繰り返される同じ作業にまったく飽きなかった。閉園時間にならなかったらあと30分は見ていられたはずだ。

 

カバ。これは元々大好きな動物だ。多摩動物公園にはなぜかカバが居ない。昔は居たのだが今は居ない。というわけで、念願の再会である。とにかくデカい。それだけで感動する。実は地球上最強の動物との噂もある。

最初は陸に居て立ち寝していたのだが、私が「水に入れ」と念じていたらジャブーン! と転がるように入ってくれた。そして水面に出ているのは鼻と目と耳だけという例のあれ、カバならではの絵になった。この絵が好きなのだ。水際ギリギリ、ぽっかり開いた二つのお鼻の穴が特にたまらん。でもって耳をピロピロっと動かしちゃったりするとさあ大変。

「でたーっ! これよこれっ。 ピロピロいただきましたっ!」

と私のテンションは最高潮に達するのであった。

 

ハダカデバネズミ。これはもう本当に驚いた。というのも前日に小川洋子さんのエッセイで知ったばかりの動物だったからである。このネズミの奇妙な生態については長くなるので省くが、読みながら、もしかしたらこれはシュールな作品をお書きになる小川さんが創った想像上の動物なのではあるまいかと疑ったくらいのヘンテコさなのである。

眼前の光景が信じられなかった。奇跡の邂逅である。まさか昨日の今日とは。いっぺん本物見たいなあと念願したら翌日叶うなんて。

大げさじゃないのよ。本当に前日読んだばかりだったのだ。それが証拠に(証拠にもならないが)その本は読みかけのまま、今日も私のバッグの中に入っている。

 

ネズミごときで念願叶わなくていいから、もっと大事なことで叶わないかなあなどと思わないでもない。

でも、良い一日だった。動物園は楽しい。

 

| 羽生まゆみ | - | 23:15 | - | -
窓越しに

気持ちがあんまり元気じゃないなあ。

芝居に没頭するとか書くことに集中するとかしていないと、ヒマな日常に居る私は、単純な事象をあれこれひねくりまわしてややこしくしてしまうのでとてもよくない。

人も人の心も複雑で、多くの物事も複雑だから、人も事象も多角的に見なければならない。しかし私の場合あまりにも見る角が多すぎて、しまいには自分のことなのに手に負えなくなってしまう。しかもたいがいがネガティブ方向に見るから、結果、良いことは悪いことに、嬉しいことは悲しいことに、悪いことは一周まわって悪いことにしてしまう。

 

こんなふうだから私には、とかくこの世は生きにくい、なのである。上記のように、自分でひねくりまわして勝手に生きにくくしているのだ。

だから私は物語を書くのだと思う。登場する人々も複雑な事情や複雑な心を抱えてはいるが、それでも私の手でコントロールすることができる。複雑な心の全部をきっちり把握している。作者なのだから当然である。私はそこで、物語の中で、安心していられるのだ。心がざわつくことがない。

登場人物の言っていることが嘘でも、それが嘘だと私は知っているし、なぜ嘘をつくのかも知っている‥‥私がほしいのは、たとえばそういう「安心」だ。現実の世界でつかれる嘘は、私を必要以上に痛めつける。私が嘘の理由をひたすら考え続けるからである。多角的に考えると理由は無限に出てきて私を苦しめる。

この頃私がいつも苦しいのは物語を創っていないからだと思う。逃げる場所がない。「安心」に身を置く瞬間がない。

 

今日もドトールでチーズトーストをかじりながらざわざわと、答えの出ない考え事をしてすっかり気が滅入ってしまった。

突然、思いついた。

「そうだ、リュウドを見に行こう」

確率はとっても低いが、スタジオの下から見上げれば窓越しにリュウドを見学できるかもしれない。リュウドが居なかったらアキかアッキーラでもいいやと思った。毎春、気分転換にユキヒョウやオランウータンを見に多摩動物公園へでかける時と同じ気分であった。

トレーニングのお部屋は反対側なのでトレーナーの姿はめったに見えない。ところが奇跡のようにリュウドが居た。掃除でもしていたのだろうか。私が手を振ると、驚いたようにいつもの笑顔が返ってきた。

