羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
スリー、チュー、ワン、ゼロ(体幹トレ日記90)

11月。稽古の完全オフは3日間だけである。

そしてこの貴重なオフに私はトレーニングへ行く。ミットを叩くと元気が出る。

昨日もミット打ちから始まったが、疲れがたまっているのかへなちょこパンチであった。ミットを打ったときの音が「ぱすっ」なのだ。あまりにもひどすぎてトレーナーにも叱られなかったほどだ。怒っても無駄なくらいひどかったのだろう。

そのあとは腹筋祭りだった。12分間ひたすら腹筋というのをやった。30秒ごとにどんどん違う種類の腹筋をやっていく。とにかくめっちゃ早くて煽られる。

腹筋運動といえば、膝を立てて寝転び、頭か胸に手をやって「どっこいしょ」と起き上がるアレを想像する人が多いと思うが、実はものすごくいっぱい種類があるということを、私もトレーニングをするようになって初めて知った。

12分は長いよ。いやあきつかった。スマホが30秒ごとに「スリー、チュー、ワン、ゼロ」と喋るのがチョー腹立つ。なにが「チュー」だ。英語の発音が本物なのでこれがまた癇に障る。

「ゼロ」のときに大急ぎで体勢を入れ替えなくてはいけない。裏返しになったり腹ばいになったりまたひっくり返ったりで大忙しなのである。スマホが「ワン」と合図を出すたびに、となりではヒロが自分もやりながら「プランク!」「急げ!」「もっと!」と叫ぶ。「ゼロ」の間にひっくり返らないといけないの。

 

このあともう一回ミット打ちに戻った。

「腹筋が入ったから打てるだろ」

あらま、ほんとだ。キレのいいパンチがビシバシ決まるではないか。

腰が気持ちいいくらいぐいんと回る。一周するんじゃないかと思った。

それで思った。やはり稽古のウォームアップに筋トレをやっているのは間違いではないのだ。身体のキレが一瞬でよくなる。筋肉が目覚めると言えばいいのか。

ウォームアップがきつすぎて後の稽古がヘロヘロになるという心配もあったが杞憂だった。身をもって知った。大丈夫だ、もっとやってもいいくらいである。プッシュアップはセット数を増やそう。雅紀や優太は余裕があるようだし、純一もきつそうな顔をしているだけで実は余裕があると思う。純はほんとうに悪い奴だ。

 

昨日最後の種目は私もプッシュアップだった。

10セット(100回)+6回。

この6回は罰で増えたぶんである。1回はちゃんと元の姿勢に戻る前に勝手に終わらせてしまったからで、5回は最終セットの際沈みが浅かった罰。

インターバルは1セットごとに30秒。25秒の時点で足を延ばしてプッシュアップ姿勢を取っていないと1セット増やされるので死にもの狂いである。

「ちゃんとやらないと1セット増やすからな」

このひと言で大概の無理難題をきいてしまう。

 

同じ1セットでも罰の1セットは本当にきつい。すでに限界を越えた1セットだからだと思う。

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 08:24 | - | -
大きな声(体幹トレ日記89)

稽古はまだ始まったばかりだというのに、昼夜ぶっ続けで稽古場に居るとドッと疲れが出る。これまでにはなかったことだ。年齢のせいにはしたくないが、結局それが現実なのだろう。プッシュアップが100回できても関係ない。

しかしどんなに疲れていても忙しくても、とにかくトレーニングに行く時間だけはひねり出す。身体を動かすと元気が出るし、トレーナーに怒られるともっと元気が出る。トレーニングのあと稽古場へ入り、役者たちのへぼいウォームアップを見て、「さっきの私はなんてステキだったのでしょう」と確認するのも好きだ。

稽古場ではEricoが「息止めるなーっ! 死ぬよっ!」と叫んでおり、スタジオではヒロが「息しろ! バカ!」と怒鳴っている。力を出す時って、どうして人は息を止めちゃうんでしょうね。

