羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
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クランクアップ

スマホチェックをすると麻理枝からメールが来ていた。

「無事クランクアップしました」

私はそのとき東京駅に向かう地下鉄の中に居た。

クランクアップ? 撮影は三日間の予定である。今日は二日目。翌日の最終日には参加するつもりで、私はロケ地である千葉に向かっていたのである。朝早く一人で千葉へ行く自信がなかったので、ビジネスホテルを予約して前日の乗り込みであった。

私は思った。取り敢えずの撮影は全部終わったからクランクアップなのね。きっと取り漏れているところを明日撮影するのだわ。

念のため私は麻理枝にメールを打った。

「明日はもう撮影ないの?」

「はい、明日はないです」

私の訊き方が悪かった。麻理枝は自分の撮影はもうないと言いたかったのだろう。他の役者はまだあるはず。たとえば純一とか優太とか佳美とか。

東京駅でうろちょろしていたら、今度はEricoから連絡がきた。私が撮影用に貸していた衣装やパソコンなどの荷物を、明日私の自宅まで持ってきてくれると言う。

そしてやっと理解した。なるほど、撮影は本当にこの日全て終わったらしい。

メールを打った。

「でもErico、私明日お家に居ないの。撮影だと思って今稲毛に向かっているから。せっかくだし、明日は千葉観光する」

Ericoのビックリが想像できて申し訳ないやら可笑しいやらであった。

Ericoとのやり取りがあり、結局私の宿泊先に荷物を持ってきてくれることになった。すまんねえ。私なりに気を遣って、みんなに黙って前日の現地入りにしたのだが、結局迷惑をかけることになってしまった。いつもそうだ。気をまわし過ぎて失敗するのが私という人間だ。

 

21時前にチェックインした。

ああ、なんという侘しいホテルだろう。

そりゃそうだ。寝るだけだからと、一人で泊まれるいっちゃん安いホテルを選んだのだ。そもそも稲毛にホテルが存在していなかった。APAホテルはなかった。ネット予約なんてやったこともないのに、泣きそうになりながら頑張ったのだ。

汚れの目立つ絨毯に、とても足を突っ込む気になれないスリッパ。なのでベッドの上に避難して、なるたけ歩かないようにした。シャワーは浴びている途中で冷たくなったり熱くなったりした。「ここは日本かっ」と思った。トイレットペーパーは残りが少ないというのにストックが見当たらず怯えた。

これまで何か書くとき簡単に侘しいという言葉を使ってきたが、これが本当の「侘しい」だと思った。身に沁みてわかった。

 

ロビーでEricoの顔を見たときは救われた気分だった。

私が部屋から降りていくと、カウンターの前で受付相手に何かこちゃこちゃやっている。荷物を宅配便で送る算段をつけてくれていたのである。段ボールをもらってくれた。これで私はこの寒い夜、段ボールを求めてコンビニめぐりをしなくてよくなった。「侘しい」と同じくらい「気が利く」が身に沁みた。いや、心に沁みた。

菅原さんとヒロも一緒に来てくれていた。四人でしばらくお喋りして、別れるときは私もついて帰りたかった。「置いていかないでーっ」なのである。

映画の勉強をしている大学生のヒロは、私たちの新しい仲間だ。Ericoがどこからか咥えてきた。今回いろいろ手伝ってくれたのだが、人見知りしないし本当に感じの良い男の子。これを縁にまた何か一緒にできればと願っている。

そして役者及びスタッフみんな、矢野監督、ありがとうね。結局私は初日しかつき合えず、しかも役立たずのまま終わってしまった。つーか、迷惑かけて終わった。

お疲れ様でした。

顔向けできないし恥ずかしいので、私はしばらく籠ります。

 

ちなみに翌日は雨で、千葉観光どころか、ホテルから徒歩3分の浅間神社にさえ行く気にならず、朝一で東京に戻ったのであった。

雨がまた、いっそう侘しさを増幅させていた。

 

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