この笑顔を怪しい笑顔と考えるのはとっくの昔にやめた。リュウドに関しては多角的に考えるのをやめたのだ。笑顔も愛も親切も、私はそのまま信じることにした。疑っておけば自分のガラスの心臓は守れるが、安心に身をゆだねる瞬間もない。

 

あー元気になった。やっぱり見に行って良かった。

言っておくけどストーカーじゃないからねっ。ちょっと見学しただけだ。

 

| 羽生まゆみ | - | 22:55 | - | -
男子よ、私の前へ行け。もしくは後ろから蹴れ。

5月は12月公演のメンバーと稽古がある。目的の一つは新メンバーがどんな芝居をするのか見るためである。

そう、20代の男優をやっと手に入れたのだ。麻理枝が捕まえて、私のところに引きずってきた。

で、本来杉山雅紀とやるべき面談を笹本純一とおこなった。人見知りの純一、ちっとは喋れるのかしらと不信感でいっぱいだったのだが、なんのなんの立派に役目を果たした。びっくりした。なんだかんだ言ってもやっぱり男の子だわ。私はやんわりフェミニストだが、男子が前に出るべきところは断固前に出るべきだと思っているので、こういう男の子の姿は嬉しい。バカだバカだと思っていた息子がふと気づくと頼りになる存在に成長していた、と喜ぶ母の心もちであった。

私はイケイケだと誤解されがちなのだが、前に出るのは苦手である。ここに何度も書いてきたように、劇団を旗揚げする話になったときも「私はホン書きと演出以外はなーもせんけんね」が条件だったくらいである。

そして私が前に出ない理由は何よりも、主演俳優が前に出る方がかっこいいと信じるからである。

ま、私の思うようにならなかったのは主演俳優二代をご存知の方々はおわかりであろう。初代も二代目もバカタレであった。

つい先日、知人との会話の中で性格破綻者の話になって、二代目のことを紹介した。おまわりさんにタイホされた話やなんかをね。

 

そしてこの性格破綻者のバカタレをかつて私はどんなに愛しただろうと、話しながらあらためて思った。(最近石井のことを書くたびに言っておるね。私の寿命も尽きかけているのだろう)

寿命が尽きかけているせいか、この天才肌の俳優ともう一回一緒に芝居を創りたいなどとつい考えてしまい、実際Ericoを通じて会おうと算段したのだが結局会えずにあきらめた。二人芝居『オバケのイブイブ』の再演である。

Ericoはちょいちょい石井の芝居を観に行っているらしい。そして憤慨しつつ言っていた。

「匡人の使い方がワンパターンでホントに悔しい。演出がバカだ」

つまりあのクセのある見た目と雰囲気から、チンピラ系統に属した役ばかりだと怒るのだ。繊細な芝居ができるのにと悲しむのだ。いっぺん玉組の匡人を見てみろよと言いたいのである。ここにも石井を愛する女が居る。

Ericoも私に劣らず石井と喧嘩ばかりしていたが、石井はEricoの愛をちゃんとわかっていただろうか。わかっていたと信じたい。

 

次回が再演の芝居であるせいか、私の演劇的思考はともすれば過去に戻りがちである。私の思考が、私自身こそが性格破綻者であったあの頃に戻るのだ。

私はもう、未来を捨てている気がする。新作を書きたいと思う気持ちがある一方、過去の作品をもう一度観たいという気持ちを抑えられないでいる。

 

『オバケのイヴイヴ』を石井以外の役者でやることが可能だろうか。

想う役者のコンビは居るが、客が150しか集まらない芝居の(もっと少ないかもしれない)オファーを受けるだろうか。

ほんとにもう、「やれよ羽生さん。勇気を出せ」と私のお尻を蹴ってくれる男子がいないもんかね。

 

| 羽生まゆみ | - | 01:55 | - | -
悪口ファイル(体幹トレ日記77)

前回のブログを書き終わってからトレーニングへ。

この日の担当はアッキーラであった。さっそく前日の一件を愚痴がてら報告する。

「昨日、体験レッスンあったでしょ? 私、その体験の子よりダメらしいよ」

「そういえば(カルテに)動けるって書いてありましたね」

「え? 」

念のためにもう一回訊いた。

「なんて?」

「動ける」

「‥‥‥」

もはやアッキーラの台詞は耳に入らぬ。ショックだ。私が『悪口ファイル』と呼んでいる個人別カルテに、「動ける」とほめてあったらしい。

く、く、くやしーーーっ!

