羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
DHCプロテイン(体幹トレ日記82)

また体験レッスンが行われていた。どうやら入会するようだ。これでまた土曜日曜ラストの私の時間を、平等という不平等のもとに譲らなくてはならなくなる。

去年までは体験の方が入会すると自分のスタジオでもないのに嬉しかったものである。しかし今年に入りアキが平等を徹底するようになってからは私が迷惑をこうむるので「ちっ」と思う。

かつては入会したばかりの人に更衣室で「どんな感じですか?」などと探りを入れられると、やめさせてなるものかとおおいに励まし、スタジオの宣伝にあい努めたものだ。

「とにかく2ヶ月頑張ってみて。絶対に体型変わるから」

この頃は昔のようには励まさない。

もっとも最近は他の人とあまり出会わない。更衣室で新人に会ったのはここ数ヶ月で一度だけだ。やっぱり探りを入れられた。

「もう長いんですか?」

「オープンのときから」

「やっぱり変わりました?」

「私にはすごく合っていたみたいで、あっという間に体重が5塒遒舛燭里茵

ただの自慢話である。

「すごいですね」

「でも人によって違うと思うし」
きっちり付け足しておいた。5團瀬Ε鵑鯡椹悗靴督控錣気譴討盧い襦

 

冒頭に書いた新入会者のおしゃべりを、トレッドで走りながら聞いていた。体験トレーニングが終わりプロテインを飲むらしいのだが、プロテインに詳しいところをめっちゃアピールしている。

「これはミルク? 私が今飲んでいるのはDHCのプロテインで、ナントカが30%でカントカが20%」などと、プロであるトレーナーに向って成分の説明をし始めた。笑いそうになった。リュウドの顔が見たかったがよそ見したらトレッドから転げ落ちそうだったので我慢した。

そもそもDHCのプロテインは置き換えダイエット商品で、筋トレの後に飲むものとは目的が違うんじゃないかなと思ったが、そんなことを言うのは余計なお世話なのでこれも我慢した。

「どれがおいしいの? 飲み比べちゃだめ?」

私には絶対言えない台詞だ。

リュウドがやんわり断っているのが聞こえた。

「それはできませんけど、バナナは飲みやすくておいしいですよ」

リュウドにしては珍しく愛想のない声だ。笑いそうになった。そして余計なことを言いたくなった。

「私はパイナップルが好き!」

なんとか我慢できたがダメだ、笑いたい。

 

私は初めての場所でも緊張しないこういう人がうらやましくて仕方ない。初対面の人に(しかもプロに!)言いたいことをずけずけ言える心臓もうらやましい。私にあやふやな知識を披露する度胸はない。シロートはシロートらしくという私の姿勢は謙虚さからではなく、私が臆病だからだ。上記のようなアピールってどういう心理から出るものなのだろうとつい考えてしまう。

体験の方、バナナ味のプロテインを飲んだらしい。

「これ、マズイっ」

すごい! ダメだ、こらえきれない。爆笑したい。

 

今後の活躍が楽しみな新人である。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 08:29 | - | -
屈辱(体幹トレ日記81)

昨日はスタジオでバクハツしてしまった。アッキーラ相手に大きな声を出してもしかたないのに可愛そうなことをした。しかし男の子があれくらいでへこたれはしないだろう。ハートも強そうだしあんまり心配していない。私のハートの方がよほど心配だ。

私の不満はトレーナーたちが私を侮辱することと、平等という名の不平等に晒されていることである。

 

この頃私はダメだダメだと言われ続けている。

プロが言うのだから本当にダメなのだろう。それはいい。覚えが悪いのは自覚している。

私が我慢ならんのは、私より後に入った若い女の子と比べられて「羽生さんの方ができない」と言われることだ。私だけに言うのではなく、女の子と私の両方を目の前にして言う。もっと悪いことに、私の居ないところで彼女に「羽生さんより上手い」と言っているふしもある。私は笑い者になっている。笑われている。それが我慢ならん。

昨日バクハツしたのはまず前提としてそのことがあったからである。だからアッキーラだけのせいではない。

きっかけは、入ったばかりの、これもまた若い女性トレーナーと比べられたからだ。アッキーラが彼女に、羽生さんにプッシュウアップの見本を見せろと言う。

はい? 私に? この私に? 羽生さんに? 入社2ヶ月なのに? 見本? 