声を出せば自然と呼吸するから、これもEricoが「声出せ!」とわめいている。プッシュアップのときはEricoが「イチっ!」とリードし、残りの役者が全員で「イチっ!」と続く。はっきり言ってErico一人の声の方が残り八人を合わせた声よりでかい。みんなゲロゲロでそれどころではないのである。雅紀が「Ericoさん、声でかいですよね」と悪口言っていた。

スタジオではトレーナーが怒鳴っている。

「脇締めろっ」

「脇締めろって言ってるだろ!」

「脇締めろってば! 何回言わせんだっ、バカっ!」

声がだんだん大きくなるにつれてガラも悪くなるというのが特徴である。

 

サーキットトレーニングがあった。

ジャンピングスクワット→ぴょんぴょんスクワット(今稽古場でもやっているやつ)→チンニング→ブルガリアンスクワット→プッシュアップ→腹筋。

以上で1サークル。これなんかまだましで、先週は種目と種目の間にいちいちミット打ちが挟み込まれてゲロ吐いた。このままでは心肺機能がものすごく強化されて、病気で危篤に陥ってもなかなか死ねないという怖ろしいことになりかねない。

ラストサークルの前にヒロから脅された。

「スピードが落ちたらもう一周やるからな」

ハアハアしながら私は思った。

「いかん。これ以上は無理だ。死ぬ」

そんなわけでラストは最後の力を振り絞って頑張った。

ヒロの激が大音声で私をあおる。

「急げ! 早く! もっと!」

そしてやりきった。スピードは落ちなかった。ああ、なんてステキな私。頑張ったぞ、私。

やれやれと、爽快な気分に浸っているとヒロが言った。

「もう一周」

飛び上がった。

「なんでよっ」

「さっきより2分も早い。まだ余裕がある」

「‥‥‥」

これだ。結局最初からもう一回やることが決まっていたのだ。

大きな声に乗せられてつい頑張ってしまった。

 

役者たちも、Ericoの大きな声に感謝してね。つい頑張っちゃうから。

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 00:02 | - | -
Ericoとヒロトレ(体幹トレ日記88)

「劇団員を見てやるから誰か連れてきてもいいよ」

願ってもいないヒロからの申し出である。

というわけで、Ericoを差し出すことにした。

「うちで一番身体が動く。男子はへなちょこばっかだから」

Ericoを選んだのは当然とはいえ、しかしこれでEricoがムキムキになったらチョー悔しい。まさか一回のトレーニングでムキムキになることはないとは思うが、Ericoはすぐに筋肉がつく体質だから油断はできないのである。

たくさんほめられていた。やっぱり勘がいいから、正しく身体を動かすことができるのだ。私は「勘が悪い」だの「センスがない」だの言われ続けてきた3年間(途中半年ブランクがあるけど)であった。

しかもちっともハアハア息があがらないし。そんなわけはない。きっといつもの私のトレーニングより軽めだったんだわ。と思うことにして自分をなぐさめた。

さて、Ericoとやったこの日の種目はこのまま玉組のウォームアップとして使われる。Ericoを差し出した私の目的のひとつがこれだったのだ。あまりにもへなちょこな玉組ウォームアップをなんとかせねばならんと常々思っていたからね。

 

ちなみに昨日のトレーニングは、Ericoとやった玉組ウォームアップのおさらいだった。いやあ、きつかった。途中で一回吐いた。まともにやったら吐くほどの種目ということだ。大丈夫かなあ、うちのへなちょこ男優たちには絶対無理なような気がする。

Erico、いっちゃん最初にやったぴょんぴょん種目、あれナメていたらとんでもないことになるよ。昨日は太腿とお尻が割れそうになったもん。

 

