羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
謝辞

打ち上げは、役者2人と、毎日コヤ詰めだったKAZUHO、ゆーすけ、優樹、麻理枝に私を加えた7人でこじんまりとやった。

その日のうちに帰宅し、翌日は起きたり眠ったりダラダラ過ごし、その翌日と翌々日はさっそくボクシングで汗を流した。否応なく夢から現実に戻りつつあるここ数日である。

昨夜はEricoと電話で話をした。どうやらEricoはペットロスに陥っているようで、話している最中にも「歩太ーーーっ!」と3回くらい叫んだ。かなりの重症である。かく言う私も「歩太に会いたいよォ」と呟く日々だ。

その歩太はすでに歩太の皮がむけて純一に戻り、次回作の稽古に入っているはずである。珍しくご挨拶メールをくれた。「すごく大変でした」「どうなるか怖かった」「出来上がる気がしなかった」等々、気弱な発言が並んでいて笑った。さすが麻理枝に豆腐メンタルと褒められていただけのことはある。

 

(以下、敬称略)

音響プランの鳥越優樹に心からのありがとうを。コヤ詰めどころか稽古場にも詰めて、稽古場での通しと本番のすべてを私と一緒に観た。音楽の知識が圧倒的に不足している私は、具体的な指示を出すことができない。あーだこーだと抽象的なことばっか言って困らせてしまった私を許して。コヤで舞台の掃除までさせてしまった。ゴメンナサイ。コヤで掃除をしたら羽生のスタッフという規則が玉組にはある。よその劇団で音響の仕事をする際は私の了解を取ってからにしてね。

すばらしいBGMを提供してくれた作曲のウエノアヤコにお礼申し上げる。美しい旋律が役者の下手な芝居をカバーしてくれた。やっぱりオリジナル曲は心に沁みる。お会いできなくて残念だった。いつか会ってお礼を申し上げたい。どうか今後ともEricoをよろしくお願いします。

歌唱指導の中川真希に特別の感謝を。いやはやしばらくぶりに聴いたらEricoの歌唱力が上がっていたのでびっくり。真希ちゃんのおかげであることは言うまでもない。最後までダメ出しのあった『ナオミの夢』が、本番では一番ステキに仕上がっていたよ。ああ、あれがもう聴けないのかと思うと萎える。12月の作品を楽しみにしています。

KAZUHO、ああKAZUHO、本当にありがとう。長い友、ゆにっとのKAZUHOに心からの感謝と尊敬を捧げる。チケット管理から受付、雑用の数々と、多岐にわたって活躍してくれた。デキルオンナということは知っていたが、それ以上だった。Ericoはどんなに助かっただろう。もちろん私も。私に恩が返せる能力も方法も無いが、どうか見捨てることなく長いお付合いをと願うばかりである。

同時にゆにっとの舞台監督、浅見雄介には感謝の言葉もない。なにしろ私のいつものスタッフが参加しておらず(舞監の稲毛健一郎は楽日に客席に座っていた! こんなところで何をしておる! と言いたかった)仕込みが心配でならなかったところ、浅見君が颯爽とプロの仕事を見せてくれた。ありがとう。

照明と音響オペをたった二本の腕でやってくれた高橋ゆーすけに愛と感謝を。吊り変えられないという厳しい条件の中、最大限の努力で美しい明かりを創ってくれた。KAZUHOが撮ってくれたツーショットの写真、私はすっかりエロばばあの顔でした。男前と写真を撮るとたいがいこうなる。次回はゆーすけが演出ね。Ericoをよろしく。

向井登子。ここに感謝を書き込んでいいのかわからないが、当パンに名前が載っていたのでたぶんいいのだろうと思い、書く。Ericoとお茶をしてくれてありがとう。そのとき脚本の一ページに、なんか落書きしてくれてありがとう。その落書きは私のファイルに収まって、いつものように稽古の間じゅう、演出席のテーブルに置かれてあった。ゲネの前にコヤへ来てくれてありがとう。舞台を歩いてくれてありがとう。たくさんたくさん、ありがとう。