ここで早くも私の脳天から炎が噴き上がった。

彼女は早速私の前で四つん這いになり、プッシュアップの体勢をとった。

アッキラーは私を振り返って言った。

「ねっ、羽生さんと違うでしょ?」

どこが違うのかさっぱりわからなかった。

それから10回1セットを交替で5セットずつやった。私が負けているとは露ほども思わなかった。完璧なフォームだ。

それから、最後にどちらが長く続けられるか競争すると言う。嫌な予感がした。私は1時間トレーニングをしてヨレヨレではないか。

よーいどんで始まった。

アッキーラは私に「もっと深く。浅い」とダメを出す。

はあ? なにそれ。どうやら私に負けさせたいらしい。逆だろ、それ。身内の肩を持ってどうする。身内をいい気分にさせてどうする。

希望どおり負けた。当たり前だ。やる気なんか微塵も出ない。楽しくない。

言っておくけど、わざと負けろと言っているわけではないよ。そんなことをされたらもっと腹が立つ。私はただ、屈辱的な目に遭いたくないだけだ。私は生きるためにトレーニングをやっている。100%自分のためだ。名前も知らない会員や新人トレーナーを喜ばすためではない。

かつてオーナーや女子トレーナーとサーキット競争をしたことがある。負けた。でも楽しかった。良い思い出である。

「ほらコナッティ、ママにしっかりついてこいよ!」

「うっす!」

そんなふうに騒ぎながら楽しくランジをやった。担当トレーナーは「羽生さんはコナッティよりできていない」などと私を貶めたりはしなかった。むしろ、「コナッティ、羽生さんに負けてるぞ!」と彼女に檄を飛ばして私のやる気を引き出した。

私は私を捨てたそのトレーナーが大っ嫌いだが、その場での在り様は正しいと、同じ指導する側の人間として思う。

 

「不平等」についての不満書き込みはまた別の機会にゆずる。書き込まないかもしれない。私の考える「平等」の定義が広辞苑に載っている「平等」とは大きくずれており、大多数の批判を浴びる可能性があるからである。きっちり理論武装してから臨みたい。

 

本日は思いっきりうっぷん晴らしの書き込みである。

遠回しの悪口ではない。まっすぐ最短距離の悪口だ。

批判は甘んじて受ける。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 21:15 | - | -
師匠と弟子

立川談四楼の『談志が死んだ』と、立川談春の『赤めだか』を続けざまに読んだ。作者名からわかるように二人とも落語立川流の噺家さんだ。亡くなった立川談志の直弟子である。

いやはや落語家さんというのは筆が立つ。そのへんの小説家なんぞよりよっぽど文章が上手くてびっくりした。古典落語を勉強するうちに自然と身につくのだろうか。書道もそうだけれど、「古典」の威力はすごいのだ。

タイトルから逆のように思えるが、『赤めだか』はエッセイで『談志が死んだ』は小説である。

読み応えのあるのは『談志が死んだ』の方だ。小説とは言っても登場人物は実名だし、本当にあったことが描かれている。還暦を過ぎた高弟立川談四楼の、死にゆくというより壊れつつある師匠を見る、冷静な視線が印象的な作品である。

一方『赤メダカ』の方の談志はまだ病気じゃないから安心して読んでいられる。談春も若い。

ラストの談志の台詞で、泣いた。油断した。喫茶店で読んでいたのだが、呑気にナポリタンなんか食べている場合じゃなかった。滂沱の涙だ。

その台詞だけここで紹介しても談志と柳家小さん(談志の師匠。談志は小さんに破門されている)の関係を知らないとよくわからないと思うので書かないが、談春は自分の師匠のことを書きながら、その師匠もまた弟子であったという「下げ」で物語を終えたわけだ。上手だなあ。

 