Ericoと一緒のトレーニングを終えて、この日は私たちが最後の客だったから掃除を手伝わせられた。

「はい、これで更衣室を掃除して」

ダイソンの掃除機を渡されたのだ。

私が一瞬きょとんとするともちろんEricoが「私が」と言った。

当然のように私が掃除機を渡そうとすると、

「ダメ。羽生さんがやるの」

許してもらえなかった。

くっそー、役者の前で私を屈辱的な目に遭わせて喜んでいるのだ。なんてやつだ。私はバラシのときだって楽屋にでんと座ったまま、小指一本動かさずダラダラしている人だぞ。掃除している姿など役者に見られたくない。しかも掃除している間、どうやら二人で私の悪口を言っていたようである。掃除機の音がうるさくて何を喋っているか聞こえなかったのが残念だ。

 

それから三人でご飯を食べた。無料でトレーニングしてもらったので、せめてご飯くらいはご馳走せねばね。サイゼリアだけど。

ヒロはサラダやピザの他に「若鶏のディアボラ風」を2つオーダーした。びっくりした。私もこの年だからそこそこ男子とご飯も食べてきたが、こんな人は初めてである。

そういえば昔ドトールで、ちょうどカウンターでミラノサンドを受け取っていたヒロとばったり会ったことがある。

「これ羽生さんにあげる」

コーヒーをオーダーしていた私にミラノサンドのお皿を滑らせて、それから彼はオーナーと一緒に喫煙席へ消えた。

私はコーヒーを受け取りながら、顔見知りの店長に訊いた。

「何? 二つ頼んでたの?」

店長は答えた。

「いえ、三つです」

ええーっ。三つ!(オーナーとあわせてじゃないよ。一人で三つだよ)

この時もかなりびっくりした。

「さすがだわ」

私が唸ると、店長も重々しく頷いたものである。

 

私も、ガツガツ食べる女になりたい。チキンの皿を二つ並べてみたい。

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 23:39 | - | -
ぐいぐいチンニング(体幹トレ日記87)

この頃トレーニングのことを書いていないので、ついに羽生もやる気を失ってきたかと思ったら大間違いなのである。週3回、きっちり通ってひぃひぃ言っている。気付けばどこかに青あざがある。筋肉痛から解放されることもない。

きついのに楽しい。日常の中でへこむことがあっても、身体を苛めれば蘇ることができる。不思議である。人生最大のピンチに陥ったときも、トレーニングのおかげで乗り切ったような気がする。汗みどろでプッシュアップをやりきれば、その瞬間「強さ」を意識できるのだ。強くなりたい。ただ強くなりたい。もはやそのためだけにやっている。

ぐいぐいチンニングができて、びしばしミットが打てて、がしがし歩いてがつがつ食べたい。

 

二週続けてオーナーと一緒にトレーニングを受けた。競争は燃える。オーナーは私の「勝手にボーイフレンド」の一人だが、たとえボーイフレンドでも負けたくない。私は男子の後ろを三歩下がって歩く女ではないぞ。

もっともオーナーはヒロがあちらのスタジオを退社して以来トレーニングをさぼっていたようで、一緒にやってみるとへなちょこ感がドボドボあふれ出ていた。

ミット打ちを1セット交替でひたすらやり続けるという過酷な種目があったのだが、途中から「ええーっ、まだやるの」とか「もうやめよう」などと弱音を吐き始めてチョー面白かった。(私が同じことを言おうものならミットで頭をパコーンとやられるか、場合によっては蹴られる)

こちらの番のときはあちらがインターバルである。0.1秒でもインターバルを短くしてやると思うと、めっちゃ早いパンチが出るね。私の方はいつもの倍速のワンツーストレートだった。休ませてなるもんか、であった。

 

あー楽しかった。オーナー、他の会員とも一緒にトレーニングすることあるのかなあ。勝手にガールフレンドとしては嫉妬するではないか。

ともかくオーナーが一緒だと、ヒロに怒鳴られるのはいつもと同じでも、マジ切れされることがないので安心できる。たぶん稽古場に見学者が居るときの役者の心理と同じである。見学者が居れば私もさすがにバクハツしないからね。