宣伝美術のオガサワラトールに感謝申し上げる。Ericoに掴まったら逃れるのは至難の業だ。この企画が終わるまで、いやその後も、Ericoはトールさんの首ねっこにくらいついたまま放さないだろう。私もまた、ほっこりした優しい見た目に癒された日々だった。どうぞ長いお付き合いをと願っている。

えあぽ、木箱を塗ってくれてありがとう。突然呼び出してゴメン。久し振りに会った。ちっとも見た目が変わっていなかったのでホント安心した。死んだんじゃないかという噂まであって(私が流したのかもしれないが)、もし激やせとか激太りとかしていたらどうしようと思っていたが杞憂だった。頼めばスーパーマンのようにやってきて私を助けてくれる。変わらず愛しているわ。

演助の木村麻理枝。ここで感謝を述べるのは変な気分だ。スタッフに専念した麻理枝がこんなに優秀だとは知らなかった。私よりホンの台詞が頭に入っていたので愕然とした。これで私はますますバカになるに違いない。バカになっても大丈夫だとわかったから。ありがとう麻理枝。そして麻理枝を育ててくれたKAZUHOに、あらためて感謝申し上げたい。

 

笹本純一とErico。二人の役者に感謝は言わない。私は演出だから。

役者は二人だけ。濃密な一ヶ月だった。きつくて焦りまくりで大変だったけど、楽しかった。芝居についてのあれこれはまた別の機会にゆっくり書いていく。ただ一つ、いろんな評価はあるだろうが、この芝居が良い作品であることを、二人には言っておきたい。なぜそう思うかも、またの機会に書く。

役者としてのEricoにありがとうは言わないが、プロデユーサ―としてのEricoには、この機会をくれたことに感謝したい。

私はまた一つ創ってしまった。幸福である。

 

ご来場のお客さまに心より御礼申し上げます。

今後、私以上の才能を持つ演出家たちの作品が続々2ヶ月おきに登場します。どうか再度、再々度足を運んでいただき、そして同じコヤで、同じEricoで、演出によってどのように作品が変わるものなのかを楽しんでいただけたらと願っています。

ありがとうございました。繭子(小雨)というばーさんを、歩太という犬を、時々思い出してくださいね。

 

演出/羽生まゆみ

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 18:03 | - | -
通し稽古(稽古場日記7)

さあ、ついに明日で稽古も終わる。残す通しはあと1回。

先週の今頃は絶望のどん底に居た。でも結局仕上がった。そう、いつも結局仕上がるのだ。

玉組ではいつも5回通し稽古をやってからコヤ入りするが今回は4回だった。つまり通し初日に間に合わなかったのである。通しは取りやめて、抜き稽古と止め通しをやるしかなかった。そのくらい仕上がりが遅れていた。

初通しは笑っちゃうくらい台詞をトチっていた。トチってはいたが、しかし初通しを見て仕上がると確信した。何度も芝居を創っていれば、いくらヘボ演出家でもそのくらいはわかる。なんかホント、安心した瞬間だった。

それにしても二人芝居というのは、役者には本当に大変なことなのだとあらためて痛感した。相手にまっ白悪魔が来たとき、対処するのは自分しか居ないというプレッシャーは相当なものである。

それがわかったのは、今回の通しで純一に2回も悪魔が来たからである。かわいそうなErico。見ていられなくて私は思わず台本に視線を落としたね。

それにしても純一は面白いわ。堂々と舞台上でミスる。ごまかさずにミスをやりきる。

昨日なんて舞台上で突然、キョロキョロと何かを探し始めた。

私は隣りに座っている演助の麻理枝にこっそり訊ねた。

「純一はいったい何を探しているの?」

「わかりません」

麻理枝は小道具に責任があるので、たぶん私より純一の捜し物が気になったに違いない。

通しが終わって、私はさっそく純一に訊いた。

「何を探していたの?」

純一は言った。

「立ち位置です」

「はい?」

「急に立ち位置がわからなくなって……」

捜し物は小道具ではなかった。まさかの立ち位置であった。立ち位置が、キョロキョロ探して見つかるものだろうか。びっくりである。

 