悔しかったのでこの日は頑張った。チンニング、プッシュアップ、キックにパンチetc.  怒りで乗り切った。

終わってロビーでプロテインをいただきながらアッキーラに訊いた。

「私の体験レッスン、カルテに何て書いてある?」

アッキーラはカルテをぱらぱらめくりながら、

「担当は誰だったんですか?」

「ヒロさん」

心の傷口が少し開いた。

「『やる気はある』って書いてありますね」

笑った。そうか。ギリギリほめてあった。

やる気はある‥‥これこそ私だ。今日まで続くやる気が、体験を受けたこの日から始まったのだ。

やる気はの「は」が言外に悪口を匂わせているが、まあいい。

体験レッスンの光景があまりよく思い出せない。人見知りなので緊張していたのだろう。

私の記憶にあるヒロとのいっちゃん最初の光景は腹筋トレだ。それが体験のときだったかはわからない。膝を立てて寝転がった私に片手を差し出して、つかまるようにと言った。(つかまった手を支えにして上がったり下がったりするのだ。)

私は手にたくさん汗をかいていて申し訳なかったから、何度も手をウエアにこすりつけて拭おうとした。すると、

「汗なんか気にしなくていい」

厳しい顔と口調を覚えている。

そうか、気にしなくていいんだと私は思った。気が楽になった。私は無駄に気を遣う性格だからね。

覚えているのはそこまでだ。それから腹筋をやったはずだがまるで思い出せない。

なんてことを考えていたら、マズイ、また心の傷が広がった。

急いで話を変える。

「どうせ私のカルテ、悪口しか書いていないんでしょ」

アッキーラは顔に悪い笑みを浮かべながらカルテを調べた。

「×と△ばっかりですね。○はないです」

×と△って‥‥答案用紙かよ。採点していないで言葉で記入しろっつーの。たぶんみんな語彙の蓄積が足りなくて文章を書くのが面倒なのだろう。

「『トレーニング中トイレに行った』って書いてあります」

どうでもいいようなことは文章にしてある。バカだ。

 

いつかカルテをひったくって全部に目を通したい気もするが、どうせ×や△ばかりじゃなんのことだかわからない。ここに体幹トレ日記を書いておいて本当によかった。記憶をたどるよすがになる。

記憶はいつしか薄れていく。ヒロとの日々もいつか忘れてしまうのだろうか。

ユーキとの日々は残り3回分くらいしか思い出せない。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 22:43 | - | -
負けず嫌い(体幹トレ日記76)

アキ担当のトレーニング中に、不貞腐れそうになった。

「体験レッスンの女の子よりできていない」

と言われたからである。

アキは私がデキル人ぶっているのが鼻につくらしく、ちょいちょい私の鼻をへし折ってくれる。

その体験の子が顔も知らない相手ならよかったのだが、たまたま入会説明を受けている場に私もおり、彼女が帰る際には「お疲れさまーァ」と余裕の挨拶までしていたのでさあ大変。悔しいったらありゃしない。

「そんなにできる子なの?」

私が訊いたらリュウドまで、

「バレーボールやっていたから」

私のご機嫌が悪くなるのを承知でこの言いようである。わざとだ。絶対わざとだ。

子供を育てるときは他の子と比べてはいけないということを知らないのか。あやうく不良になりかけたが「喜怒哀楽を出し過ぎると負ける」という横綱稀勢の里の言葉を思い出してなんとか冷静になった。そして10圓離廛譟璽箸鯑上高く掲げてランジウォークをする私であった。負けるもんかっ。

でも不貞腐れたい。今後しばらく、「できていない」と言われたら「私、バレーやっていなかったから。演劇部だから」と言い返す日々が続くと思う。

 

メンタルが弱いから帰宅の電車の中でずっとへこたれていた。体験の子よりダメだとしたら、いったい私はこの2年半、何をやっていたのだということになる。

しかし10圓離廛譟璽箸鯑の上に抱えて歩く人がどのくらいいるだろうと考えたときに、そうたくさんいるとも思えず、多くの人が10垰ち上げずに生きているのだと思うと優越感に少し気持ちが楽になった。

もっともほとんどの人が持ち上げたくもないだろうから優越にあまり意味はない。

ま、いいや。うだうだ考えるのはよそう。

「うちは体幹トレーニングのスタジオなのにまったく体幹がダメ」

アキの言うとおりだ。私はぽけっとしていた。生ぬるかった。鍛えるぞ、体幹!