だからスタジオへ入ってオーナーが居るとホッとする。「じゃあお先に」なんて帰ろうとすると「ええーっ、今日はやんないの?」と腰にしがみつきたくなるくらいだ。

 

なにしろトレーニング中のマジ切れがいっちゃん堪える。

自分ができないことを思い知らされるからだと思う。

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 08:06 | - | -
クスリ(体幹トレ日記86)

再会したヒロとのトレーニングも、早四回を重ねた。トレーナーが変わると筋肉もびっくりするのか筋肉痛の日々である。今日も朝から「痛ッ」とぶつぶつ文句を言いながらガニ股で歩いている。内股とふくらはぎと足の付け根が痛い。

ということは前回は下半身トレだったわけだ。この頃トレーニングに限らず、何をやったか、何を食べたか、すぐ忘れる。

そして今日五回目。またトレーニング前に言い争いになった。私は私なりに気を遣っただけなのにどうして叱られるのかわからない。ヒロの目には私のやることなすことみーんな「羽生の身勝手」に映るらしい。もう知らん。何もしないし何も言わない。

だいたい初日なんて、まだ着替えてもおらずリュックを置くか置かないかのところでいきなり喧嘩が始まった。言い争いなどという生やさしいものではない。怒鳴りあいの大喧嘩である。ちょうど作業中であったガス工事の業者さんは、作業が終わっても出るに出られなかったに違いない。

ヒロのトレーニングを楽しみにしていたし、オープンおめでとうの気持ちもあったから、なんでいきなりこうなってしまうのだとつくづく情けなかった。このまま一回もトレーニングを受けずにすごすごリュウドのところに戻ったら、リュウドはお腹を抱えて大笑いするだろうと思った。

工事屋さんが帰ったのをきっかけにやっと少し空気が変わった。

「早く着替えてこい」 

「今日はもうやめておいた方がよくない?」

ヒロのこめかみがぴくりとする。

「あーめんどくさい。いいから早く着替えろって言ってるだろっ」

怒るとめちゃ柄が悪い。めんどくさいとはなんだ。こっちの言いたい台詞である。むかつく。私はあんたのオンナかよっ。きゃ、きゃ、きゃ、客だぞっ!

と言いたかったが、これ以上怒らせるとさすがに怖いからやめておいた。

 

情けないことにトレーニングが始まると楽しくなってしまう。

「思い出した。これよこれ」

うんうん呻きながら、バーにぶら下がって伸びたり縮んだりする。

「足の裏全体で蹴るんだよっ。何度言わせるんだバカ!」

トレーニングなら怒鳴らても嬉しい。ヘンタイだ、私。

こちらに移る間際、リュウドに訊いた。

「私、前みたいに燃えることができるかなあ」

リュウドは言った。

「大丈夫。一回で元に戻る」

「せっかくやめたクスリみたいに?」

「そう。羽生さんとヒロさんのトレーニングずっと見ていたからわかる」

 

で、一回で元に戻った。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 23:01 | - | -
あと一回(体幹トレ日記85)

この2日間、トレーニングはそれぞれアキ、アキラと続いた。千秋楽は間違いなくリュウドだろう。これが入ったばかりのトコ君だったら「へ?」だな。ウケて笑ってしまうかもしれない。その後、今世紀最大に不貞腐れて最後のトレーニングを終える。

昨日トレーニングが終わってロビーで休んでいたら、トコ君が「羽生さんとはもう一回やりたかったです」と言ってくれて、お上手だとわかっていても嬉しかった。

先週初めて私を担当した。新人に厳しい演出家としては最初から良い顔はできず、また「アキラが居るのになんでアキラじゃないのよっ」という気持ちもあって、ずーっと薄っすらフテていたのだが悪いことをした。(アキとリュウドに「どうでした?」と訊かれた時は、まさかフテていたとは言えないので「うん、人見知りしてた」とごまかしておいた。)

