羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
ラストスパート(稽古場日記16)
バッタバタである。途中すっごい余裕あったのにどうしてこうなったのかわからない。
「間に合わないっ」とわめいていると、雅紀が「だーいじょうぶ、だーいじょうぶ」と言ってくれるので、そのときだけ心が落ち着く。なのでなるたけ雅紀がいるところでわめくようにしている。
そんなわけで当日パンフの原稿が遅れてデザイナーのタニガワさんに迷惑をかけた。昨夜徹夜で当パン用の役者紹介を書き上げたが、そこで限界。私のご挨拶文はナシである。すみません。

来週の今日は稽古を打上げている。信じられない。あっという間の日々だった。
先週は舞監・照明・音響の各スタッフが集まり止め通しが行われた。ひどいありさまで、10年前の私なら耳から火噴いて暴れまくっているところだが、最近の私は落ち着いたものだ。よほどテンポが悪くないかぎりちょびっとバクハツする程度で暴れない。必ず「ちゃんとなる」ことを経験で知っているからだ。仕上がらずにコヤ入りしたことは『プリンセスショック』以来一度もない。『プリンセス〜』だってゲネでちゃんと仕上げた。
今回心配なのは台詞のトチリだ。多い。そしてトチリをあまり気にしていないふうなのが心配である。トチるのを私が大目に見ると思うなよ。客にバレバレのトチリは絶対に許さん。蹴る。
昨日は音響ひろのさんと音をつけていった。いくつか宿題が残ったがおおかた決まった。音が入ると物語が整理されてくるといつも思う。特に4場は、音楽が入るとあまり考えなくても筋が追えるようになる。稽古の時は芝居をみるのに忙しく筋を追っていないので、私の頭の中はしっちゃかめっちゃかなのだ。
4場、MOMOで11人立つのは大変だが、きれいに絵を作れたと自負している。私のお芝居、ラストは全員で立つと決めている。4場で誰かを削るなんてこと、よほどの事情がない限り私にはできない。全員で稽古して全員で喜んで苦しんで、全員で終わりたい。

ああ、あと少しだ。全員で楽しみ、全員で別れを惜しみたい。
 
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 05:21 | - | -
時間がほしい(稽古場日記15)
場ごとに通してみた。ひどかった。台詞がスコスコ出ないのではお話にならない。いったいなんのための返し稽古だったのだという場面もちょいちょい出てきた。
「あ〜あ、また元に戻ってる」
と思っちゃうわけよ。
それが一番ガックリくるし頭にくる。私がバクハツするのはそういうときだ。

そんなわけでけっこう投げてる、今回の稽古場。
「投げてもいいけど眼鏡ケースだけはやめてください」
と佳美に言われた。
私は気付かなかったが、中から眼鏡が飛び出してしまい、佳美は壊れたんじゃないかと心配したらしい。
「悔しいより、ハラハラだった」
笑った。
むかし携帯電話を投げていたことを教えてあげた。なにを投げても意外と壊れないものである。

明日は最終衣装合わせ。どうも間に合わないらしい。
私の当パンの原稿も間に合わない。
チケット売るのも間に合わない。
時間がほしい。2ヶ月なんてあっと言う間だね
 
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 01:11 | - | -
当パン用写真(稽古場日記14)

当日パンフ用の写真撮影があった。
稽古は完全につぶして撮影に専念した。楽しみで朝からわくわくしていたのだがやっぱり楽しかった。
みんな上手になっていた。前は選ぶのがむつかしかった純一やタカシや佳美がとても良くて、みんなどこかで経験を積んできたのねと思った。タカシなんぞ元々モデル系のお顔なので、ぽけっとしていても絵になる。あー良かった。
今夜、佳美にうちへきてもらって「この一枚」を選ぶ作業をする。PC使って撮影の翌日にはもう選べてしまうのだからすごいことになったもんだ。
玉組は旗揚げから役者の写真は気合い入れて撮ってきた。それもこれも矢野さんというカメラマンの存在あってこそである。ありがとう。
お礼にと思って「公演が終わったらデートしよう。大人のデート」と誘ったら、「怖い」ときっぱり断られた。遠慮しなくてもいいのに。

そんなわけで佳美と一緒に夜中の1時まで作業したが結局終わらなかった。
データが次々とまりえから送られてくる。佳美がPCの操作をしてくれたのでほんとうに助かった。
私ひとりでは絶対に無理だった。いつものようにまりえに当たり散らしていたに違いない。
「わかんない! アップデートって何よっ。まりえのバカっ」
私がバカである。
まりえも私ではお話にならんと判断して最初から佳美と直接電話でやり取りしていた。
二人が電話で話しているのを初めて聞いたが、なんだかいい感じだった。PCを操作しながらまりえとやり取りする佳美がすてきだった。