ちなみにその後、談志自身の書いた本も読んだが、これは小さなエピソードを書き散らしたもので、あまり面白くなかった。ただ小さん師匠はもちろん古今亭志ん生や桂文楽など、名人と言われる人たちと若い談志が一緒に写った写真がいくつか載っており、これがよかった。

小言だろうか、むつかしい顔をして談志に何か言っている志ん生と、笑顔の談志がとてもかっこいい。談志の笑顔から、志ん生の談志への愛がよくわかる。

さて、このようにブックオフで落語関係の本が目につくようになったのは、落語家になった私の役者、ゴロー(古今亭志ん吉)の影響である。

本を読みながらゴローのことを思った。二つ目になったときのゴローの喜びに思いを馳せたし、高座や私の芝居を観に来た際のゴローの噺家さんらしい佇まいを思い出した。(上記の3冊の本を読んで最も心躍ったのは、この「佇まい」である)

遥か昔、ゴローは私に叱られるのが好きではなかった。大半の役者が、私に叱られるのが好きではなかった。それはたぶん、私の愛と力量が足りなかったせいなのだと今にして思う。あの頃は、私にも役者たちにも余裕がなかった。

今、志ん橋師匠のお小言を、余裕をもって聞いているであろうゴローを想像したりしている。そう言えば、古今亭志ん吉は、志ん生の曾孫弟子にあたる。写真で見た志ん生さんの渋い顔と談志の笑顔をそのまま志ん橋師匠と志ん吉に当てはめて、私の心はあったかくなる。志ん橋さんは芝居の演出家じゃないから嫉妬はしないのだ。ただ嬉しいだけだ。

 

ゴロー、頼まれている落語のホン、忘れているわけではないからね。

今の私には、一人で演じる座りコントしか書けないだろう。それだと嫌なのだ。拙くても「落語」を書きたい。

だから、読んでいる。

| 羽生まゆみ | - | 21:40 | - | -
空気の転換について

あー楽しかった。二日間の稽古が終わった。もっとやりたい。

役者たちはおみごとに台詞を入れていた。特に研は雅紀の代役なのにほとんど完璧に入れており、私は内心、私だったら代役なんぞじゃ絶対やる気出ないな、と思った。もちろん内心でつぶやいただけで声には出さない。みんなにケーベツされるからね。せっかく頑張った研だってボーゼンとしちゃうだろう。

本番の舞台を終えたばかりのトミーも居た。真面目である。トミーは稽古に来られないと聞いていた。なのでトミーシーンは抜かして稽古すると言っておいたのに、なんと役者達はぜーんぶ台詞を入れてきていた。えらいなあ。このときも私は内心、私だったら絶対台詞覚える気にはならないな、と思った。

そんなわけでプロローグの最初から稽古することができた。面白かった。面白かったのはもちろん役者が上手いからではなくホンが良いからだ。このヘタどもめらが稽古によってだんだん良くなり、しゃきーんとした姿で本番の舞台に立つことになるのだからホント不思議。

そしてお客さんに「羽生さんは良い役者さんをお持ちで幸せですね」なんて言われちゃうのだ。冗談じゃない。

 

この日の稽古は空気の転換について何度かダメを出した。

空気の転換とは何か?

たとえばプロローグ。

芝居というのは内容がどんなに複雑でも2時間で物語を完結させなくてはならない。そのためにどうしたって不自然なところが出てくるのだが、これを観客が不自然に感じないよう作者(演出)はあらゆる手を使う。その一つが空気の転換である。

プロローグではサンタクロースが学生たちに、生後3日の赤ちゃんを1年間育ててほしいと頼むわけだけれど、2時間の物語の都合上、学生たちは10分で「育てる」と決意しなくてはならない。

ありえない! みんなで、せめて1時間の話し合いがほしいところだ。

そこで私はゆっくり空気の転換を図るのだ。キャラクターたちは決意に至る「気持ち」を台詞で説明しない。そんなことをしていたら時間がかかってしょうがない

役者達は「気持ち」とは全く関係のない台詞をヒントに、静かにゆっくり「決意」に向って心を動かしていく。その心の動きとともに舞台上の空気が動く。これが空気の転換だ。「サンタへの不信」からいつの間にか「育てる」に空気が転換している。