アキもアキラもラストというのをそれなりに考えてくれたと思う。アキはベーシック3(デッドリフト・スクワット・ベンチ)、アキラも私が大嫌いなびょんぴょん種目で最後のトレーニングを〆た。

最後だからといって急にうまくやれるものでもなく、いつもどおり立派にヘタクソだったが、充実していて気合の入った1時間だった。このトレーニングを心と身体に沁み込ませておこうと思った。最後のダメを決して忘れまいと思った。

「今日が最後じゃないですよ。火曜日、羽生さんのトレーニング見に来ますから。髪の毛切るついでに」

ダメだ、泣きそうになった。アキラは火曜日が定休なのだ。なのに来ると言う。

だいぶ前、何かの理由でアキラを抱きしめようとしたら、身体を固くしてズリズリ後ずさりされたことがあった。なので今回は用心して、私の方から「来て」と求めたら、なんの躊躇もなくステキに抱きしめてくれた。「ああアキラ、大人の男になったのね」と思ったらまた込み上げそうになった。

トレーニングが終わってプロテインを飲みながらダラダラグズグズしていた。あとちょっとだと思うと1分でも長くここに居たい。私はこの日最後の客で、私が帰らないとスタジオを閉められないスタッフにはいい迷惑だったに違いない。

いつもだったらこの時間に翌週の予約を入れる。希望の時間に取れないと「何でよっ」と文句を言っていた。文句なんか言わなきゃ良かった。

カウンターのむこうからアキラが言った。

「3年後に予約入れておきますか?」

笑った。アキラはここで一番面白い。

それにしても最後が火曜日でよかった。平日の夕方、スタジオは忙しいからしみじみしているヒマはない。トレーニングさえ気合を入れて乗り切れば、感傷的にならずにすむと思う。私は今、これを書きながら泣いているが、最後は明るくサヨナラしたい。かっこ良く別れたい。

 

バリのヤモリと同じで準備はできているから大丈夫だろう。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 17:01 | - | -
押す(体幹トレ日記84)

トレーニング中に脱いだシューズのことをすっかり忘れて、そのまま帰り支度をしてしまった。

ロビーへ戻ると、アキが今日はシューズをスタジオに置いておいていいと言う。そして、トレーナー達のシューズがずらりと干してある窓辺の一角に私のシューズも並べられた。うふっ、なんだかトレーナーの仲間になったみたい。プロだわ。

平等好きなアキだが、なぜかシューズだけは特別扱いしてくれる。昨年、トレーニングのあとそのまま北陸旅行へ出発したことがあるのだが、その時もシューズを預かってくれた。

ウェアはともかく靴を持っていくのはつらい。私にしては珍しく勇気を出して頼んでみた。

「預かってもらえない?」

小さな声でお願いしたのは、むこうでトレーニングをしているヒロに聞かれたら困るからである。絶対「ダメ!」と怒られる。

アキは「いいっすよ」と自分のロッカーに入れてくれた。助かった。

で、お礼に福井の恐竜博物館でなんとかザウルスのお人形を買ってきてあげた。まわりはなんでアキにだけお土産があるのか不審に思っただろうし、アキ自身も靴のことなんぞ忘れて不審の表情だったが、まあそんなわけであったのだ。旅行中、たびたび靴のことを思い出しては、私の靴のせいでアキのロッカーがとんでもない臭いになっていたらどうしようと心配したものだ。

 

「重たい重たい」と文句言いながら重たいもの持つのが好き。今日もきつかったけど、重たいもの持たせてもらえたので楽しかった。12圓離戰觀織瀬鵐戰2個を両手にぶら下げて走り回った。アキが「もっと早くっ」と私の背中を押すし、ちらっと鏡を見たらあまりのかっこ悪さに笑ってしまった。ネコに追いかけられるニワトリだ。

