羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
謝辞

楽しかった。とにかく楽しかった。稽古場も公演も、そして打ち上げも。
ケンとどちらが先に潰れるか飲み比べをしていたのだが、ケンはけっこう強い。惜しくも私の方が先に寝てしまい無念であった。悪口を言われるのが心配で、普段打ち上げは寝ずに頑張るのだが。
六時過ぎには帰宅できた。昼前に起きて洗濯と掃除。荷返ししのトラックが到着するまでに片付けようと思っていたのだがなぜか出来なかった。部屋は今現在もちらかったままだ。
今夜は家族と渋谷で食事である。久々に日常へ戻る。

今回もまたたくさんの人々に力を貸していただいた。非力な私がこうして公演を打ち続けることができるのは、すべてそうした人々のおかげである。
まず照明松本伸一郎にたくさんのたくさんの愛を捧げる。すばらしい照明だった。いつもだけど。歌シーンやサスシーンは言わずもがなだが、今回は二場の冒頭、明転したすぐ後、稲子達の登場でもう一度あかりが切り替わる瞬間が好きだった。稲子にかかる影の具合に毎回キュンとなっていた。うまいよなあ。
それにしても打ち上げの時に私以外の女の子がとなりに座っているのを見ると嫉妬するね。二十歳のころだったらずりずり割り込んでいたと思う。

美術の向井登子。今回の美術もまたお見事だった。オバケという突拍子もない登場人物を無理なく生きさせるためには、彼らが「棲みついている」舞台装置のリアルさが私にはとても重要な要素なのだ。ありがとう、役者達はいきいきとあの春さんの家に生きていた。約束したオイスターバーのお食事会、必ず行きましょうね。近いうちに連絡します。

音響。プランのさかたひろのとオペの松丸恵美に心からの感謝を。
ひろのさん、あなたは良い弟子をお持ちである。マルちゃんはいいなあ。大好きだ。打ち上げでもっと喋りたかったのだが、いざとなると話す糸口が見つからないダメダメちゃんの私。しつこい歌の稽古に付き合ってくれてありがとう。あれさえなければ休憩時間がゆっくり取れたのにごめんなさい。
テーマ曲を創ってくれた小林雅史にいつもどおりの感謝を申し上げる。静岡に帰ってもうどのくらいになるだろう。遠く離れていても変わらず新曲を提供してくれるあなたの優しさに、私はちっとも報いていない。ごめんなさい。

舞台監督の稲毛健一郎が大好きだ。もうほんとに好き。今回は毎晩のように一緒に飲んだが、すっごい楽しかった。稲毛マンはもしかして私のお芝居が大好きなのではあるまいか。関係者の中で作品について一番熱心に語るもの。「林平がお盆に帰って来たとき、春彦には林平の姿が見える。俺は絶対そう思う」と言い張っていた。嬉しかった。ありがとう。

うっちぃ、キャンディーズの雑誌を作ってくれてありがとう。さすがに仕事は速いし丁寧だしユーモアたっぷりだし、とてもとても助かった。記念に私がもらおうと思っていたのだけれど、雅紀が渡してくれなかった。雅紀なら大切にしまっておいてくれると思う。
写真の矢野力と宣伝美術のマツウラタマエにいつもながらの感謝を。タマエ、原稿が遅れて本当に申し訳なかった。だが今回は何よりも、タカシに引き合わせてくれたことを感謝する。出会いが運命ならば、そもそもタマエと出会ったことが運命だったのだと思う。女優としての活躍をいつも祈っている。
エアポート、いつもいつも本当にありがとう。荷返しまで手伝ってくれてありがたかった。嫁の世話は私がなんとか頑張る。エアポには心から幸せになってほしいのだ。

今回笹本純一はなぜか役者ではなくトランポとして活躍していた。私の芝居に出ていないのは大いに不満だが、手伝ってくれたのだから今後悪口言うのは我慢する。ジュンジュン、ありがとう。
雑用を引き受けてくれた玉組フレンズのお嬢さん方に、ありがとう。最後の通しでダメ取りをしてくれた太田入絵と、ゲネのダメ取りをしてくれた落合瑛理子の名前を代表してあげて、心からの感謝を申し上げたい。
名前を上げると切りがないが、他にも仕込みを手伝ってもらったり受付に座ってくれたり、たくさんの方々のお世話になったのはいつもの通りである。おそらくこれからも甘えてしまうのだろう。ごめんなさい。長いおつき合いをと願っている。