純一は今回本当によく頑張って私を笑わせてくれた。一人しかいない男子としての責任感からだろう。

いよいよ明日は最後の稽古場。いっぱい笑わせてね。

 

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 22:05 | - | -
ライブハウス(稽古場日記6)

初日一週間前に、公演会場で場当たりができた。これは画期的な出来事である。

今回は乗り打ちなのでなんだかんだの不安でいっぱいだったがこれで安心できた。Spase CUBEさんのご配慮に心から感謝申し上げたい。

一番の不安はやはり「劇場ではない」ということだった。

私はこれまでリアルセットを組まずに芝居を打ったことがほとんどない。芝居の内容と雰囲気から美術のリアルは命題だった。なのでパネルを立てなかったのは劇団を揚げる前の1、2回のみである。(『地下室のダンディ』は立てていないが、新宿モリエールの壁をそのまま使って地下室感を出した。間違いなくリアルであった。)

私は「いつもと違うこと」が苦手だ。役者たちには「勇気を出せ」とわめいているが、自分自身はかなり勇敢さに欠ける。臆病者である。

しかし杞憂だった。親切な方々の活躍で、私はまた憂いなく本番を迎えることができる。(役者の芝居に関してはまだ憂いだらけだが。)

なんだかさ、私はいつも解決策のないまま、こんなんは嫌あんなんは嫌、こんな感じあんな感じ、と言うだけだ。そしたらいつの間にか誰かが解決してくれるのだ。今回の舞台美術も、「床につるつる感があるのは嫌だ」とか「幕芝居は嫌だ」とか、「物置感」だの「ごっちゃり感」だのと繰り返していたらなんとかなっていた。

三脚を利用した芝居も実は心配だった。稽古場に三脚が無いのでパイプ椅子を相手にやっていたからだ。どんなに想像力を働かせてもパイプ椅子はパイプ椅子で三脚には見えない。これも会場で本物の三脚を使って試すことができた。三脚が相手では純一がフェロモンを飛ばすことができないと、早めに確認できてよかった。猛稽古して飛ばせるようにしなくては。

 

KAZUHOのお世話になっている。ライブハウスの仕様がまったくわかっていないので(それ言ったら劇場もだが。しかしそんなことをベテラン演出家の私が告白したらまわりがビックリするのでなるたけ内緒にしている)ぽわんとしていたら、KAZUHOが私の代わりにあれこれいっぱい確認作業をしてくれた。

KAZUHOの気が付くことったらないよ。知っていたけどやっぱりすごい。制作の仕事なんぞ、もう完璧である。激疲れのEricoも、KAZUHOと麻理枝の言うことをヘイヘイ聞いていればなんとかなる。

KAZUHOのおかげでいろいろ覚えた。今度どこかのライブハウスで公演を打つことがあったら下見のときに、

「ツラにあるスピーカー、もう少し低くできない?」

これは絶対に言ってみたいと思っている。

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 18:04 | - | -
賀正メール(稽古場日記5)

稽古も佳境の四場である。

ここは稽古するのが、やる前から気が重たくてしかたなかった。役者の芝居がヘタ過ぎてガクーッとへこたれるに違いないと想像していたからである。そんなわけで稽古したくなかったけど、そういうわけにもいかないので今日初めてちゃんとやってみた。