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 20:22 | - | -
ぴょんぴょん

『サンタクロース〜』のキャスト発表を心待ちにしていらっしゃる方も多いのではあるまいか。初演をご覧になったお客様はもちろん、スタッフ他関係者、そして私も。

悩んでいる。ヤングチームをどうするかに尽きる。こっちの役者をあっちに置いてみたり、そっちの役者をこっちに置いてみたり、あれをこーすればそれはどーなるかと、ほとんどパズルゲーム状態である。ホンが先の芝居はこれだから困る。ヤングチームを全員女の子でやれないことはないが、やはりどこかに、せめて一人男の子を置きたい。

実は近く待望の20代男優と会うことになっている。ドキドキだぜ。

「性格と見た目さえ良ければ芝居なんぞヘタでもいい。二ヶ月の稽古で私が立派な役者にしてやる」と豪語してきた私だが、今回ばかりは緊張する。ドキドキだけど、でも楽しみだ。早く会いたい。

 

ついこの間、少年役にぴったりの男子に気付いて笑いそうになった。灯台下暗しとはこのことだ。

他でもない、ここにしょっちゅう登場するトレーナーのアッキーラである。少々胸板が厚いが小柄だし、先だって二十歳になったばかりだし、見た目もいいし、なんと言っても身体がきく。ジャンプ種目が得意だから、舞台上をぴょんぴょん跳ねまわるだろう。

初演を知っている人達はアッキーラを見て「ほんとだーっ」と叫ぶよ。初演で少年を演じたイサムに、やんちゃそうな雰囲気がとてもよく似ている。

問題はアッキーラが役者じゃないことだ。トレーナーやめて役者になればいいのに。

さて、そのアッキーラとの先週のトレーニングはぴょんぴょん祭りだった。一時間以上ずーっとぴょんぴょんさせられていた。足に重りを巻いて、ランジジャンプやスクワットジャンプのサーキットをやった。ジャンプとジャンプの合間にプッシュアップ15回を挟み込む。これは堪えた。

少し前に「ぴょんぴょん種目が一番嫌い」と口を滑らせたのが敗因だと思う。アッキーラは指導相手が弱音吐くと苛めたくなる性質なのだ。悪い性質である。

しかしぴょんぴょんはねえ、これはある程度年齢のいった人にはホント、無理だから。体力がないのを気合いでカバーできる、という種目ではないのである。どんなに気合いで飛び上がろうとしても飛べないものは飛べない。バネの問題だと思う。もう伸びきっちゃっているのだ。

私なんぞヤクルトジャンプと悪口言われている。ヤクルトの高さしか飛び上がれないからだ。無念である。

 

私は嫌いだが、ヤングチームの役者には舞台をぴょんぴょん駆け回らせるよ。

可愛いチームが組めたらいいな、と願う。

 

 

| 羽生まゆみ | サンタクロース イン トーキョー | 06:35 | - | -
春だ(体幹トレ日記75)

イッチーが私のファンだと言う。芝居関係ではいっこうにファンが増えないが、スタジオ関係では着実にファンを獲得しつつある。

嬉しかったのでアッキーラに訊いた。

「私が可愛いからかなあ」

アッキーラはめんどくさそうに答えた。

「羽生さんの年でこんなきついことやっている人が全国でも珍しいからじゃないですか」

私が珍しい生き物ってか。ふん、私はダイオウイカじゃないぞ。

まあいいや。「全国でも」が面白かったので許してあげる。アッキーラは蓄積している語彙が少ないぶん、面白い単語の使い方をして私を喜ばせるのだ。間違っているわけではないのだがなーんか微妙ってところが好き。

入会してまだ間もないイッチーのトレーニングを何回か拝見した。いつも「無理〜イ」と高い声音でわめいているので、2丁目のオネエサン系おじさんだと思っていたら、外資系の会社にお勤めするデキル37才と聞いてびっくりした。