役者達、またしばらくのサヨナラだ。本当に幸せな二ヶ月間だった。みんな仲が良かったし、しかしそれより何より、稽古熱心な役者達との仕事は楽しい。今回いつになく役者達がものすごくほめられた。「羽生さん楽だったでしょ」とまで言われ、むっとしつつも幸福だった。
タカシに今度の公演はいつだと訊かれた。身体をあけておかねばならないからと。雅紀は「三年後の紀伊国屋サザンシアターを目指す」と言った。打ち上げの最後の一瞬まで私は幸福だった。
いつものことながら役者達に感謝はしない。ただもう一度、最後にもう一度、「愛している」と言っておきたい。あなた達が私を愛してくれる何倍も、私はあなた達を愛している。

ご来場の皆さまに心からお礼を申し上げます。
たくさんのお言葉をいただき、本当に幸せな公演の日々でした。願わくばもっともっと多くの方々に観ていただきたかったという無念もありますが、これが私の限界であることもわかっています。
今のところ今後の予定はたっておりませんが、またいつかお目にかかれる機会がくることを信じています。ご来場、誠にありがとうございました。

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 18:08 | - | -
明日観劇予定の方は読まない方が……

残すところあと1ステージ。コヤに入ってしまうとあっという間に千秋楽だ。
予想以上にありがたい感想をいただいてホッとしている。重たい題材なので、受け入れられるかかなり不安ではあったのだ。
感想を聞いている時に、ホンについての質問をよく受ける。つまり、ある「エピソード」をどの段階で思いつくのかという質問である。
これに答えるのはなかなか難しい。私の場合書き始める時にストーリーはほとんどない。箱書きもしない。では何があるかというと「絵」である。つまり断片的に浮かぶ絵をつなぎ合わせているという感じなのだ。
今日も妹のエピソードは最初からあったのかという質問があり、「最初はなかった」と答えたのだが、お墓で寂しげに遊んでいるオバケの少女の絵は早い段階で頭の中にあって、そこに「名前」から妹のエピソードを思いついた。
「最後のドンデンよりよほどびっくりした」と笑いながら言われる例の「動物」エピソードも、主人公が村を出ていくシーンの長台詞を創っている時に、弟が「箱に入った宝物」を振り回している絵が浮かんで創った。「動物」であることは決めていたので、「あーら、いいこと思いついちゃった」てな感じだったのである。やはり「絵」なのである。
今回のホンはまず「稲子」から始まっている。今流行りの農業ガールという絵があって、そこから農村を舞台にすることにした。そして稲子との関係を考えながら、登場人物達のキャラクターを創っていった。

このように私の場合、浮かんだ絵から連想ゲーム状態でストーリーを創っていく。テーマも途中で思いつく。
伏線をいっぱい張っているので最初からストーリーがあるように見えるが、伏線なんぞ「とりあえず書いておいて後で回収」なんて場合もあるのである。全部が最初から「狙って」張っているわけでもないことを、正直に告白しておこう。
トナカイ牧場エピソードなんてその典型で、後で回収しようと思って書いておいたのに最後まで回収できなくて、すでに脱稿し稽古が始まってから「追加」の形で回収部分を突っ込んだ。そんなもんだ。

明日まだ一日残っているのにこんな書き込みしていいのかよくわからないのだけれど、質問に対する回答の説明不足が気になったので。このままアップしますね。
さあ、明日は千秋楽。楽しみたい。

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 03:41 | - | -
初日

初日を乗り切った。
朝、照明伸一郎が「すがすがしい初日だ」と言っていた。つまり、やらなくてはならない仕事は全て昨日のうちにやり終えてしまったからである。まったくだ。「残り」が無いって、なんてすがすがしいのでしょう。時間に追われないって、なんてすばらしいのでしょう。
初日打ち上げは賑やかだった。前回「ロンググッドバイ」の千秋楽打ち上げより賑やかに飲んだくらいだ。今回は千秋楽打ち上げも楽しいかもしれない。期待できるぞと思った。打ち上げがつまんないと「全てが台無し感」に襲われる。
酒席に集まった人々の顔を見ながら、幸福だなあ私と、しみじみ思っていた。演劇をやっていなかったら、私みたいなろくでもない人間には味わえなかった幸福だ。