なんか知らんがわりと良かった。

なんか知らんがEricoはちゃんと喋るし、なんか知らんが純一の受けがいちいち決まる。

ちょっと気が楽になった。

いやいやまだ油断はできない。私が「きっとひどいに違いない」と思い込んでいたせいで衝撃が薄められただけだったのかもしれない。

さて、今回は一時間に凝縮されているせいか、私が創る芝居の特徴がよく目立つ。全編通して過去を語り、死者を語る。私の芝居ではたびたび主題となるレクイエムである。

鎮魂の対象が誰であるかはまだ言えない。Ericoに怒られる。残念である。いろいろ喋りたい。

玉組をいつもごらんになっているお客様には「ああ、安定のいつものやつだ」と思っていただき、新しいお客様には私の創る「物語」を楽しんでいただければと願う。

 

せんだって稽古場で雅紀の噂話をしたら、翌日雅紀からメールがきた。

年明けの挨拶かと思って大喜びで開けたら芝居の宣伝だった。なんだよっ。

いちおう明けましておめでとうの挨拶はあったが、こっちの方がついでであることは間違いない。

先ず年始の挨拶、それから二週間後に宣伝。二つに分けろっ! と思った。

まあよい。麻理枝とEricoを除けば役者で挨拶メールがあったのは優太くらいだ。次回、もし優太が玉組の舞台に立つことがあったら台詞10個は増えるね。

純一でさえ挨拶なしだから他の者のメールなんて端から期待していない。全然していないし。ホントにしてないもん。

Ericoは正月前純一に、羽生さんにメールするようにと進言しようとしたらしい。しかしいくらなんでも今回はするだろうと思って余計なお世話はやめておいたら、やっぱりしなかったと言っていた。

稽古場でそれを聞いた純一がめっちゃ渋い顔をしていた。

 

いいのよ、純一。もちろんそんなことは問題ではないわ。あなたがとびっきりステキな芝居さえしてくれれば。

素晴らしい俳優でいてね。私の望みはそれだけよ。メールなんて全然。ホントに全然。ホントよ。ホントだから。

 

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 00:45 | - | -
通過する(稽古場日記4)

音響のゆうくんと歌唱指導のまきちゃんが来てくれたので稽古場が賑やかだった。

なにしろ毎日4人ぽっちで稽古しているのでとっても寂しいのである。いつもの稽古場だったら喋らない(無駄なエネルギーを使わない)純一でさえ、なんとかせねばと頑張って喋っている有り様だ。

これまでの作品の中でもちょいちょい歌シーンは作ってきたが、ちゃんとした歌唱指導をやってもらうのは初めてである。いったいこれまでどうやって仕上げていたのだろうかとふと疑問に思い、Ericoに訊いた。すると、

「羽生さんが『うーん、なんか気持ち悪い』とか言いながら」

ええっ! そんなんで仕上げていたのか。びっくりだ。役者たちがよく私の悪口を言わなかったものである。私だったら言うね。

BGMについては今回作曲家がいる。久々のオリジナル曲である。歌の楽曲もあっという間にオケを作ってくれたから本当にありがたかった。テーマ曲もすでに上がっている。

曲に手を加えるのはゆうくんだ。ゆうくんが楽器を足したり変えたりイロイロしながらBGMとして完成させる。プランもゆうくんである。

まきちゃんとゆうくんは私を挟んで左右に座っていたのだが、歌練の間に何か問題が発生するとプロらしくすぐさま打合せが行われる。専門用語がびゅーん、びゅーんと、私の目の前を右から左へ、左から右へと通過するのである。私はウインブルドンの観客のように、ただ頭を右や左に振っているだけであった。

などと呑気なことを言っているが、各スタッフさんは私と組むのが初めてだからさぞ不安だろうと思う。私は、私が何を希望し、どんなイメージを描いているかを、本来具体的に提示するべきなのだろうと思う。

しかし謝るほかはない。私にはそれができない。それができないポンコツの演出家なのである。スタッフだけではなく、ある意味役者に対しても同じである。イメージを訊かれるとただ困惑して佇んでしまう。

 

ところで、このところEricoがあっちやらこっちやらに忘れものをするから心配だ。今回稽古が始まってから電車やらバスにバッグや化粧ポーチを置き忘れているし、昨日は稽古場に借り物のマイクスタンドを置きっぱにした。あー心配。