37才! 私が得意とする年頃だ。まさかここを読むこともないと思うから書くが、シルエットからオジサンだと想像していたのである。この前ロビーで会って初めてアップで見たら確かに若かった。シルエットって大事。そのシルエットをなんとかするために入会したのだろう。頑張れ、イッチー。私も入会した当時のシルエットはイグアナだった。

 

もちろん今だって完全にイグアナから脱したわけではない。下腹のアメーバはいまだくっついたままである。取れん。

前回は身体をゴム紐で引っ張られる変態プレイトレーニングであった。腰にベルト状のものを巻かれ、そこからゴム紐が伸びている。そのゴム紐をリュウドが引っぱったり緩めたりしながら私をもてあそぶトレーニングである。トレーニング自体も屈辱的だが、ベルトの上にブニョッとはみ出たアメーバがほんと情けなかった。

そこは見ないようにして頑張った。この頃わりと調子が良い。気合いも入っているし楽しい。なのでトレーニングもだんだんきつめになってきた。この間はいよいよベンチで50圓鮖たせてくれたよ。胸から7冑發い燭世韻世辰拭

 

さあ、春だ。

昨年5月の公演でKAZUHOにもらった胡蝶蘭が再び花を咲かせ、プランターの椿が大量に蕾をつけ、ヒヨドリがミカンを食べにやってくる。

気持ちを、明るく持ち続けたい。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 06:46 | - | -
スランプを抜ける(体幹トレ日記74)

朝、トレーニングへ出かけようとしていたところに、Ericoから電話がかかってきた。歌舞伎座のチケットがあるが今日時間はあるかと言う。喜びで身体が10僂らい浮いた。

「行く!」

時間なんぞ、なくても作る。なにしろ本日の歌舞伎座ということは、中村屋の御曹司兄弟が出演する舞台ではないか。日本中の歌舞伎ファンが喉手のチケットなのである。

やばい、絶対泣く。2月に入ってから兄弟の初舞台のことを考えただけで涙ぐんでいた。ポケットにハンカチが入っているかチェックし、それからほっぺたにチークシャドウを塗りつけた。せっかく歌舞伎座に行くのにオシャレなお洋服に着替えるヒマがなく、せめて塗りつけておこうと思ったのだ。

 

それにしてもやばいぞ。トレーニング終了から開演時間まで約3時間。体力の回復が図れるだろうか。観劇中に落ちてしまったら元も子もない。

このごろ調子が上がってきたのでトレーニングもきつめになってきた。なので疲れる。相変わらずトレーナー達には「弱音ばかり吐く」と叱られるがそんなことはない。一時に比べるとかなりやる気を取り戻しつつある。

先月は身体も心も調子があんまりよくなかった。環境の変化に気持ちがついていけなかったのだと思う。調子が悪すぎて、若いアッキーラにさえ「今はスランプと考えればいいんです」と励まされたくらいだ。

そう、スランプは誰にでもある。そしていつか脱する。

この頃は久しぶりにサーキットが復活したし、重たいものをたくさん抱えているし、ベーシックスリーという専門用語を覚えて使いまくっている。(ちなみにベーシックスリーとは、ベンチプレス、スクワット、デッドリフトのこと)

今日も楽しかった。本日はプランク祭りだった。足に重りを巻かれた上でいろんなバージョンのプランクをやった。

途中リュウドにほっぺたが赤いことを見破られた。

「赤い。チーク塗ってきたの?」

「うん」

ケタケタ笑っていた。

それから、初ものの種目で顔も知らない相手と競争した。

「昨日31才の男性会員に同じ種目をやらせたけどできなかった」

リュウドがこんなことを言って私の心に火を点けたのだ。

「おーっし、やってやる!」

そしてぐったり疲れた。自爆である。もうっ、今日はなるたけ疲れないようにしようと思ったのに。

この話をEricoにしたら、

「知らない人と戦ったんですか?」

「うん、31才でムキムキという情報しかない」

「本当に羽生さんは戦うのが好きですよね」

「好き」

 

で、歌舞伎座ではずっと泣いていた。詳しいことを書こうとするとまた泣きそうになるので書かない。

舞台に、亡くなった勘三郎の姿が見えた気がした。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 03:30 | - | -
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