そして喋っていることがなんのことやらさっぱりわからないバカな私が好きだった。
 

| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 02:48 | - | -
ぽけっとしていない(稽古場日記13)
昨日は稽古場にゆにっとのKAZUHOが陣中見舞いに来てくれた。おいしいお菓子とスカーフのプレゼントをもらったよ。いつも優しいKAZUHO、ありがとう。
そして今日は新玉組フレンズの舞帆ちゃん登場。なんと19才! 物怖じせず明るくて、とっても可愛いの。マイマイって呼ばれることになるでしょう。マイマイ、差し入れのお菓子ありがとう。
稽古場に見学者が居ると芝居がよくなる。できるんだったら普段からやれよと文句の一つもいいたくなるが、まあ役者とはそういうものなのだろう。見られてナンボの商売だから。

いかんなあ、羽生ノートをさぼりがちだ。
稽古を終えて帰宅し、何か食べたりお風呂に入ったりしているとまたたく間に2時くらいになってしまう。そんなわけでそろそろ体力的にくたびれてきているという理由はある。役者もくたびれているだろうが、私だって演出席にただぽけっと座っているだけではないのだ。信じられないと思うがたくさん頭使ってるんだからねっ。
今日は冒頭シーンを稽古したが、女子の若いもんトリオが良くなっていてやっと安心した。冒頭がダメだと作品のダメージが大きいので、「このままだったら役者を替えて書き直す!」とわめいていたのだ。
女子らは負けず嫌いだからね。「つまんない」と言いまくっていたら稽古したのか、立ち位置で解消できていなかったところが解消できたりしていた。
特に佳美は家で作戦練って稽古してくるから、「昨日と違う何か」が出てきていつも私を楽しませる。ちっちゃいところなんだけど、佳美が自分の気持ち悪かったところを自分自身で解消していくのがわかる。面白いよ。
と、このようにちゃんと見ているから女子たちは心配するな。誤解されているようだが、決して男子たちだけに見惚れているわけではない。私はぽけっとしていないぞっ。

しまった、役者をほめてしまった。役者を大っぴらにほめるといつものことだが口が腐りそうになる。
佳美っ、調子に乗んなよっ。
 
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 23:59 | - | -
衣装合わせ(稽古場日記12)
第一回衣装合わせ。
なんとソニーが早くも抜けた。一抜けである。まさか初日で決まってしまう役者が出るとは驚きである。自前で間に合った。いったいあとどれだけ素敵なスーツを持っているのか、ソニーんちの箪笥を覗いてみたい。
千歳は今日のために買ったジャケットがボツにされた。買ったと聞いてびっくり。なんで買っちゃったんだろう。恐ろしくて値段が訊けなかった。
男子はなんとかなるだろう。なんとなく方向性も決まったし。
女子はほぼ全滅。不安だ。
玉組の衣装合わせは本番ひと月前から週一回でやっていく。一場の頭から順番に当たっていく。統一感を探るために、シーン全体をとらえた衣装合わせである。第一回めは「とりあえず何かを着る」。シーンごとに見ていきながら、私は何かを思いつき、そして少しずつ指示を出していく。登場人物のキャラはあまり重要視していない。シーンとして立つかどうかが問題である。おしゃれであること、パワーがあることをまず考える。
今回は二場と三場が同じ日だからいつもより衣装が1コ少なくてすむと役者たちが喜んでいた。私も嬉しい。衣装合わせなんか大嫌いだ。自分の衣装ならとっとと決まるんだけどなあ。

佳美と「いいチームだよねえ」と話しながら帰った。
「男子と女子に別れず、混ざってていいですよね」と佳美。
みんなまだ明るい。ヤングチームも、若いとは言ってもエバれるほど若くはので、あまり疲れさせないよう顔つきを怠りなく見張っている。
私も元気だ。今回はよく食べるようにしている。夜11時頃ご飯を食べたりしているが後ろめたさはまったくない。お腹にお肉がついてきたけど見ないふりをしている。トレーニングスタジオで厭み言われても平気。今はとにかく元気であることが最優先だもの。