これからEricoとどこかへ行くたびに大事なものは私が預かり、帰る際私が「Erico、忘れものない?」と言わねばならぬのだろーか。これまでEricoが私にやってくれたように。

メンドクサイ。

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 23:58 | - | -
軽く報告(稽古場日記3)

なんだかんだで始まった。

二人芝居なんて役者にとっては上手になる大チャンスである。この稽古を通して二人がちっとでも芝居が上手くなってくれれば私も嬉しい。なーんも変わらなかったら、私自身がいったい20年も何をしてきたんだということにもなる。

ヘタなので役者の芝居は不安だらけだが、舞台をどう飾るか決定したので、気にかかっていた不安が一つだけ減った。

長いこと美術の登子さんが描いてくれた絵を演出席に広げて稽古していたから、それが無いとどうにもつらいのだ。やりづらい。これまでどれだけ私が贅沢してきたかがわかる。登子さんとの出会いは演出の私が得た最も大きな幸運の一つだ。

そうそう、今日気づいたのだが、今回役者は壁に寄りかかることができるぞ。おおっ、新鮮! なにしろ普段は寄りかかるどころか触るのも禁止である。壁が揺れてしまう。だって、アレ、パネルだもん。ちょっとでも揺らすと私に叱られる。

なのでみなさん、ご期待下さい。今回は純一があっちやらこっちやらでステキに寄りかかってくれるでしょう。もしかしたら壁ドンだってあるかも。相手がEricoじゃなかったら見てみたいが、Ericoなので残念ながら即やめさせる。

佳美だったらやる。(佳美のそーゆーシーンの苦手っぷりがチョー面白いので)

 

ごめんね、明日があるのでもう寝る。明日は稽古前にちょっとサンドバッグ打ってくる。

ええーっ、羽生ノートよりそっちの方が大事なのかっ! と怒る関係者諸君のお顔が目に浮かぶが、うん、そうなの、そっちの方が大事なの。

今回は役者が二人だけで変わり映えがしないせいか、麻理枝の稽古場日記にやたら私も登場している。写真が載るならジムで汗を流して筋肉をピッとさせておかねばね。女優だから。

 

はっきり言って役者二人より私の方がよほどピッとしている。

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 03:10 | - | -
謹賀新年

明けましておめでとうございます。

みなさまにとって健康でお幸せな一年でありますように。

 

新しい年が明けた。

年が明けるたびに、今年はどんな年になるのかなあと希望より不安を抱きつつ思う。

この頃はとにかく元気でいたいとそれだけだ。

今年もなんとか無事に乗り切れますように。

できたらほんのちょっと良いことがありますように。

他の人に優しくできる私でありますように。

そんなふうなことをそっと祈る。

 

Ericoと麻理枝からはさっそく年賀の電話があった。

Ericoはおおかた台詞が入ったようだ。立ってみると入っていたはずの台詞が出てこなかったりするけど、ま、とりあえず私もホッとする。役者が台詞を入れないと当然だけど私はなんにもできない。

同じ電話でEricoから、チケットを売るようにと催促された。

役者(制作デスクやプロデューサーも含めて)からチケットを売るよう言われたのは初めてである。

どうやら私は役者と競争してチケットを売らなければならないらしい。

しかし私はチケットを持っていないし、公演情報も2月1日から3日が公演日であることと会場を知っているだけで、チケット料金も公演時間も知らない。(私は玉組の公演のときもあんまりよくはわかっていないのだ)

どうやってチケットを売ればいいのか皆目わからない。

ネットでなんとかしろということか。

 

役者と競争しなくてはならないのなら、私の役者たちは私からチケットを購入してもらいたい。それが「義理」というものである。もしくは「スジ」と言う。

私はこれまで玉組の公演で、その公演のキャスト以外の役者にチケットを買ってほしいなどとお願いしたことはない。ノルマのあるキャストが売ればいいと思っていた。しかし今回はそうはいかない。なにしろ競争だから。