これは上に書いたように時間という物理的な都合によるものであると同時に、私の「好み」でもある。

短時間で決意させる方法なんて他にないこともないのだ。たとえば主人公の八歩が強引に「育てる」と言い張り、他の三人が同意するしか道がなくなるとかね。八歩が「育てる」と言い張った理由はあとで本編に入った段階で発表すればよい。

 

ところで「育てる」という決意表明の台詞は、プロローグにはない。ただ空気をそのようにしているだけだ。その方がずっといい。その方がずっと観客の胸に沁みると信じている。観客の想像力を喚起する芝居、それが良い芝居だと信じている。

「台詞」は何を言うかではなく、何を言わないかだとつくづく思う。

 

役者たちに「ペラペラ内容しゃべってんじゃねーよ!」と怒られそうだな。

大丈夫。まだ7ヶ月も先である。 

7ヶ月もあれば私なら絶対忘れる。

 

| 羽生まゆみ | サンタクロース イン トーキョー | 22:58 | - | -
そろそろ走ろうか(体幹トレ日記80)

今日で5日間まるで運動していない。毎日プッシュアップするとアキとリュウドに約束させられたのだが、まだ一回もやっていない。プッシュアップの態勢にもなっていない。地べたに手をついていない。

やる気はあったのだ。ジムで動こうと思っていた。会員になっているNUSは祝日営業で夜はやっていないから、オアシスに行くつもりだった。でもどうやらフィットネスクラブはどこも申し合わせたように祝日は短縮営業らしい。オアシスは新宿店も青山店も南大沢店もぜーんぶダメ。なんだよっ。

すっかり予定が狂った。というわけでもうどうでもよくなって、毎日知人と連れだってたっぷり外食である。もつ鍋屋、から揚げ専門店と続き、本日は餃子屋さんへ行く約束をしている。タガが外れるとはこういうことを言うのだろう。すでに後ろめたささえ感じなくなっている。

8日にトレーニングが入っている。ちゃんとプッシュアップをしていたか絶対に訊かれるな。つかなくていいウソはなるたけつきたくない性格なので(いい人ぶっているわけじゃないよ。ウソはつく。つくと決めた大ウソは)、こういうときに困る。8日までになんとか一回くらい走ってお茶を濁そう。

 

走るといえばこの頃あまり走っていない。リュウドと最後に走ったのは昨年10月の終わり頃だっただろうか。

前月の9月にヒロと喧嘩に近い言い合いをしたときにリュウドもその場に居て、その際正しく伝わらなかった自分の気持ちをリュウドにはちゃんと説明したくて、実は二人で走るチャンスをうかがっていた。喧嘩のあと本気で退会の決意をしたことや、そのためいくつか受けた体験レッスンのあれこれを面白おかしく話そうと思っていた。機会はなかなかなくて、やっと走ったときはもうそんなことはどうでもよくなっていた。それがあのときだ。坂道ダッシュや階段ダッシュをして楽しかった。

ホント、楽しかったなあ。夏からずーっと鬱屈していて、一週間前スタジオのバーベキュー大会に参加したことも後悔していて、だかららしくないことはやっちゃダメなんだとそれも引きずっていて、そんな中でのランだった。

リュウドは相手の気持ちを引き立てるのが上手い。それもトレーナーとしての技の一つだと言ってしまえばそれまでだが、そもそも相手の心の中を覗く力がなければ技も使えないではないか。

ヒロとバイバイして4日後、初めてリュウドと顔を合わせたときのことはここにも書いた。リュウドはヒロのことにはひと言も触れず、ただ「羽生さん」と私を呼んだ。私はシューズの紐を結ぶふりをしながらそれを聞いていた。顔を上げたら泣きそうだった。

あのときの「羽生さん」を私は一生忘れないだろうと思う。あんな優しい「羽生さん」を、役者の口からだって聞いたことがない。

 

下腹にアメーバがついたからリュウドに叱られるなあなどと考えていたらうっかりリュウド愛がテーマの書き込みになってしまった。ま、いいか。ほんとのことだから。

上野動物園のカバ愛に匹敵する愛をリュウドに捧げる。by羽生。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 01:20 | - | -
へなちょこウォームアップの衝撃