いつもいつも全力投球のマサキ。ペース配分を知らないマサキ。そんなマサキだからこそ私は好きだけど、でもそんなマサキが心配だ。中日あたりで灰になっちまうのではなかろーかと心配でたまらない。楽日までマサキを見張らなくてはならないので大変である。

今日一日だけで、盗み見する目がかなり疲れた。

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 03:19 | - | -
仕込み終了

仕込み二日目。
信じられない素早さで場当たりが終わった。21時頃には終わってしまった。びっくりだ。マイクの角度ごときで私が大騒ぎしなければ20時台で終了するところだった。危なかった。
こんな余裕綽々の仕込みはめったにあるものではないとスタッフ一同健闘を称え合い、そんなわけで明日は初日だというのに帰りに役者二人とスタッフ三人で一杯引っかけた。
「こんなに楽勝なはずはない。何か大事なことを忘れているのではなかろーか」
私が不安を告白すると、照明伸一郎が恐ろしいことを言った。
「まだホンが三ページほど残っていたりして」
ええーっ! 今回はエピローグは書かなかったと思いこんでいたが、まさか印刷漏れが? 実は書いていたのだということを今夜思い出したらものすごく大変なことになる。明日はゲネを捨てて稽古だ。
「照明は大丈夫。エピローグくらい三十分で創れる」
伸一郎は豪語していた。
トミーはエピローグが増えることより一曲増えることの方を心配していた。
「もう無理。これ以上ダンスは絶対に覚えられない」
「スタンドマイクではなくハンドマイクの『春一番』が観たい」などと言い出す者も居て、どうやらスタッフ一同は、やはり劇場では存分にアワアワアセアセしたいらしい。楽勝は物足りないのだろう。
トミーとタカシは、ハンドマイクになったらまた私に、「クロスしろ」だの「飛べ」だの「くるりんと回れ」だのと無理難題を言われると恐れていた。
役者と違ってエアポなんぞは、私がマイクの角度のことで騒ぎ始めたときは「やっときた!」とウヒャウヒャ大喜びだったようだ。私はあんまり覚えていないのだが、どうやらそうとうEricoに理不尽なことを言っていたらしい。私が役者に理不尽なことを言うとなぜかスタッフは大喜びである。

エアポと言えば、昨夜私はエアポに「明日は十時集合」とウソを教えてしまい、一時間も早く劇場に来させてしまった。
もちろん私も十時前に到着した。「座長が一番乗りってどういうことよっ!」の勢いだった。
エアポは怒らず許してくれた。つーか、楽しいネタを仕入れたことに大喜びしていた。
「このこと、みんなには黙っていてねとお願いしてもどーせ無駄なんでしょうね」
「無駄だね。お金くれたら黙っていてあげてもいいけど」
そんなバカなことを言い合いながら、時間を潰すために、喫茶店への道をトボトボ歩くエアポと羽生であった。

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 03:10 | - | -
カウントダウン

相変わらず羽生ノートの更新がないので、今回の玉組の稽古場はあまりうまくいっていないのではないかという誤解もあるかもしれない。とんでもない、稽古場は大盛り上がりである。本日、通し稽古の三日目。いよいよ稽古もあと二日である。
昨日も今日も一杯引っかけて帰った。美味しいお酒を飲んでいる。だって楽しいんだも〜ん。役者達が大好きだ。私がどんなに役者達のことが好きか、役者達自身をも含めて、誰にも絶対にわからないと思う。家族でもなく、恋人でもなく、人生の一瞬に偶然の邂逅をした赤の他人を愛せることの幸福を思う。そんな場を持つことのできた人生を、少し誇りに思う。
スタッフもね。スタッフもスゴイのさ。大好きだ。今回はデザイン部うっちぃが久々に、大傑作の小道具を作ってくれたよ。うっちぃらしいこだわりが散見する作品を目にして大爆笑。これも愛だ。うっちぃの私への愛なのさ。ありがとう、うっちぃ。公演が終わったら私の部屋に飾っておくつもり。

本番へのカウントダウンが始まった。それは同時に役者達との別れに向かうカウントダウンでもある。しみじみするつもりはない。したくない。今はまだ。
さあ役者達、残り二日間の稽古を悔いなくやりきろうぜ。
愛しているわ。