同じ理由で、ここをご覧になっている玉組のお客様に心よりのお願いを申し上げます。Ericoと純一に義理のないお客様につきましては、ぜひとも私からチケットを購入していただきたく、伏してお願い申し上げます。

こんなことをするのは初めてですが、下記にチケットの購入フォームを貼っておきます。

 

https://form1ssl.fc2.com/form/?id=42e50b380168790c

 

いろんなことをネットで処理するようになった。

芝居関係に限らず「私、そんなこと知らないけど」と抗議すれば、「へ?」という顔をされることがある。なんだか私にはわからない方法で「とっくに送ってある」、もしくは何かを「見ればわかる」のだそうだ。

ネットのことは私はわかりませんと居直るつもりはない。私もネットやPCを扱い慣れていない人にイラッとすることはままある。この頃Amazonですいすい買い物できるようになったから調子に乗っているのだ。でもこれは違う。謙虚であらねば。

 

新年早々あまり良い羽生ノートではなかった。

本年も羽生一家玉組をよろしくお願い申し上げます。

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 05:41 | - | -
立ち稽古開始(稽古場日記2)

さて、初の立ち稽古。

まさに立ち稽古であった。二人ともずーっと突っ立ったまま、必死で台詞を探していただけの稽古。台詞探しに忙しくて歩くの忘れていたのね。もしくは、歩くと麻理枝のプロンプがよく聞こえないのだろう。

台本を持っていって良かった。役者を見ていてもつまんないから、とりあえず台本に目を落として考え中のふりしながら乗り切った。演出だって演技力が必要なのである。

10人だろうが2人だろうが、ウォームアップはいつもと同じである。筋トレも前回と同じ種目を2人だけで淋しくやった。ランジで純一の太腿がどーかなって中止になるまでは頑張った。ふん、情けない。

「変だなあ、ふだん(家と駅の間を)自転車こぎまくってるんだけど」

歩くか走るかした方がいいと思う。

発声は麻理枝も参加した。良い声でプロンプ入れなくちゃいけないからね。つーか、プロンプが激しすぎて喉つぶしそうな勢いだった。二人よりよほど喋っていた。麻理枝の喉がどーかなったら純一とEricoのせいである。

 

帰りは女子3人でカレーうどんを食べた。初日はお好み焼きで2日目はうどんかあ。こりゃやばい。夜の10時に。役者と違って私は座っているだけだからほんとにまずい。

そして女子が3人集まれば男子の悪口である。

私は言った。

「純一は若いのになんでやっちゃうんだろう」

もちろん、どーかなった太腿のことである。

女子は言った。

「若いっていっても世間的にはもうオジサンでしょう」

ひぇ〜。この台詞をEricoが言ったか麻理枝が言ったかは内緒にしておく。

純一が腹黒いっことも話題になった。これはよく知られた事実であるから今さら驚かないが、たまに新しいエピソードが耳に入ると唖然とする。

「処理が面倒だからなるたけ小道具は持たないようにしてきた」

こんなとんでもないことを言っていたらしい。なんてやつだ。

しかし今回はそんなことは言っていられないだろう。2人しか居ないうえに舞監を置かないから、転換は役者自身が目一杯働かなくてはならない。暗転中の小道具の出し入れはもちろんである。

そうだ! アレがあった! アレは絶対純一にやらせよう。

暗転中に音を鳴らさず扱うのはとっても難しいと思う。

アレが何であるかはまだ言えない。

 

こんなふうに稽古は始まった。

まだ柔いよ。稽古場も私も。

これがずーっと続くと思ったら大間違いである。

 

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 01:21 | - | -
睥睨(稽古場日記1)