稽古はいつもどおりウォームアップから始まった。その後発声と歌へと続き、芝居の稽古へと進んでいく。

それにしてもウォームアップが大マヌケだった。腕立て200回をこなす私の目からみるとあまりのヘボさにあきれるばかりだ。どうして今日までこんなヘボいウォームアップを許してきたのかわからない。羽生さんともあろう私がとんだ大失態であった。

私が「バカみたいだ」と言うとEricoが言った。

「どこに効いてんだって感じなんでしょ?」

そのとおり。

腹筋種目は腹筋なんぞにまったく効いておらず、あんよをパタパタするだけの運動だった。なんじゃ、これ? と私は思った。

元来私は腹筋種目が大へん苦手である。トレーナーたちには叱られてばっかだ。特にアキなんぞは私のあまりのひどさに我慢しきれず「ぷっ」と笑ってしまう始末である。そのあともずっとクスクス笑っている。

でも違う。今わかった。役者たちを見ていてわかった。私はヘボくない! ヘボくないぞっ! ヘボくないどころか優秀な女であった。トレーナーたちは私にウソをついている。

よく考えたらプッシュアップが200回できる同年代の女が、たとえば新宿区内にどのくらい居ると言うのだ。一丁目から三丁目までをあわせてもおよそ10人くらいだと思う。荒木町と富久町を入れたって15人に欠けるだろう。(もっとも市谷本村町を入れるとぐっと増えそうな気はするが。あそこには防衛省がある。文官とは言え強そうだ。)多摩市は同年代が多いと思うので、全域で勘定すると20人くらいは居るかもしれないが、20人で競争すれば負けず嫌いの私は上位だろう。いずれにしろ新宿区だろうが多摩市だろうがどんと来いなのである。

いったい何の話をしているのかわからなくなった。相変わらず知らない人と競争している私である。

とにかく、とにかくである。役者たちがこれではいかん。こんなへなちょこなウォームアップでは。

プッシュアップとプランクとランジを追加しよう。これなら私も指導できる。いつも私が言われていることをそのまま言えばいいのだ。なんなら私が見本を見せたいところだが、むき出しのウェアを着ないとやる気が出ないので、稽古場ではやめておいた方がいいだろう。私のやる気が出ても、むき出した私を見て役者のやる気が萎えてはなんにもならぬ。

 

稽古の後は居酒屋へ。楽しかったので私もノンアル梅酒(最近覚えた。チョーおいしい)とトマトジュースを2杯おかわりした。

『狐の姫〜』の思い出話に花が咲き、『サンタクロース〜』の希望を語り、昔私がどれだけ恐ろしかったかを千歳が言い立て(もはやこれは千歳の居酒屋におけるネタとなっている)、それから雅紀がデブになっているのではないかとみんなで心配した。

 

| 羽生まゆみ | サンタクロース イン トーキョー | 05:12 | - | -
プレ稽古

『サンタクロース イン トーキョー』のプレ稽古。

あー面白かった。なにしろ私にはまだお気楽な稽古だからね。演出席に座ってお菓子食べながらケタケタ笑っているだけだった。次回7日にはダメもガンガン飛ばすだろうが、ホン持って芝居している役者にあーだこーだ言ってもしかたない。

途中「ホンがじゃまだね」と言ったら、研がすかさず切り返してきた。

「それは僕らもおんなじです」

笑った。確かにみんなホンの取り扱いにアップアップしていた。これは一つには、この日配られたばかりでクリップなどでとじられておらず、バラで持っていたという物理的な問題もある。しかし何よりも、玉組の稽古場ではホンは持たないというオキテが、役者の身に沁みついているからだと思う。

麻理枝や佳美なんぞは玉組生え抜きの役者だから、特に「ホンを持って立つ」のに抵抗がある。気持ち悪いのだ。よそ様に出演したとき「どうしてもやりづらくて台詞が入っていないのにとっとと捨てた」と佳美が私に報告したことがある。こういう報告は私にはとっても気分が良い。「私の役者どーよ」の心もちである。

