羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
バリの虫

バリには思ったよりヤモリが少なかった。

そして虫も居なかった。実はトイレ事情とヤモリの次に心配したのが虫であった。これについてはキンチョールを持って行きたいと騒いで同行者を困らせたくらいである。スプレー缶は飛行機に持ち込めない。現地で買えばいいようなものだが、しかし殺虫剤はキンチョーと固くこだわっている私としては、フマキラーでさえ身を委ねられないのにインドネシア製など論外である。

ごねる私に同行者は言った。

「インドネシアの虫にはインドネシアの殺虫剤が一番効く」

なるほど、そう言われればそれが正しいようにも思える。結局、塗り塗りタイプの虫除けだけ日本から持って行った。

ところが塗り塗りする必要はまったくなかった。虫なんぞいなかったからである。むしろいなさすぎて恐ろしいくらいだった。だって、そんなわけはない。ホテルの広い敷地は熱帯の林あり水辺ありの、虫にとっては絶好の棲家ではないか。なのにうちのベランダの方が多いくらいなのである。いくら多摩市が近年まで森林だったとはいえ、これはおかしい。

 

謎はすぐに解けた。害虫駆除であった。ホテルでは週に三日の害虫駆除デーが設けられていたのである。三日! これは多い。

そういえば朝食時、ヘロヘロ飛んできたハエがテーブルに着地し、ヨタヨタ歩く間もなくコテッとひっくり返ってしまった。あれは前の晩の害虫駆除をなんとか生きのびたハエの、悲しい末期であったのだ。

これはいかんと思った。別にいい人ぶるわけではないが、頭のどこかでちょびっとだけ、生態系のことが気にかかった。思ったよりヤモリが少なかったのも、餌である虫の減少によるものではあるまいか。悪い病原菌を持つ害虫駆除は当然としても、南国の島の生態系に影響を及ぼすとしたらちょっと気にはなる。

けれど観光で食べているバリ島にしてみれば、いい人ぶっている余裕はない。バリ島は日本人のリピーター客が多いと聞くが、これもトイレ事情の改善や害虫駆除などの努力あってこそであろう。かく言う私も事情が許せばもう一回行くつもりでいるが、もし今回虫だらけだったらそんな気にはならなかったかもしれない。

というわけで、私にあまり偉そうなことは言えない。

 

いきなりバリ島に戻ってみた。

やっぱり上手に書けなかった。「バリのオーストラリア人」「バリの中国人」「バリのヤモリ」「バリの虫」と、せっかく旅行したので「バリの○○」シリーズを書いてみたが、私のブログを読んで「バリに行こう!」と思った人は皆無だろう。残念である。

私は上手に描写できなかったけど、ゆっくりするにはほんとに良い島なんだよ。ヒンズー教の寺院は期待したわりにもう一つだったけど、これはもう、素晴らしい神社仏閣を見慣れている日本人には仕方のないことだと思う。日本の寺がすごすぎるってことをあらためて知ることになって、それはそれで良かったと思っている。

| 羽生まゆみ | - | 21:17 | - | -
頑張ってね拍手

Ericoからの不在着信に気付いた。

さっそく来たなと思った。で、すぐさま返信メールを打ってやった。

「削除はしないよ」

Ericoからもメールがきた。

「削除要請じゃありません」

なんだ、てっきり前日の羽生ノートを削除しろと言ってきたのかと思った。うっぷん晴らし的役者の悪口書くとすぐ「削除! 削除!」と騒ぐのだ。

残念。戦う気満々だったのに。

 

心は臨戦モードだが身体はトレーニング疲れでへろへろである。毎回ヒロに「筋肉痛は?」と訊かれるが、

「痛くないわけないだろ、いちいち訊くなっ」

と言いたくなる。

朝目覚めると身体が痛くて起き上がるのにひと苦労である。

で、昨日は起きると同時にいいこと思いついた。

「そうだ、朝っぱらからジムに行こう」

二日酔の迎え酒みたいなものである。ぴょんぴょん跳ねて筋肉痛を振り落すことにした。

会員になっているNUSではなく、オアシスに行った。3年半振りくらいか。3年半前は、オシャレなマダム達に混じって、自称イグアナは大へん居心地の悪い思いをしたものだ。しかし今は違う。マダム達のものすごく派手なお衣装(特にシューズへのこだわりはすごい)にはやっぱり圧倒されたが、心の中で「ダサっ」と悪態つくくらいの余裕はあった。