アキに「押される」のが好きである。

私にはご機嫌が悪くなることがたまにある。(トレーナー達はそれを「不貞腐れ」と表現して私を批判するが、私はこれまで不貞腐れたことなんぞいっぺんもない。考え事をしているだけだ。)とにかくそんな時、私は固まる。一点を見詰めたままテコでも動かなくなってしまうのだ。「瞑想」だの「凝固」だのと悪口言われる状態である。

ある凝固時、アキが静かに言った。

「僕のトレーニングが嫌なんですか?」

私は黙っていた。

するとアキは静かに私を床方面へ押した。それは静かだったけれど抗えない強さがあって、私は難なく四つん這いになってしまったよ。それから何ごともなかったかのようにストレッチが始まった。

懐かしい思い出だ。アキのトレーニングが嫌だったことなどいっぺんもない。そういう問題じゃないのだ。感謝している。たくさんのことを静かに、丁寧に、教わってきた。

アキとロビーで話すひとときが好きだ。いろんなことを教えてくれる。GOTやALPやHDLやTRXのことやなんかをね。

あ、それから「カモン!」と「レッツゴー!」も好き。発音きれいだし、これ聞くと、わくっとやる気が起こる。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 00:41 | - | -
羽生ノート規定(体幹トレ日記82)

走った。

スタジオへ入ると、リュウドが今日は走ると言う。気が乗らなかった。前々日からの怒り(5/15付羽生ノート参照)をまだ引っぱっていて、走ると言われて「やった。走るぞーォ」とホイホイついて行く気にはなれないのである。

まさかとは思うがランが楽しくてご機嫌が治ってしまう可能性だってある。それは困る。今日いっぱいくらいはジメジメしておかないとしめしがつかない。私の怒りがちょっとやそっとで治っちゃまずいのだ。

ちょっとやそっとで治ってしまった。

つーか走る前から楽しくなり、

「ラン用の上着持ってこなかった〜ァ。外、寒いかなあ」

なんて甘えた台詞をべろんべろん吐いて後悔したがもう遅い。ウキウキしているのがバレバレである。

で、ホイホイついて行った。

 

すばらしい1時間だった。走りながら、1時間では足りないくらいいろんなことを話した。リュウドの目的はそれだったからである。

走り始めてすぐ、リュウドは言った。

「今日どうして走ることにしたかわかります?」

私はすぐさま答えた。

「(ゴールデンウィークの間に)私がデブになったから」

リュウドは笑いながら言った。

「それもある」

では何だろう。きっと前々日のことだと思った。私のバクハツはすでに耳に入っているはずだし、何があったのか詳細を訊き出そうという魂胆か。

そうではなかった。リュウドの方から口を切った話題は、いずれリュウドと話をしなくてはならないと思いつつ切り出せなかった、私にとっては大問題の案件で、このひと月あまりずっと私の胸を塞いでいたのである。どうせ言い出せないであろう私を助けるために、リュウドは自分の方から切り出したのかもしれなかった。

(ごめんなさい。この件は私とリュウドだけではなく他の人も係わっているので、現段階で具体的にここへ書くことができない。これは「思わせぶりなことは書かない」という羽生ノート規定に違反するが、どうか勘弁願いたい。近いうちに解禁になったら書く)

リュウドの言葉の数々は私を感動させた。若いのになんて大人なんだろうと思った。私が彼の年のとき、たとえば同じ状況にあったとして、私に相手の気持ちをおもんばかる優しさと、相手の気持ちを楽にしてやろうという気遣いがあっただろうかと考える。

私は恥ずかしいよ。若い頃も今も、私が考えるのはいつも自分のことばっかだ。

私も今日に至る経緯と気持ちを正直に話した。事実としてあったことや自分の気持ちを含めて、私自身をよく見せるための嘘はつかなかったと断言できる。相手に納得してもらうためには「嘘をつかない」ことだと知っている。嘘が相手を傷つけることも。