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 02:19 | - | -
衣裳合わせ

今回は本当に羽生ノートを更新しなかったなあ。この頃朝まで起きていられなくなった。目がとろんとなるのだ。私は夜行性動物だったはずなのに、これがトシというやつなのだろうか……なんだか屈辱的である。そんなわけであんまり書けなかった。みなさん、ごめんなさい。
屈辱的といえば、今日美容院でぺえぺえのシャンプー係が私に持ってきた雑誌は「週刊女性」と「オレンジページ」と「家庭画報」だった。ほんとにへこんだ。オレンジページの特集は「10才若返る着こなし術」。私にそんな着こなし術はいらないんだよっ、anan持って来い! と叫びたかった。

本日は週に一回の衣裳合わせ。ケンケンがどよ〜んとパック入りのサバみたいな顔になる日だ。
毎週金曜日に繰り返してきた衣裳合わせもいよいよ最終段階に入ってきた。ケンケン以外はほぼ決まったかな。衣裳というのは本人がおシャレさんじゃないとなかなか決まらない。私がどんなにキイキイなっても似合わないものは似合わないのだ。
研はスタイルも良いしハンサムだからその気になればどんな洋服だって似合うのにもったいないなあ。まあそんな研が好きだけど。一年のうち20分くらいしか洋服のことは考えないという告白には衝撃を受けると同時に笑った。
その点雅紀もタカシもおシャレさんで助かる。
トミーもある意味助かる。Ericoに身をゆだねて、一緒に原宿をウロウロ歩き回っているようだ。「絶対見つけるぞ」という気概さえあればなんとかなる。
私が衣裳選びにおいてご立派なところは、役のイメージにこだわらないところである。それが大事な場合ももちろんあるけど、ほとんどの場合必要ない。私にとって大事なのは「場の匂い」なのだ。あとは役者に似合っていること。それに尽きる。

昨日はちかが稽古場に来て、みんなでファミレスでお茶をした。
お茶に誘うとちかはいつも「わーい」と喜んでくれる。かわいいなあ。

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 23:43 | - | -
4場に突入

稽古は、ほとんど手をつけていなかった4場に入った。いつものように4場は全員集合。
笑っちまうくらい立ち位置が取れない。今回は舞台がせまいので8人乗ったら満員である。誰かにかぶったりかぶられたりするたびに、「ドヒャーッ。ここじゃなかった…」という役者達の心の声が聞こえて笑いそうになる。椅子にお尻がくっついたまま立てなくなっていたりするし。なにしろ深刻なシーンの真っ最中なので、ここじゃなかったからと言ってヒョコヒョコ動くわけにいかないのである。みんなジリジリ動いている。あー面白い。
大丈夫。なんてことはない。今回は動けない役者が一人も居ないのも、稽古が進んでいる理由の一つである。これは本当に助かる。次回の稽古でおおかた解消できるだろう。

昨日は雅紀が幹事で「決起集会」という名目の飲み会があった。予約まで入れて「あらたまった感」があったよ。楽しかった。
稽古は8時過ぎに切り上げた。今日は飲む日だと思うと、のんべの私はとてもじゃないが落ち着いて稽古なんぞしていられない。そわそわしちゃってダメだね。
若い女子三人が働き者だ。注文したり料理を配ったり鍋をかき回したり、甲斐甲斐しく働いていた。喋るのはもっぱら男子だった。男子は仲がよい。稽古帰りにみんなでご飯を食べたりしているらしい。なんだか微笑ましいね。
その男子のタカシに「羽生さんが好き」と告白されてたじろいだ。そしてじーんとなった。いいなあ、「好き」って。昨夜からずっと、タカシの「好き」を取りだしてはご飯のおかずにしている。あと一週間は「好き」だけでご飯が食べられそうだ。
おーっし、元気が出てきたぞ。頑張る。

そうそう、昨夜は突然飲み会にラリーが登場。ほとんど独壇場のオシャベリだった。見事な話術には本当に感心する。ああいうのって、いったいどこで学習するんだろう。
しかもなんかイイコトもあったみたいで良かった。