参加したのはボクササイズ系のクラスである。振りが短時間で覚えられないのが私の弱点だが、なにしろミット打ちで鍛えているから初参加でもそれなりについてはいける。。トレーナーからはへなちょこパンチと叱られてばっかだが、60人のマダム相手に負けるところはなかった。当然である。吐きながらミット打っている日々、これでチャンプになれなかったら悲しすぎる。

 

同日夜はいつものジムの、いつものずんばへ。私のおうちへ戻ってきたよって感じ。お衣装に凝ったりしない、上品で温和なマダム達が、やっぱり私は好きだ。

この日は、オーストラリア人のアマンダちゃんが膝の手術のため半年ほど休むというお知らせがあった。それを聞いてみんなの顔が一斉に曇った。ああ、なんて優しい人達。それからみんなでアマンダちゃんを囲み、「頑張ってね」と拍手した。とてもいい光景である。胸が熱くなった。

しかし皆と一緒に拍手しながら私は思っていた。

「手術することになっても、私は黙って休むことにしよう」

 

翌日再びオアシスへ。ずんばのクラスに出た。

冒頭、インストラクターさんから「初めての方はいますか?」という質問があり、思わず手を上げた。このクラスに出るのが初めてだったからである。ところが質問の意味を私は取り違えていた。

インストラクターさんは明るく言った。

「はいっ、ずんばが初めての方でーす!」

すると50人の派手なマダム達が一斉に私をググッと取り囲み、「頑張ってね」と拍手したのである。ええっ! どうやらここはそんな決まりがあるらしい。恐るべし、オアシスのずんば。

私は思った。

「手術することになっても、初めてのずんばでも、これからは必ず黙っていることにしよう」

 

この後、たぶん私のことなど誰も見ていないんだよなーと思いながらも、すんばが初めての人に見えるよう気を遣って踊った。

 

| 羽生まゆみ | - | 03:43 | - | -
好きにすればよい

『サンタクロース〜』のホン書き作業が楽しい。と言ってもほとんど直していないけど。

性別を変更したキャラの性格付けが主な仕事だ。そんな作業を通して新しいキャラクターが私の頭に沁み込んでいく。

ついでに上演時間を短くするためにカット作業もする。喋るのを楽しみにしていた台詞がなくなっても、役者はそれでいちいち傷ついたりしないでね。

 

そんなことを書いているさなか、麻理枝から電話があった。10月の(雅紀抜きの)稽古は何回くらいやればいいかという質問であった。

はああーーー? 知るかそんなもんっ。それでまた麻理枝相手に意地悪くブチ切れてしまった。すまん。

どうして10月の稽古の回数なんぞ考えなくてはならなのだ。どうしてかというと、雅紀のせいで本格的な稽古が11月からしか始められないからだ。玉組の歴史の中でこんなことは初めてである。だから「前例に倣って稽古スケジュールを組む」といういつものやり方ができないので、麻理枝は途方に暮れているのだ。

しかし私こそが途方に暮れる。稽古スケジュールなんぞいっぺんだって組んだことはない。私に訊いたって無駄である。

前例にならって稽古スケジュールを組んでほしいのは私の切なる願いである。2ヶ月かけて1コマ4時間、50コマの稽古時間を確保する。木曜日は昼から夜にかけてたっぷり稽古する。ラストの5日間は本番の衣装をつけての通し稽古。これが私の身に沁みついた「公演に向けた稽古」である。ずーーーーーっとそれでやってきた。それが私の稽古場、玉組の稽古場だ。ふざけんな!

