羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
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あの道この道

8月は、ミケのライブとEricoの芝居とゴローの落語、加えて映画を四本観るという、私にはめずらしく活動的な日々であった。

私の役者達はみんな頑張っているなあ。私なんぞダラダラしまくりである。

ゴローの独演会にはEricoとクマと三人で行った。この頃再会したクマは、先だっての羽生ノートに書いたようにゴローと『覇王伝』で共演している。誘ったら来てくれた。ちなみに『覇王伝』の主役である千歳は誘っても来なかった。

いやあ、ゴローはたいしたもんだね。私のまわりはファンのおばさまたちでいっぱいだった。

「上手よねえ」

「精進していらっしゃるから」

幕間でのおばさま方のお喋りが私の耳にはたいへん心地よかった。「昔はね、私の弟子だったんだから」と、なにも教えていないのに自慢したかった。オリンピック選手が3歳の頃に通っていたスイミングスクールの先生と同じ。ありがちなパターンである。

まったくだ。なにも教えていない。「普通に歩け」とか「もっとリラックスして歩けないの? あなたはロボットですか」とか、よりによって落語家にはほとんど必要のないことばっかダメ出ししていた。一番恥ずかしいのが社交ダンスを習わせたことだ。こんなことなら日舞か太鼓でもやらせておくんだった。本当に申し訳なかった。

 

同行のEricoは二日前に舞台が終わったばかりで、夏枯れの草みたいに干からびていた。

公演の中日に役者が降板したとかで公演期間中は怒りまくっていたが、千秋楽から二日たった今ではすっかりウェットになっていて、「みんないい子たちだった‥‥」などとしみじみモードにスイッチが切り替わっていた。なんだかんだ言いながら楽しかったのだろう。

中日に役者が降板するとは、考えたくもない恐ろしい出来事である。幸い演出の寺本さんが現役の役者さんなのでホンを持って代役に立ったが、私にはとてもできない芸当だ。

『サンタクロース〜』で私がEricoの代わりにホンを持って立って、「粉雪はさらさらと‥‥さらさらと降りしきり振り積もり‥‥」などと喋ったら客席から失笑が漏れるだろう。誇り高い私はすぐさまホンを舞台に叩きつけ、そのままEricoを殺しに劇場を飛び出したに違いない。

Erico、お疲れ様。早く潤えよ。

 

ミケは音楽活動に再び力を入れている。毎回ライブハウスの客席で、私はミケと過ごした日々を懐かしみながら涙ぐんでいる。美しいミケ、ミケは私のところに少し寄り道して、そしてまた本来の道に戻ったんだなと思う。

逆の意味で、Ericoは本来の道から脇道へぴょんぴょん跳ねて行き、さんざん遊んだあげくまた小劇場に、私のところへ戻ってきたのだ。

私が観劇した日の夜に電話があった。明日は楽日だというのに2時間近く喋っただろうか。長々と喋ったあと、最後にEricoは私に訊いた。

「何かないですか。もうやれることは他にないですか」

懐かしい台詞だ。客演した舞台を観た私に、Ericoが必ず吐く台詞である。訊かずにはいられないのだろう。私は、Ericoの、演出家だ。

 

ゴローはいくつかの道から行き先の見える道をしっかり選び、一歩一歩、歩み続けている。

私自身は一本の道しか知らなかったが、途中で右か左に曲がっていたら、とっても幸せになっていたんじゃないかと、しょっちゅう思う。

 

| 羽生まゆみ | - | 23:03 | - | -
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