私は知っている。納得させるための嘘で相手を納得させることはできないのだ。

 

これ以上はまたの機会に譲る。このまま書いても規定違反の「思わせぶり」が続くばかりだ。

リュウドとはこの他にもいろんなことを話したよ。なにしろ走りながらだから大変なのである。リュウドはともかく、こっちはハアハア息切れ状態である。歩道橋を駆け上がった。それでも喋っていた。リュウドも喋った。お互いずーっと喋っていた。8km分喋った。

トレーニングのことはもちろん恋の話やなんかも。若いのだから会員に恋をしてしまうこともあるだろうなんて話をね。その場合どうあるべきか、またその時、立派な女の子ならわきまえているであろう礼節について。

若いし顔も性格もいいし100km走れるから、今現在、礼節を心得た素敵な恋人が居ないわけがない。

なのにしらじらしく言う。

「恋かあ。いいなあ、恋したいなあ」

私はものすごく小さい声で言った。

「私はダメだよ。無理」

リュウドは返事をしなかった。

聞こえなかったのか、聞こえないふりをしたのかはわからなかった。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 22:59 | - | -
DHCプロテイン(体幹トレ日記83)

また体験レッスンが行われていた。どうやら入会するようだ。これでまた土曜日曜ラストの私の時間を、平等という不平等のもとに譲らなくてはならなくなる。

去年までは体験の方が入会すると自分のスタジオでもないのに嬉しかったものである。しかし今年に入りアキが平等を徹底するようになってからは私が迷惑をこうむるので「ちっ」と思う。

かつては入会したばかりの人に更衣室で「どんな感じですか?」などと探りを入れられると、やめさせてなるものかとおおいに励まし、スタジオの宣伝にあい努めたものだ。

「とにかく2ヶ月頑張ってみて。絶対に体型変わるから」

この頃は昔のようには励まさない。

もっとも最近は他の人とあまり出会わない。更衣室で新人に会ったのはここ数ヶ月で一度だけだ。やっぱり探りを入れられた。

「もう長いんですか?」

「オープンのときから」

「やっぱり変わりました?」

「私にはすごく合っていたみたいで、あっという間に体重が5塒遒舛燭里茵

ただの自慢話である。

「すごいですね」

「でも人によって違うと思うし」
きっちり付け足しておいた。5團瀬Ε鵑鯡椹悗靴督控錣気譴討盧い襦

 

冒頭に書いた新入会者のおしゃべりを、トレッドで走りながら聞いていた。体験トレーニングが終わりプロテインを飲むらしいのだが、プロテインに詳しいところをめっちゃアピールしている。

「これはミルク? 私が今飲んでいるのはDHCのプロテインで、ナントカが30%でカントカが20%」などと、プロであるトレーナーに向って成分の説明をし始めた。笑いそうになった。リュウドの顔が見たかったがよそ見したらトレッドから転げ落ちそうだったので我慢した。

そもそもDHCのプロテインは置き換えダイエット商品で、筋トレの後に飲むものとは目的が違うんじゃないかなと思ったが、そんなことを言うのは余計なお世話なのでこれも我慢した。

「どれがおいしいの? 飲み比べちゃだめ?」

私には絶対言えない台詞だ。

リュウドがやんわり断っているのが聞こえた。

「それはできませんけど、バナナは飲みやすくておいしいですよ」

リュウドにしては珍しく愛想のない声だ。笑いそうになった。そして余計なことを言いたくなった。

「私はパイナップルが好き!」

なんとか我慢できたがダメだ、笑いたい。

 

私は初めての場所でも緊張しないこういう人がうらやましくて仕方ない。初対面の人に(しかもプロに!)言いたいことをずけずけ言える心臓もうらやましい。私にあやふやな知識を披露する度胸はない。シロートはシロートらしくという私の姿勢は謙虚さからではなく、私が臆病だからだ。上記のようなアピールってどういう心理から出るものなのだろうとつい考えてしまう。