10月に何回稽古するかなんて雅紀に訊け。自分は出ないのだからスケジュールなんぞ組みたい放題である。私は雅紀の言うとおりに稽古場へ行く。

誰がいつ休みたいだの早引けしたいだの昼間の稽古は出られないなど、いちいち私に報告するな! 知らん! 休みたい役者は雅紀に連絡して雅紀に了解をもらえ。役者たちは好きなだけ稽古を休めばよい。自由にやればよい。いちいち私に言うな。

 

旗揚げ当初から私が休みを許さないとか外部出演を許さないとかさんざん悪口を言われてきた。しかし悪口を言われる覚えはない。結局私は許してきたではないか。私が許そうが許すまいが、役者たちは自分の思う通りにしてきたではないか。思う通りになってきたではないか。今回もなったではないか!

役者たちは私の批判をすることで甘い自分を正当化し、ストイックではない自分に目をつぶることができたのだ。それが役者だ。

そして、さんざん自分に甘いくせに、悪夢のような滑舌のくせに、滑舌の稽古さえしないくせに、「売れている俺」「テレビに出ている私」だけはうっとり夢想する。バカだ。

 

今回も同じである。これまでそうだったように、私が何かを許さないなんてことはない。役者は自由だ。好きにすればよいのだ。稽古の回数など役者たちで決めてもらってけっこう。休みたかったら休んでもらってもよい。

野田秀樹になれなかった私は与えられた条件の中でやるだけである。そうするしかないんだから。

 

私が野田秀樹だったら10月の稽古日数のことなんて考えなくていいのに。あー悔し。

なんだよ、稽古日数って。ホント腹立つ。

 

| 羽生まゆみ | サンタクロース イン トーキョー | 01:47 | - | -
エルピープルさん、あなたは誰?

テレビと同じくスマホからもバカ光線が出ていると思っていた。依存症なんかになったら人生オシマイである。スマホごときで残りの人生を廃人ですごしたくはない。ところがめっちゃいじっている。歩きスマホも辞さない構えだ。いかんいかん。

覚えたてはなんでも楽しいものである。パソコン操作を覚え始めた時もそうだったけど、あっちこっちいじっている間に何かを発見し、運よく設定なんかできちゃったひにゃあもう大変。自分がものすごく「できる人」になったような気がして気分が良い。

ついさっき写真のアルバム設定を成し遂げた。これはもう何日も前から「アルバム」の意図するところはわかっていたのだが設定の手段がわからず、何度も戦いを挑んでは玉砕していたのだ。ついに勝利した。あー気分がいい。

昨日はLINEのプロフィール画像をアップした。これはさすがに躊躇したが、ごめん、やってみたかった。玉組関係者がざわついたに違いない。

「私の知っている羽生さんじゃないっ」

「しっかりして、羽生さん!」

そんな声が聞こえる気がした。

それにしてもいまだに電話帳の登録は27人だし(病院や美容院等も含まれる)、ラインのお友達も29人(誰なのかわからないエルピープルさんなんて人も含まれる。ガイジンだろうか)である。私ってば本当にお友達が少ないのね。

こんなに友人知人の少ない私の人生っていったいなんだったんだろうとつくづく反省しちゃってるわけだけれど、そんな反省をまさかスマホ取得をきっかけにするとは思わなかった。

 

ベランダの緑が濃さを増す季節である。紫陽花や桔梗などの花類は花を落としてしまったが、シダやカボックなどの観葉植物がこの暑さにもめげず元気である。観葉植物類は虫もつかないし育てやすい。380円で買ったときは30兮らずだったカボックがいまや2mだからね。

園芸が好きだなんて、私にはこんなステキなところがある。しかもこのとんでもなく忙しいなか、育てたバジルを収穫してジェノバソースを作るという、毎夏恒例の作業も滞りなくやってのけた。

はっきり言ってジェノバソースなんぞ買った方がよほど安上がりだし、味だってそれほど違いがあるとも思えない。しかしこの「手作り」という自己満足感がこたえられないのである。楽しいのだ。ピザなどイタリアンなお料理を作るたびに、冷凍庫から取り出したソースをちょびっとずつ大切に使っている。そして「私ってばステキ」と思う。

 

写真をパシャパシャ撮りはじめたのもスマホを持ってからである。

来年あたり、もしバジル収穫からソース作りまでの行程を写真付でブログに載せたら、いよいよ羽生もオシマイだと思ってほしい。

 

| 羽生まゆみ | - | 00:57 | - | -
クスリ(体幹トレ日記86)