実は役者たちの多くはホンが大好きだ。いつまでもいつまでもホンを手に稽古したがる。(もちろん演出家によってはうろ覚えの台詞で稽古するよりはホンを持ってやった方がいいという考え方の人もいるから、それはそれでよいのだよ。否定するものではない)

いつまでもホンを持ちたい気持ちは役者だった私にはよーくわかる。台詞がすぐ出てこないのはまず恥ずかしいもの。かっこ悪いんだもん。だからできれば「完璧」に入れてから離したい。

もう一つは、これは経験の浅い役者にありがちだが、舞台上の空間や時間を埋められないとき「ホンに逃げる」ことができる。埋められずに困った時、ホンに視線をやれば「困った」から解放されるのだ。これは舞台上に置いてある「小道具に逃げる」と同じ心理である。そこにコーヒーカップがあればそれを飲み、ぬいぐるみがあれば頭をなでてやる。

そして私に怒られる。

「逃げてんじゃねーよ! 耐えろっ!」

 

長野在住中の雅紀の代役で三浦研が稽古に参加した。プロローグと一場だけなら来週仕上がるんじゃないかというデキで、私は笑いをこらえることができなかった。

研がどういう経緯で『サンタクロース〜』の初演を観たのか忘れたが、とにかく初めて玉組を観たのが『サンタクロース〜』だったのだ。気にいったのだろう、ロビーで売っていた脚本を買って帰った。当時まだ大学生だった。

そんなわけで、スジも知らない他の役者と比べて一人だけ次元の違う芝居をしていた。

私がほめると研は笑って、

「DVDまで観て予習してきましたから」

そうか、DVDも購入していたのか。ファンじゃん。

研は雅紀や匡人とは違う自分なりの「詩人の八歩」を創っていて、それが私には楽しかった。

 

ホンを買ったといえば稽古に初参加した優太も、公演中のロビーで『狐の姫と詐欺師たち』の脚本を買っていて、まあこの時点でオーディションに合格したも同然だった。

あとは佳美、麻理枝、優太で役をどう振るかだったのだが、稽古を観て優太の夏生でやることにした。できれば男の子でやりたかったし。稽古中、立ち位置に困っている様子を見て決めた。本当にダメな役者は立ち位置に失敗していることにさえ気付かない。自分の居る場所に満足したまま喋る。7日の稽古で動けるかはっきりするが、たぶん大丈夫だと思う。

優太、死ぬ気でやれ。一生に一度あるかないかの大役である。それは麻理枝と佳美にも言える。『サンタクロース〜』はヤングチームがストーリーを紡いでいく芝居だからだ。アダルトチーム(アイビーハウスの住人たち)は秘密が多すぎて肝心なことが喋れない。

まあ大役を楽しむ余裕もない日々になるだろうが。

 

| 羽生まゆみ | サンタクロース イン トーキョー | 05:43 | - | -
連休前、プッシュアップ祭り(体幹トレ日記79)

一日24時間358日くらいマナーモードにしてあるケイタイがブルブルと震えた。めずらしくすぐに気付いたので手に取ると石井匡人と表示されている。あせった。きっとよくないことが起こったに違いない。病気か、はたまたタイホされたか。病気ならほっとく。タイホなら仕方ないのでパンツとセッケン持って面会にいく。

「もしもし」

返事がない。

「もしもしっ! 匡人っ!」

そして気付いた。Cメールだった。

やーな感じがしてしぶしぶ内容をチェックすると、やーな感じどおり芝居のお知らせであった。あやうくケイタイをベランダ越しに投げ飛ばしそうになった。電話しろっ、バカタレが! この私に、羽生さんに、芝居の案内メールなんぞ寄越すんじゃないっ。

年末から一ヶ月以上、Ericoを通して連絡を取ろうとしていたのに無視しまくりで、こんなときだけ、しかもメールかいと思ったら久し振りに鼻を食いちぎりたくなった。食いちぎった鼻をぺっと吐き出して、塩ふって飲み込んでやる。

