羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
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セコンド(練習生日記4)

『シリウス〜』の稽古期間は一ヶ月ちょいしかなかったので、休みがほとんどなかった。息もつかずぐわーっと入り込んでいたから、稽古も終わり近くになった頃、急に不安になった。

「公演が終わったら何をしていいのかわからない」

私が心配を口にすると、Ericoは言った。

「ボクシングがあるじゃないですか」

まあ、そうだけど‥‥

Ericoが笑いながら言った。

「試合のときは私と純一でセコンドにつきます」

勝手に決められた純一が驚いて言った。

「ゴングと同時にタオル入れていいならやりますけど」

私のボクシング姿が痛々しくて見ていられないらしい。

ふん、失礼な。

 

ボクシングの練習はさっそく再開した。

先日トレーナーにマスボクシングを指示されて仰天した。

マスボクシングとは、本気を出さずに寸止めで行うスパーリングのことである。ときどきやっているのを見たことがあるが、マイシューズやマイグローブを持っているような上級者がやるものだと思っていた。

やだあ。恐いというより恥ずかしい。こんな初心者なのに。

相手は上級者の壮年男子である。シューズやグローブがマイであることはもちろん、バンデージも私のようなスポッと装着する簡易タイプではなく本物である。ぐるぐる巻くやつ。

「ナントカさん、羽生さん始めたばっかりだからよろしく」

トレーナーがそう言うと、ナントカさんは私ににっこり笑いかけてくれた。あー良かった。睨みつけられたら(タイトルマッチでありがちなやつね。記者会見のときなんかにやるやつ)どうしようかと思っていた。

リングに上がり、ブザーと同時に3分間のスパが始まった。ジャブとストレートとフックしか持っていない私にどうしろって言うのよーォ、と思ったが心配無用だった。せっかく持っているフックを使用するチャンスさえ無かった。ジャブとストレートを交互にくり出すだけの、ほとんど幼稚園児のケンカ状態であった。純一が居たら絶対にタオル投げられていたと思う。

セコンドからトレーナーの声が飛び、それはちゃんと聞こえた。

「四つ打て!」とか「二つ!」とか、「下に飛び込んで!」とか「足動かす!」などの指示である。「まじ、ボクシングだ」と思って感動した。

1ラウンドだけのスパだったけどけっこう息が上がった。ひどいデキだったから、たぶんしばらくやらせてもらえないだろうなあ。

よーし、またやらせてもらえるように頑張るぞと、決意新たな私であった。激を飛ばされるのが好きなのだとつくづく思う。もっと怒られたい。

 

すべての練習が終わってお水を飲んでいたら、ナントカさんが話しかけてくれた。

「初心者とは思えない良いパンチでしたよ」

「ええっ、ほんとですか?」

やだあ、嬉しいじゃん。怒られるのも好きだけど褒められるのはもっと好きだ。

そしてナントカさんは相手のパンチを払う方法を教えてくれた。とっても良い人だ。やっとここでお友達が一人、できた。

| 羽生まゆみ | 練習生日記 | 20:51 | - | -
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