再会したヒロとのトレーニングも、早四回を重ねた。トレーナーが変わると筋肉もびっくりするのか筋肉痛の日々である。今日も朝から「痛ッ」とぶつぶつ文句を言いながらガニ股で歩いている。内股とふくらはぎと足の付け根が痛い。

ということは前回は下半身トレだったわけだ。この頃トレーニングに限らず、何をやったか、何を食べたか、すぐ忘れる。

そして今日五回目。またトレーニング前に言い争いになった。私は私なりに気を遣っただけなのにどうして叱られるのかわからない。ヒロの目には私のやることなすことみーんな「羽生の身勝手」に映るらしい。もう知らん。何もしないし何も言わない。

だいたい初日なんて、まだ着替えてもおらずリュックを置くか置かないかのところでいきなり喧嘩が始まった。言い争いなどという生やさしいものではない。怒鳴りあいの大喧嘩である。ちょうど作業中であったガス工事の業者さんは、作業が終わっても出るに出られなかったに違いない。

ヒロのトレーニングを楽しみにしていたし、オープンおめでとうの気持ちもあったから、なんでいきなりこうなってしまうのだとつくづく情けなかった。このまま一回もトレーニングを受けずにすごすごリュウドのところに戻ったら、リュウドはお腹を抱えて大笑いするだろうと思った。

工事屋さんが帰ったのをきっかけにやっと少し空気が変わった。

「早く着替えてこい」 

「今日はもうやめておいた方がよくない?」

ヒロのこめかみがぴくりとする。

「あーめんどくさい。いいから早く着替えろって言ってるだろっ」

怒るとめちゃ柄が悪い。めんどくさいとはなんだ。こっちの言いたい台詞である。むかつく。私はあんたのオンナかよっ。きゃ、きゃ、きゃ、客だぞっ!

と言いたかったが、これ以上怒らせるとさすがに怖いからやめておいた。

 

情けないことにトレーニングが始まると楽しくなってしまう。

「思い出した。これよこれ」

うんうん呻きながら、バーにぶら下がって伸びたり縮んだりする。

「足の裏全体で蹴るんだよっ。何度言わせるんだバカ!」

トレーニングなら怒鳴らても嬉しい。ヘンタイだ、私。

こちらに移る間際、リュウドに訊いた。

「私、前みたいに燃えることができるかなあ」

リュウドは言った。

「大丈夫。一回で元に戻る」

「せっかくやめたクスリみたいに?」

「そう。羽生さんとヒロさんのトレーニングずっと見ていたからわかる」

 

で、一回で元に戻った。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 23:01 | - | -
絶好調

『サンタクロース〜』のホンにかかっている。登場人物の性別が何人か違うので、まずざっとそれを直す作業を続行中である。

というわけで改めてじっくり読み直しているわけだけれど、面白い。謙遜しても白々しいから謙遜しない。私についている演劇の神様も当時まだ元気で、絶好調の頃だったのだろう。神様も今では老いた。

もっともすらっと書けちゃうのは今も同じである。構成を壊すのが嫌で突っ込み場所がわからなかった長台詞も、「おお、こんなところに!」と意外なシーンで突っ込めた。このときも「私ってば天才」と思った。とにかく書き始めれば、なんの努力もなしに「ぽあん」と解決策が思い浮かぶ。台詞もぽあんぽあん出てくる。

ちょびっとだけのシーンだけれど新しい台詞だから、一瞬新鮮。なかなか良い長ゼリだよ。お楽しみに。

 

調子に乗っているぞ、私。調子に乗り過ぎてバチが当たらないように気をつけねばならぬ。

でもたまにはこんな自信満々の時期も必要だ。なにしろ一年のうち四分の三はジメジメしている。一年のうち九ヶ月も梅雨だと、これはきついよ。私に春のようなおおらかさが年がら年中あれば、私の人生も随分違っていたのではないかと思う。

こんなにジメジメクヨクヨしていて20年以上もよく芝居が打ってこられたなあと思うのだが、一方腹をくくったときの強さと潔さは人並み以上だから、そのおかげでなんとかなったのかもしれない。長いことジメジメしていた分、覚悟さえ決まれば迷いはない。