前にも書いたことがあるが、私たちが最強のタッグコンビだったころ、メールを送って翌日マジ怒りされたことがある。

「俺と羽生さんの間でメールはおかしいだろ」

たしかにおかしい。私はとても恥ずかしかったし後悔もした。「メールではなく喋る」という暗黙の取り決めが存在することを、私はちゃんと知っていたのに。オキテは一度破ったらオシマイなのだ。残念なことだった。私には忘れられない強烈な思い出だ。

今暗黙の取り決めは霧散し、匡人はメールで芝居の案内を寄越す。それが今の「俺と羽生さんの関係」であるということ。淋しいね。

まあよい。時間が取れれば行くよ、匡人。

 

連休前最後のトレーニング。なんと60分のうち50分がプッシュアップというプッシュアップ祭りであった。

1セット10回をリュウドと交代でやっていくのだ。私がやっている間はアキとアッキーラも交えて「ほら、もう肩が上がってる」だの「6回過ぎるとフォームが崩れる」だのこそこそ3人で悪口言いまくりである。私は「悪い見本」かよっ。

時々アキとアッキーラも完璧なフォームで参加した。いちいちドヤ顔で私を見るんじゃないっ。プロなんだからできて当たり前でしょーよ。

途中おっくんが通りかかった。

「すごいなあ羽生さん」

リュウドが言う。

「でもヘタですから」

余計なこと言うな。

「そうかなあ。できてるように見えるけどなあ」

でっしょーォ?

ツッチーも通りかかった。

「イケメン三人がかりでいいね」

這いつくばったまま言い返す。

「ちっとも、九! よくない、十っ!」

もう途中から何セットやったかわからなくなった。終わってから「15セットはやったよね」とリュウドに訊いたら「もっとやってる」とのこと。20セット? 200回やればたいしたものだ。なんでダメだダメだと言われるのかまったくわからない。

 

残りの時間はノンストップのスクワット。30圓離弌璽戰詛愽蕕辰銅景間、ひたすら頑張った。

次まで7日間開く。お正月じゃないから食べ過ぎることはないと思うが、しかし心配である。

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 14:54 | - | -
悲しみの青年

連休中はスタジオが五連休になるのですっごいあせる。

昔匡人が「毎日走らないと不安になる」と告白した際、「それは強迫神経症という病気である。病院へ行け」と注意勧告したのを覚えているが、なんてことはない、私も罹ってしまった。

というわけで食い溜めならぬ運動溜めである。めずらしくジムに二日続けて行き、ずんばとマーシャルクラスで狂ったように踊ったり蹴ったりした。新顔のマーシャルインストラクターさんが怯えたように「ナイスファイト」と言ってしまうくらいの出来であった。最近スタジオでアッキーラから「覇気がない」と言われているのとはえらい違いだ。

それからトレーニングルームへ行き、やっぱり珍しく筋トレに精を出した。スタジオで習った腹筋種目を思い出しながら一種二十回で六種目、一分インターバルの二セットやったが痛くも痒くもきつくもなかった。これはやり方が間違っているか、きつくならないようにやっていたかのどちらかである。たぶん後者だけど。

まあいいや。所詮一人でやる場合はきつくならないようにやるのがシロートってもんだ。一人でできればパーソナルスタジオなんぞに通うものか。

で、とっとと気持ちを転換して、やっぱりちっともきつくないストレッチをしていたら、顔だけは知っているスタッフの青年が隣りでお掃除を始めた。見ると坊主頭である。前回までふさふさだったのに。好奇心を抑えることができなかった。

「どうしたの? 失恋した?」

きつくない腹筋を二百四十回もやったのでテンションが上がっていたのだと思う。私は家から徒歩5分のこのジムに十年通っているが、スタッフに世間話を誘導したのは初である。

彼は苦笑いすることもなく、照れ笑いすることもなく、心から悲しそうに言った。

「いろいろあったんすよォ」

私は愛想が良いと言えないこの青年のことがあまり好きではなかったのだが、この瞬間好きになった。普通、喋ったこともない赤の他人に本心はさらさない。いろいろあったのが本当だとしても冗談ぽく答えて笑いを誘ったりするだけだ。