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 21:37 | - | -
稽古は順調

稽古は早折り返し地点だというのに、今回は羽生ノートの更新が滞っている。だって忙しいんだもん。と言えば、Ericoに「タップの稽古には行っているくせに」と嫌味言われるし、ほんとに可哀そうな私。
しかし更新していないと玉組のお客さんに「稽古がはかばかしくないのではないか」とご心配をおかけしそうである。それは困る。
実のところ稽古は信じられないくらい順調なのである。役者が稽古熱心だと演出は左ウチワだね。イライラすることがまるでない。
元来羽生ノートは「役者の悪口ばっかだ」と悪口言われているブログである。まったくおっしゃるとおりで反論するつもりもなく、つまり役者の悪口がないと書くことがないのである。
劇団を解散してプロデュース制で公演を打つようになって3度目。プロデュース制にはいろいろ問題があると考えていたが、しかし多くが杞憂で、現在私はかつてないほど幸福に芝居を創っている。稽古場の雰囲気は本当に良い。元々稽古場には自信があるが、この頃はもっと良いのだ。
これはおそらく、主役の雅紀が上手に発揮するリーダーシップのおかげだろう。
主演との関係は極めて良いと言えば、雅紀は鼻で笑うだろうか。「しめしめ、うまく騙せているぞ」と今ニヤリと笑ったかもしれない。ま、いいの。そんな雅紀も好きである。
何人かの主演俳優との出会いと別れを経て、演出家として晩年の今、時間が残されていない今、おそらく「私の主演俳優」と呼べる最後の俳優が雅紀だろうと思う。雅紀は劇団員ではないから次に一緒にやれるかどうかはいつもわからないのだけれど、それで良い。今やれなくても、いつかまた一緒にやれる機会を、呑気に楽しく待っている。それで良いのだ。そんな主演との関係があってもいいと思う。

まずい。こんなに役者を褒めたら大どんでん返しをくらうのがいつものパターンだ。明日の稽古は大荒れになるのかもしれない。

昨日の稽古帰り、雅紀に写メールを送る用事ができた。同行していた佳美に、「帰宅したら羽生さんが写メ送る」とメールしてもらった。
この頃佳美はErico化しているので、メールを打ち終わったあとで「雅紀さんにちゃんと写メしてくださいよ」と私に念を押すのを忘れなかった。私は「ふんっ」と思ったが、そこは大人の貫録を見せて「大丈夫」と答えた。
ところが佳美のやつ、別れる間際に、もいっかい「写メするの忘れないように」と念の念を押したのである。
私をどこまでダメ人間だと思っているのだ。
「佳美っ、二度言ったねっ、二度!」
「キャハハハハ…」
佳美はなぜか高笑いしながら帰って行った。
そんなことを夜中、佳美の悪口をまじえながらEricoに電話報告した。
ふんふんと大人しく私の話を聞いていたEricoは、最後に心配そうに私に尋ねた。
「それで羽生さん、もう雅紀にメールは送ったんですか?」

な、な、なんだよーーーっ!

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 05:05 | - | -
家では完璧
私の出る幕ないわん、と浮かれていたバチが当たって、日曜日は投げるわ怒鳴るわの大暴れであった。2時間たってふとホンを見たらまだ6ページ目だった。ひえ〜、大変大変。役者の皆さまさぞお疲れだっただろう。上目づかいで役者を窺うと、皆悲愴感漂うお顔で、じとっと私を見ていた。こりゃまずい。
Ericoと麻理枝とタカシのシーンの千本ノックであった。ところが2時間過ぎたあたりで突然雅紀に「うっせーなあ」と言われて驚いた。思わず「ごめん」と謝りそうになったのだが、よく考えたら雅紀の台詞だった。雅紀の最初の台詞は第6ページにある。
「あら雅紀、居たのね」と思った。雅紀を見るのをすっかり忘れていたのである。
「ごめんごめん、そこでゆっくりくつろいでいて。雅紀なんか見るヒマないから」
可哀相に、忘れられたあげくに「雅紀なんか」などと言われてはたまったものではない。なのに怒りもせず、くつろぎもせず、台詞のない6ページを真面目に芝居していた。私も少し反省して、たまには雅紀を見たのであった。
月曜日も同じシーンを稽古した。明日もまたやる。しょっぱなのシーンは大事だからね。