そんなわけでたった今、上演を目論んでいた企画が潰れたがあまりへこたれていない。玉組がブレイクしなかったのは役者がバカタレだったからだという、かねてよりの疑念がはっきりして、気分がすっとしたくらいだ。私のせいじゃなかった。前々からそうじゃないかと思っていたのだ。

私はへこたれていないが、よけいな傷を負わせてしまったEricoと、巻き込んでしまった役者には心から詫びたい。でも近い将来必ずやる。

まずは『サンタクロース〜』に集中せねばね。ともすれば気持ちは稽古場に飛ぶ。特に、ヤングキャラを担う麻理枝、佳美、優太の三人はこれまでにない厳しさを経験することになるので、それこそ覚悟して稽古場入りしてほしい。

麻理枝と佳美は私の芝居で初舞台を踏んだ文字通りの子飼いである。優太とて舞台経験は一度か二度だから、私の責任はきわめて大きい。

私に残された時間はそう多くはない。役者を育てておきたい。私の芝居と私の意識を引き継ぐ役者を育てておきたい。三人には私のダメを、覚えていてほしいと願うのだ。

 

さあ次! と力が湧いてくる。『サンタクロース〜』のこともあるが、他にも何かがうごめき始めたのを感じる。行動せねばと思う。

まず来月、久々に映像の女優をやるよ。エロい作品だというので「おっ、いよいよ脱ぐか」と張り切ったら、

「羽生さんは脱ぎません」

あっさり断られた。断固たる拒否であった。遠慮しなくていいのに。

でもまあ現場に入ったらどうなるかわからないので、いちおうトレーナーにも言って撮影日までに身体は作っておきたいと思う。ニベアもぬりぬりしておかねば。

 

プロだね。

 

| 羽生まゆみ | サンタクロース イン トーキョー | 07:05 | - | -
胃が痛い

胃は私の最大の弱点である。

痛みは前日の微かな前触れとともにやってくる。「あ、やばいかも」と恐れつつ眠り、翌朝恐れつつ目覚めると、それは確かに訪れるのだ。かなりの激痛で「きしむ」といった表現が一番正しいかもしれない。

きしんだ時は胃を指で押さえながら我慢しているしかない。するとやがて潮が引くように痛みは去る。寄せては返すの繰り返しだ。まるで陣痛だが、陣痛と違って何も産まれない。

たいがいガスター10を飲んで我慢していれば一日か二日で治る。ところが今回は木曜日から微かに始まり、金曜日はピークで、土曜日はついに病院へ行った。先生のていねいな問診が始まるが、こっちは「そんなことどうでもいいからとにかく早く痛み止め出してくれ」の心持ちであった。

食べたものなど訊かれたが、そんなものは関係がないことは私が一番よく知っている。なにしろ高校生の頃からつき合っている。そういう胃なのだからしかたない。たまにきしみたくなる胃なのだろう。

毎年バリウム検査もしているが特段悪い病気は見つからない。というわけでたいがいのお医者様はやさしくおっしゃる。

「胃の痛みはほとんどがストレスです。心当たりはありませんか?」

この「ストレス」という言葉、なかなか心地いい。胃が痛いとき、まわりの人に「きっとそれ、ストレスだよ」と言われると、なんだか自分が少しえらくなったような気がする。悩みや苦しいことがたくさんある私。まわりに理解されない私。いじめられている私。むつかしいことをたくさん考えている私。などなどの私である。それで胃が痛くなるなんてめっちゃかっこいいじゃん、私。と思ってしまう私である。

だからこそ、自分で「ストレス」とは言いたくないと思うのだ。かっこ悪い。「ストレスじゃない?」と言われたら、「ゆうべドカ食いした」とか「腐った卵食べた」とか「レバーブロー入れられた」とか言いたい。その方がずっとかっこいい。

ちなみにこの頃は胃が痛くなってもへこたれない。胃痛で死ぬことはないからね。

 