体験の方、バナナ味のプロテインを飲んだらしい。

「これ、マズイっ」

すごい! ダメだ、こらえきれない。爆笑したい。

 

今後の活躍が楽しみな新人である。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 08:29 | - | -
屈辱(体幹トレ日記81)

昨日はスタジオでバクハツしてしまった。アッキーラ相手に大きな声を出してもしかたないのに可愛そうなことをした。しかし男の子があれくらいでへこたれはしないだろう。ハートも強そうだしあんまり心配していない。私のハートの方がよほど心配だ。

私の不満はトレーナーたちが私を侮辱することと、平等という名の不平等に晒されていることである。

 

この頃私はダメだダメだと言われ続けている。

プロが言うのだから本当にダメなのだろう。それはいい。覚えが悪いのは自覚している。

私が我慢ならんのは、私より後に入った若い女の子と比べられて「羽生さんの方ができない」と言われることだ。私だけに言うのではなく、女の子と私の両方を目の前にして言う。もっと悪いことに、私の居ないところで彼女に「羽生さんより上手い」と言っているふしもある。私は笑い者になっている。笑われている。それが我慢ならん。

昨日バクハツしたのはまず前提としてそのことがあったからである。だからアッキーラだけのせいではない。

きっかけは、入ったばかりの、これもまた若い女性トレーナーと比べられたからだ。アッキーラが彼女に、羽生さんにプッシュウアップの見本を見せろと言う。

はい? 私に? この私に? 羽生さんに? 入社2ヶ月なのに? 見本? 

ここで早くも私の脳天から炎が噴き上がった。

彼女は早速私の前で四つん這いになり、プッシュアップの体勢をとった。

アッキラーは私を振り返って言った。

「ねっ、羽生さんと違うでしょ?」

どこが違うのかさっぱりわからなかった。

それから10回1セットを交替で5セットずつやった。私が負けているとは露ほども思わなかった。完璧なフォームだ。

それから、最後にどちらが長く続けられるか競争すると言う。嫌な予感がした。私は1時間トレーニングをしてヨレヨレではないか。

よーいどんで始まった。

アッキーラは私に「もっと深く。浅い」とダメを出す。

はあ? なにそれ。どうやら私に負けさせたいらしい。逆だろ、それ。身内の肩を持ってどうする。身内をいい気分にさせてどうする。

希望どおり負けた。当たり前だ。やる気なんか微塵も出ない。楽しくない。

言っておくけど、わざと負けろと言っているわけではないよ。そんなことをされたらもっと腹が立つ。私はただ、屈辱的な目に遭いたくないだけだ。私は生きるためにトレーニングをやっている。100%自分のためだ。名前も知らない会員や新人トレーナーを喜ばすためではない。

かつてオーナーや女子トレーナーとサーキット競争をしたことがある。負けた。でも楽しかった。良い思い出である。

「ほらコナッティ、ママにしっかりついてこいよ!」

「うっす!」

そんなふうに騒ぎながら楽しくランジをやった。担当トレーナーは「羽生さんはコナッティよりできていない」などと私を貶めたりはしなかった。むしろ、「コナッティ、羽生さんに負けてるぞ!」と彼女に檄を飛ばして私のやる気を引き出した。

私は私を捨てたそのトレーナーが大っ嫌いだが、その場での在り様は正しいと、同じ指導する側の人間として思う。

 

「不平等」についての不満書き込みはまた別の機会にゆずる。書き込まないかもしれない。私の考える「平等」の定義が広辞苑に載っている「平等」とは大きくずれており、大多数の批判を浴びる可能性があるからである。きっちり理論武装してから臨みたい。

 

本日は思いっきりうっぷん晴らしの書き込みである。

遠回しの悪口ではない。まっすぐ最短距離の悪口だ。

批判は甘んじて受ける。

 

| 羽生まゆみ | 体幹トレ日記 | 21:15 | - | -
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