明日はオフ。みんな、いっぱい食べて体力の回復を図ってね。
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 23:15 | - | -
努力をしろ(稽古場日記11)
バクハツした。
でも全然反省しない。私の言っていること、間違っていないから。
台本が私の机から5、6回発射されたが、なぜか毎回千歳の足元に落ちてちょっとドキドキした。千歳に怒ったんじゃないのに。あのシーンに出ていた全員を叱ったのに。千歳が勘違いしてまた私と口をきかなくなると困る。昔千歳は私にびびりまくりで、私とまったく口がきけなかった。視線が合うと目が泳いで溺れていた。
今はもうそんなことはない。千歳は足元に落ちた台本を、落ちるたびに拾って、演出席の私に届けていた。びびってはいなかった。大人になったということだ。
本気で頭にきたのでよほど帰ろうかと思ったが、しかしそこはなんとか我慢した。とても気持ちの回復はできそうになかった。ところがちっと休憩して他のシーンを稽古したらあっさり回復した。要はテンションなのだ。集中しているかだ。役者が集中していればダメが出せる。私は楽しくなる。
台詞が入っていなかったとか、芝居がヘタだとか、そんなことはどうでもいい。昔と違ってそんなことで怒ったりはしない。
テンションが低いならせめて台詞くらいちゃんと出せ。芝居がヘタなくせになぜ努力をしないのか。私が言いたいのはそういうことだ。
芝居はチームワークだとつくづく思う。非は全員にある。全員で弾まない限り、リズムが必要なシーンは絶対に面白くならない。よく考えろ。

今日はオフ。例のごとくスタジオでサンドバッグを蹴ってきた。気合いが入る。また明日から稽古場で元気に吠えることができる。
汗を流すたびに、私の汚いものが浄化されていくような気がする。
 
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 23:13 | - | -
そろそろ半分(稽古場日記10)
純一がいつの間にかマイ木剣を購入していた。いいぞ。役者たるもの木剣の1本や2本は持っていた方がいい。今回の芝居が終わっても続けてくれるといいなあ。
殺陣大好き。本当は私もどこかで習いたいくらいなのだが、とてもじゃないが時間が見つからない。今のところサンドバッグ叩いたり蹴ったりするだけで精一杯である。戦いが好きだ。
時代劇ではないので殺陣シーンはちょびっとだけど、やるなら華麗にやりたいので毎日稽古時間を取っている。稽古場日記に殺陣シーンの写真が多いのはそのせいである。大騒ぎシーンなのでシャッターを切りやすいというのもあるかもしれない。
今日は四場。全員出払っていたのでアキラは稽古場日記用の写真が撮れず、集合写真を撮ってお茶を濁していた。
四場だけでいいから演助が欲しいなあ。ホンも追わなければと思うのだが、ふと気付くと舞台しか見ていない。役者の台詞が出ないと私の方が「えっ、どこどこ?」とあたふたページめくって焦る。老眼でホンが読めないわけではないぞっ。このごろ稽古のときはちゃんと遠近両用じゃっ。
作家によってはホンがまるまる頭に入っていると聞くが(三谷幸喜なんかもそうらしい)信じられない。私なんぞ何一つ覚えていない。ここだけの話、本番で役者が2ページくらい飛ばしても気付かないと思う。
ここだけの話ね。役者に知られるとまずいから。

すでに稽古も半分が過ぎようとしている。早い。
そんなわけで、いよいよ21日から木曜日ごとの衣装合わせが始まる。衣装合わせのことを考えるとゲロ吐きそうになる。きっと苦労する。亜夢が泣かなければよいが。

女優がたまに泣く。
 
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 02:24 | - | -
手ぐし(古場日記9)
ひろのさんと伸一郎が早々に稽古場に来てくれたよ。スタッフが動き始めるとだんだんあせってくる。
飲みに行った。楽しかった。伸一郎と話すのはいつも楽しい。役者が騒いでいるのをながめるのも楽しかった。
本日は若いもんシーンでうまくいかなかったところがあったので、タカシやnobがそのことを面白おかしく反省していた。私が絶望に陥っていたことを舞台からしっかり見ていたのだ。それで初めて知ったのだが、稽古をつけていて絶望的になると、私は髪の毛の中に両手を突っ込むらしい。知らんかった。めっちゃわかりやすい演出家じゃん。いかんいかん。
今日も若いもんシーンでそれをやっていたと、タカシが言う。
そのシーンに出ていない千歳も言っていた。
「あ、手ぐし出た! ダメだ、と思った」
手ぐしかよ。
役者を見るのが私の商売だが、役者も私を見ていることを肝に銘じておかねばならぬ。
それにしても、出ていない役者が私を見るのはわかるが、舞台に出ている役者まで私を見ていちゃいかんだろ。油断も隙もない。盗み見しているのはあきらかである。
これからは頭が痒くても掻くこともできない。