Ericoから電話があり、芝居関係のことを二時間以上しゃべった。この日匡人とお茶だかご飯だかをしたそうである。きっと私の悪口で盛り上がったに違いないが、でもいいの。私の作品に向ける二人の愛を私はよく知っているから。その点は微塵の疑いもない。謙遜する気もない。

とっても前向きなことを話した二時間で楽しかった。いろんなことがなかなか思ったようにはいかないけれど、それでも芝居は私のよく知った世界であり土俵で、Ericoにしろ匡人にしろ私には勝手知ったる人間である。構えることも疑うこともしないですむことが私にはありがたい。

腹の立つことはお互い様にあっても、こと芝居に関する限り、そこに存在するのは信頼である。とても、楽だ。

 

二時間後、電話を切ってふと気付いた。

胃が、痛くない! 楽しかったら治った。

 

なんだ、やっぱりストレスじゃん。

 

| 羽生まゆみ | - | 07:00 | - | -
ライン

ラインなるものを登録した。(これはさすがに若いもんにやってもらった。)

ラインなるものがいったい何なのかあまりよくわかっていない。「既読」というマークがついているのに返信がないと傷つくものであるらしいことはTVから得た情報で知っている。怖い。傷つくのは嫌だ。

これから公演に向って麻理枝やEricoと長電話することが多くなるので、だったら電話料がかからないと聞くラインにしておこうと思っただけなのである。ケチが祟って傷ついてはかなわない。傷つくくらいならお金払った方がマシだ。

と心配していたのだが余計な心配であった。だってよく考えたらラインを使ったのは登録初日だけで、それ以来私の方からラインなんぞ1件も送っていなかった。どうりで「既読」を見ないはずだ。

覚えたてのわくわく感から、ラインとかメールとか駆使してみたいのだが用事がまるで見つからない。私がいきなり「元気?」とか「どうしてる?」なんてメールしたら、たいがいの相手は何か裏があると思ってビビるだろう。役者なら間違いなくEricoに「こんなメールきたんですけどっ」と連絡する。そんな大げさなことになっても困る。

初のライン操作で、スタンプってこれだったのかーと初めて知った。ちょー楽しい。もっと押したい。どのスタンプにしようと選ぶときはコンビニでアイス選ぶときくらい迷うね。しかも相手に「既読」がついていると思うとものすごくあせる。

 

さてと、いよいよ最後のトレーニングだ。大丈夫、感傷的にはなっていない。

今日はクールに乗り切りたい。

 

| 羽生まゆみ | - | 06:50 | - | -
あと一回(体幹トレ日記85)

この2日間、トレーニングはそれぞれアキ、アキラと続いた。千秋楽は間違いなくリュウドだろう。これが入ったばかりのトコ君だったら「へ?」だな。ウケて笑ってしまうかもしれない。その後、今世紀最大に不貞腐れて最後のトレーニングを終える。

昨日トレーニングが終わってロビーで休んでいたら、トコ君が「羽生さんとはもう一回やりたかったです」と言ってくれて、お上手だとわかっていても嬉しかった。

先週初めて私を担当した。新人に厳しい演出家としては最初から良い顔はできず、また「アキラが居るのになんでアキラじゃないのよっ」という気持ちもあって、ずーっと薄っすらフテていたのだが悪いことをした。(アキとリュウドに「どうでした?」と訊かれた時は、まさかフテていたとは言えないので「うん、人見知りしてた」とごまかしておいた。)

アキもアキラもラストというのをそれなりに考えてくれたと思う。アキはベーシック3(デッドリフト・スクワット・ベンチ)、アキラも私が大嫌いなびょんぴょん種目で最後のトレーニングを〆た。

最後だからといって急にうまくやれるものでもなく、いつもどおり立派にヘタクソだったが、充実していて気合の入った1時間だった。このトレーニングを心と身体に沁み込ませておこうと思った。最後のダメを決して忘れまいと思った。

「今日が最後じゃないですよ。火曜日、羽生さんのトレーニング見に来ますから。髪の毛切るついでに」

ダメだ、泣きそうになった。アキラは火曜日が定休なのだ。なのに来ると言う。

だいぶ前、何かの理由でアキラを抱きしめようとしたら、身体を固くしてズリズリ後ずさりされたことがあった。なので今回は用心して、私の方から「来て」と求めたら、なんの躊躇もなくステキに抱きしめてくれた。「ああアキラ、大人の男になったのね」と思ったらまた込み上げそうになった。