「そっか、いろいろあったのか」

私が言うと、彼は顔をゆがめてもういっぺん、

「いろいろあったんすよォ」

と言った。

よほどいろいろあったのだろう。

 

私たちのやりとりを聞いていたもう一人のスタッフが仲間に入ってきた。

「そりゃびっくりしますよねえ。急にこんな頭になったら」

「でも巨人の小林みたいでステキよ」

最近にわかファンになった小林選手の名前なんぞ出してみた。

いかん。このままだと青年たちのアイドルになってしまうぞ。

面倒くさい。なにしろリュウドやアキたちのお世話するだけで手いっぱいである。

 

| 羽生まゆみ | - | 00:18 | - | -
バリへ行く。ついでに発表

6月にバリ島へ遊びにいく。

旅行のようなプライベートの際たるもの的なことは書かない方向でやってきたのだが、さすがに外国旅行は大ネタで、捨てるのは惜しいので書く。なにしろ国外は大昔グアム島へ行っただけである。島が好きなようだ。

私に外国旅行経験がないと知って「ええーっ、イメージと違う!」と思われる方も居れば、「さもありなん」とうなずく方もいらっしゃるだろう。

外国に限らず国内旅行についてもごく最近まで、行きたいと思うことがまったくなかった。これは私の「方向感覚の悪さ」という欠陥がおおいに関係しているのではないかと思う。迷子になるのが恐ろしくて東京都内だってめったにウロウロしない。

つい先週も、水天宮前から新宿へ帰りたかったのに大手町で乗り換えに失敗し、気付いたら池袋だった事件に遭ったばかりである。丸ノ内線のホームで気持ちが悪くなった。乗り換えに失敗して涙ぐむことはしょっちゅうだがオエッとなったのは初めてだ。そのくらい情けなかった。反対行き電車に乗ってしまう失敗は数えきれないほどある。だから大手町で何度も何度も確認したのだ。それでもやってしまった。原因がわからない。こうなってくると私には迷子オバケが憑いているとしか思えないのである。

旅行を避けるもう一つの理由は、同行者が居る場合、無駄に気を遣って気疲れするという、これも対人関係における私の性格的欠陥によるものである。

グアムに一緒に行ったのは幼馴染のかっちゃんだった。世界で一番気を遣わない他人のはずだったのに、旅行という慣れない環境のせいかいつもと違う私になってしまい、「海で泳ぎたい」のひと言さえ言えず、せっかく目の前に海がありながらずーっとかっちゃんのショッピングにつき合っていた。

ひとり旅は迷子が恐いから嫌。かと言って同行者の居る旅は気疲れする。と、これでは家でじっとしておくしかない。

 

と、ここまで書いて気疲れしない相手を思い出した。

Ericoだ。Ericoとは何度か旅行したことがある。遊びではなく全部劇団活動に関係したことだったが。

私はEricoにくっついていればよかった。タイムスケジュールも、乗り換えも、切符をなくす心配もしなくてすんだ。切符は「羽生さんすぐ落とすから」と速攻で取り上げられたものだ。

「ドトールがない。ドトールは?」

どこかのド田舎でずーっと私が文句を言っていても怒りもしなかった。

「知らない人が居る! 無理! 絶対ヤだ!」

ユースホステルで同じ部屋に他人が寝ていることに仰天して騒いだら、急遽シティホテルに予約を取り直してくれた。

私はとっても楽しい旅だったが、Ericoは羽生さんとの旅は二度と無理だと言っていた。

懐かしいね。私が死ぬときはEricoが家族と一緒に看取ってくれるだろうと、ちらとも疑っていなかった頃のことだ。

 

バリの話をするはずだったのに全然違うことになってしまった。おいおい書いていく。

ところでそのEricoのことだが、次回『サンタクロース〜』に出演する。服飾デザイナーの四季子役である。たっぷりしぼるつもりでいる。私は稽古場に私情を持ち込む演出家だからね。

お楽しみに。Ericoのこともバリ島のことも。

書くよ。

 

| 羽生まゆみ | - | 01:53 | - | -
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< May 2017 >>

このページの先頭へ


みんなのブログポータル JUGEM