役者たちのお喋りをながめながら、私は伸一郎に言った。
「私、めぐまれているよね」
伸一郎はマジ顔で応えた。
「そうですよ。羽生さんはとてもめぐまれてますよ」
そうなのだ。私はめぐまれている。嬉しかった。
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 01:36 | - | -
急遽の殺陣(稽古場日記8)
今回はせっかく殺陣師の千歳がいるので、時代劇でもないのに殺陣シーンを作った。唐突だろうがなんだろうが私が好きだからいいのである。なんだったら30分くらい殺陣シーンにしてもいいくらいなのだが、さすがにそうもいかず残念である。
純一は未経験者だが、稽古場でやってみたい発言がちらりとあったので、急遽やらせることにした。私の稽古場では口にしちゃったらオシマイなのである。
純一は、今のところ芝居はとてもよくやっている。上手いと思うところもしばしばある。このままどうかおじいさんにならないようにと、私は毎晩神様に祈ってから眠りについている。純一は疲れるとおじいさんになるのだ。縦に長いので、疲れてぽーっとしていると、ホコリをかぶったスタンド照明に見えることもある。

というわけで純一登場のために少し殺陣シーンを作りかえた。その流れでnobにも一手つけたのだが、それが上手い。聞けば経験ありと言う。
なんだとーーーーーーっ! そんなこと私は知らんぞっ。
ホン書き中にまりえに指示して殺陣の経験者を調査させた。役者一同の殺陣レベル一覧がメールで送られてきたが、nobは「まだ返答なし」であった。その後なにも言ってこないので、未経験者なのだろうと思って殺陣チームには入れなかった。
nobはまりえに経験ありとメールしたと言う。まりえも私にメールしたと言う。私は絶対にそんなメールはもらっていないと言ったのだが、まりえはまりえで絶対に送ったと言い張る。いつになく強気である。
昨夜帰宅してから、ねちっこい変質者のように受信履歴をチェックしたが、やはりそんなメールは見つからなかった。私は悪くないぞ!
まあよい。今更しかたがない。殺陣シーンなんぞ私の腕にかかれば、今からでも簡単に伸ばせる。
しかし、昨日急遽つけたnobのシーンがなかなか評判良く、佳美も「あれを取りやめるのはいやだ。あれはおいしいっすよォ」と言うのだ。そっかあ、やだあ、どうしよう。殺陣をやってからのあれだと効果がないしなあ。と、心迷う私であった。

今ごろ純一がまたぶつぶつ言っているかも。
「もしnobに殺陣経験ありと羽生さんが知っていたら俺の殺陣はなかった」
なにしろ純一は『寒い国から〜』のときに、「もしnobが出ていたら王子の役は俺ではなくnobだった」などととんでもないヒガミ発言をしたのだ。
まったくとんでもない。
「そ、そんなわけないでしょっ!」
と、いちおう言っておきたい。
どもってるけど。

 
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 07:30 | - | -
思いのほか早く(稽古場日記7)
稽古帰りにエアポとお好み焼を食べていたら、先に帰ったと思っていた雅紀が戻ってきてちょっと驚いた。
お好み焼を食べたかったかったわけではあるまい。食べたかったかもしれないが、こらえてキャベツのサラダを食べていた‥‥私は今夜は食べていいと勧めたのだが。
まあ正解ではある。今夜は勧めても、明日私の気分が変わっているのはあきらかで、もし食べていたら稽古場でボロクソ言われていただろう。
話をしに来たのか。それとも他の役者が誰も付き合わなかったと聞いて気を遣ったのか。主演俳優は背負うものがたくさんで大変なのだ。で、背負ってるものの中で一番重たいのが私である。しかも無駄に重たい。
エアポが居たとはいえ、他の役者ナシで雅紀とご飯を食べるのは初めてである。雅紀に言っておかねばと思っていた話があったのだが、機会は思いのほか早くやってきた。よかった。
雅紀のアゴも思いのほか早く尖ってきた。芝居がからめばストイックである。
「いい作品になると思う。あとは俺がしっかりすれば」
頼もしくて泣きそうになった。この頃すぐ泣きそうになる。
みんな気付いていないと思うが、稽古場ですでに3回くらい泣きそうになった。

ああ幸福だと、お好み焼をつつきながら思う。
この公演が終われば明日死んでもいいと、桜を振り仰ぎながら思う。
今、たった今、役者たちの顔を思い浮かべて泣きそうになる。
 
| 羽生まゆみ | 狐の姫と詐欺師たち | 02:02 | - | -
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