トレーニングが終わってプロテインを飲みながらダラダラグズグズしていた。あとちょっとだと思うと1分でも長くここに居たい。私はこの日最後の客で、私が帰らないとスタジオを閉められないスタッフにはいい迷惑だったに違いない。

いつもだったらこの時間に翌週の予約を入れる。希望の時間に取れないと「何でよっ」と文句を言っていた。文句なんか言わなきゃ良かった。

カウンターのむこうからアキラが言った。

「3年後に予約入れておきますか?」

笑った。アキラはここで一番面白い。

それにしても最後が火曜日でよかった。平日の夕方、スタジオは忙しいからしみじみしているヒマはない。トレーニングさえ気合を入れて乗り切れば、感傷的にならずにすむと思う。私は今、これを書きながら泣いているが、最後は明るくサヨナラしたい。かっこ良く別れたい。

 

バリのヤモリと同じで準備はできているから大丈夫だろう。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 17:01 | - | -
ちょうど半分

今年もちょうど半分が過ぎた。なんてこった。早い。早すぎる。

そしてこの半分のところで、私の生活を一新するような出来事がいくつか重なり、偶然の不思議に小さなため息をついている。6月と7月の、目に見えない境界線が不思議。

代表する出来事が、携帯電話の水没事故だ。ついにスマホを持つことになった。それはいいのだが、水没のためデータの復旧叶わず、友人知人親戚の連絡先を全て失くした。想像していたほどの衝撃はなく、お風呂上りのようにサッパリした気分だ。今は麻理枝が送ってくれた玉組関係者と母親が登録されているのみである。

いいかげんガラケーはまずいぞと思いつつ、壊れても失くしてもいないのに買い替えるのもどうかと思いながら今日に至った。内心さっさと失くすか壊れればいいのにと思っていたところなのだ。

あーサッパリした。

 

auショップは面白かった。多摩はお年寄りが多いんだなーと改めて感じた。右隣りのおじいさんも左隣りのおばあさんも耳が遠く、店員さんが大声でしゃべっていた。とても親切でフレンドリーで、見ていて聞いていて微笑ましかった。

「来月の請求書、急に金額がたくさんになってるけどビックリしないでくださいよ!」

こんな調子だ。

おじいさんはわかったのかわからなかったのか、なんとも頼りなく「はいはい」と言っていた。つい笑ってしまったら、私の相手をしていた店員さんもつられて笑った。

というわけで私もフレンドリーに手続きを進めた。何かを決めなくてはならいときは必ず「あなたはどうしているの?」と訊いた。

「あなたは何ギガで契約してるの?」

「20ギガです」

「ええっ、そんなに? 私は5ギガでホントに大丈夫?」

とまあこんな感じである。ギガがいったい何のことやらわからないままギガギガ言っていた。

そんなこんなで初めてのスマホである。今のところさわるのが楽しい。マナーモード設定とアラーム設定を1時間くらいかけて探り当てた。ちゃんと自分で設定できたときは嬉しかった。

Ericoから電話が2回ほどあったが、電話マークを押しても滑らせてもどうしても会話することができず、2回ともこっちからかけ直した。かなりめんどくさい。

その後、誰か電話かけてこないかなあと待っているのだが誰もかけてこない。そりゃそうだ、ガラケー時代から誰もかけてこないのに、スマホになったからといって急に電話量が増えるわけがない。

 

生活が変わる。

スマホを持ったこともその一つ。

雅紀の件があり、本格的に『サンタクロース〜』のホンに取り組み始めた。

書道の師匠が体調を理由にお教室をおやめになる。私も書をやめるか考えている。

7月4日、愛するリュウドたちとお別れする。

そして私は、ヒロが店長としてオープンする新しいスタジオに移るのだ。

なんてこった。この一件で私は15歳おばあさんになった。

 

| 羽生まゆみ | - | 12:36 | - | -
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>

このページの先頭へ


みんなのブログポータル JUGEM