純一とEricoは今頃ホンと格闘しているだろう。あー楽し。

私といえば今日は、出かけるときにホンを捨てて出た。ひと月のあいだ持ち歩いていたのに、今日は「重たっ」と思ってカバンから出した。ラクチンだ。

純一とEricoはそうはいかない。万が一忘れて家を出ちゃったりなんかしたら、それこそどんなテを使ってでも取りに戻るだろう。忘れたまま電車に乗って駅5つ先くらいで思い出せばいいのに。

中2日おいて1場と2場を立つ。つまりいきなりホン半分の台詞を覚えなくてはならない。1時間の芝居だからね、これは仕方ない。30分ぶんと考えればたいしたことはない。

今年の稽古は一回だけ立って終わる。お正月の間に丸ごと台詞を入れてくると信じている。

 

いつもどおりの初読みであった。純一は「睥睨(ヘイゲイ)」が読めなかった。Ericoが「大丈夫、私も読めなかった」となぐさめていた。さすがのチームワークである。

そのEricoが「大好き(ダイスキ)」を「犬好き(イヌズキ)」と読んだ際は、他全員がいっせいに椅子からずり落ちそうになった。ほんとに笑わせてくれる。サービス精神旺盛だ。「大」も「犬」も小学生で習う漢字である。びっくりする。

しかしこういうところでは笑いのセンスがあるが、芝居自体はかなり面白くなかった。もっと面白いかと思っていたのでガッカリだ。笑えるはずのところがちっとも笑えない。

これまで二人がちゃんと笑いを取れていたかものすごい勢いで思い返したが、思い出せなかった。まさか笑いが苦手な人ふたりが大集合したんじゃないでしょうね。不安だ。

 

夕方からずーっとソファに寝転んでダラダラTVを観てすごした。帰宅した家族が私の姿をひと目見るなり「安心の定位置に戻っている」と悪口言っていた。

あー嬉しいなあ。ダラダラできる。演出のアイデアなんかなーんも考えないもーん。ホンも開かないぞ。

このままお正月に突入だいっ!

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 23:41 | - | -
脱稿した

明日は初読み。立派に書き終わった。あー楽しかった。余裕があったから久々に楽しかった。おかげでテンションの高い12月を過ごした。

1時間に収まるのだろうか。それだけが心配だ。けっこう削ぎ落としながら書き進めたので、長いからといってカット作業は難しいぞ。落とせる脂肪がないのにダイエットしなければならないボクサー状態である。

ま、稽古が始まってから考えよう。きっちり1時間0分の芝居を創る覚悟だ。

 

このひと月、書きながらつくづく思ったのだけれど、私の演出としての幸福は「私の役者」が居るってことだな。

Ericoはもちろん純一もそこそこ長く見てきたわけで、役者の芝居を想像しながら書けるのはとてもありがたい。極端な言い方になるけど、書くのが楽だ。Ericoも純一も勝手に動く。

今回特に楽しかったのは、純一がこのたびの作品で演じるキャラのカラーが、これまで私の芝居で純一がやったものの中にはないことである。新鮮ったらない。もう楽しみでわくわくする。純一の台詞を書きながら私、泣いたもん。

一方Ericoは主役である。私の芝居で主役が演じる正統的なキャラだ。本来男優が演じる。ラストでガツガツ台詞が続く例のアレである。つまりEricoは初の挑戦に挑む。これもまた楽しみである。

いやあ二人ともお正月がないな。台詞を覚えなくてはならないから呑気にTVを観ている暇もないだろう。私は観るよ。こんな楽しいお正月はない。ホンを書き終えた開放感とヤッタ感はまだ続いているだろうし、稽古を想像してわくわくもしているだろう。

 

いつもだったら今日は自画自賛パレードのところなのだが、今回の企画には他に演出家が5人もいるので、あんまりバカなことを書いてバカと思われるのも情けないから我慢する。

あー自慢したい。明日の初読み、役者はたっぷり私の自画自賛を聞かされることになるだろう。

| 羽生まゆみ | シリウス、あるいは犬の星 | 23:45 | - | -
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