本日はオフ。久しぶりに、本当に久しぶりにタップのお稽古へ。
小学生の女の子と、初めてお会いする妙齢の美女が一緒だった。二人ともとっても上手で、無様な自分がほとほと情けなかったが楽しかった。
二人とも12月の発表会に出演するのだろう、先生に振付をレッスンしてもらっていた。シロートの私が二人の貴重なレッスンの時間を邪魔しているので、「もうホント、どうか私にはおかまいなく」と先生に申し上げたかったくらいである。
「はい、では羽生さん」
えっ! 私もこれまで稽古してきた振付を一人で踊らされてボロボロだった。芝居の稽古場で役者に「勇気が足りないのじゃ!」と怒鳴っているくせに、めっちゃ私勇気がなかった。腰抜けだった。
踊り終わったあと、役者お得意の台詞を私も思わず言っていたね。
「家でやる時は完璧なのに」
妙齢の美女がぷぷっと笑ってくれ、小学生は笑わず(当然である。この冗談が理解できるようになるまであと5年はかかるだろう)、小学生のママは困ったように微笑み、先生は切り返してくれた。
「見てましたよ。羽生さん家じゃ完璧なのに、どうしてスタジオじゃできないんだろうと思いながら見てました」
ステキ、先生。やっぱり先生は私のローラン・プティだわ。
稽古が休みがちであることのお詫びを申し上げ、「やる気がなくなったわけじゃありませんからっ」としっかりアピールして帰ってきた。

ダンスはやっぱりいいな。上手な人を見ているだけでも楽しい。
| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 11:39 | - | -
絶好調

なんだか私の出る幕がないほどサクサクとシーンができあがっちゃうのである。というわけで今日はご機嫌さんな私なのであった。ご機嫌さんだったので早めに稽古を切り上げて、「飲みに行くぞーっ!」なんてことも言っちゃったのであった。
「そのわりにはまだ2センチしか減っていないんですけど」
カシオレのグラスを指してタカシに言われたりするのだが、それを言ったらオシマイというものである。酔わせてよ、飲んべ気分に。
タカシといえば、どうやら昨日の私のダメに傷ついていたらしく、酒場で告白されてチョー焦った。弁解しようとしてめまぐるしく頭を回転させたがうまい言い訳が浮かばず、またまた焦った。というわけでタカシを傷つけたことに傷ついた私であった。ごめんね、タカシ。

今日はいつもの稽古場が使えず、麻理枝が変な場所にある稽古場を押さえたせいで道を間違えてしまった。幸い大事にはいたらずすぐに迷子から脱却できたが、頭はかなり沸騰した。
2つ目の信号を右に曲がらねばならなかったのに、3つ目を曲がってしまったのが敗因であった。しかし途中ですぐにおかしいと気づいたのは、さすがに迷子慣れしている私だからこそである。
さっそく麻理枝に八つ当たりの電話をかける。迷子になると誰かに八つ当たりせずにはいられない。いつだったかも中部地震の募金ボランティアを怒鳴りつけたことがある。迷子で頭を沸騰させている最中に運悪く近寄ってきたのである。
「私は今それどころじゃないの! 見てわからないっ?」
たぶん見てわからなかったと思う。
募金活動をしている立派な人に八つ当たりするなんて、私は本当にひどい人間である。でも今日は他人には八つ当たりせず、麻理枝とEricoにひとしきり当たっただけですんだ。
で、電話を切ると、迷子慣れしている私はすぐに通りかかりのおじさんを止めて訊ねた。
「この道は千歳船橋行きのバスが通る道ですか?」
「千歳船橋行きはここは通らないねえ。もう一本向こうの道」
やっぱりそうか。
がっかりしていると優しいおじさんは教えてくれた。
「チトフナ行きのバス停でここから一番近いのは、加山雄三の家のとこにあるバス停だね」
知らないよっ、加山雄三んちなんて!

明日はオフ。
明後日は封印していた一場を稽古する予定。またサクサク仕上がって私の出番がなかったらどうしよう。ダメ出ししないとかっこ悪いわ。
まあそんな時は、
「キャラクター同士の距離感がわからないのよっ」
なんて、わけがわからないけど意味のありそうなことを言っておけば演出家らしくてなんとかごまかせるかもしれない。
「意味わかんないんすけど」
佳美あたりに突っ込まれないよう祈るばかりである。

| 羽生まゆみ | 稽古場日記 | 00:43 | - | -
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