羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
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大パニック

洗濯機の給水ホースが水栓から外れたときの水漏れ事故がどんな状況になるものか、ご存知の方は少ないと思われる。私自身、とんでもなく大変ということはなんとなく聞いていたが、実際の状況は私のイメージをはるかに越えるものであった。

空青く晴れ渡った晩秋の午前中、私も洗濯に大忙しだったが、あっちでもこっちでも洗濯機は回っていたに違いない……もちろん1003号室も。

 

ふと、キッチンでミョーな音がしていることに気づいた。シンクに水が落ちる音である。水道を閉め忘れたのだろうか。それにしては音がデカい。何だか変だ。

様子を見に行って腰が抜けかけた。なんと、天井から滝のように水が流れ落ちていたのである。

滝は一つで治まらなかった。抜けかけた腰を立て直す間もなく新たな音が加わったのだ。玄関だ! このときはもう「1003号室がやらかしやがった!」とわかっていた。洗濯機の給水ホースが外れていることも。ぼーっとしているヒマはない。頭に浮かんだのは「電話をしなくては」であった。どこに? 管理会社だ。携帯を手に取った。その時、居間に三つ目の滝が出現した。

どひゃーっ!

そばにはパソコンがある。ノートパソコンとデスクトップの両方を大わらわで避難させた。

そんなあいだも滝はますます勢いを増している。さあ電話だ。ところがどこを押せばいいのかわからない。ラインを開いたりEメールを開けたりめちゃくちゃである。ああ、私パニックに陥っていると思った。

電話帳アプリを見つけた。これだ。だが今度は管理会社の名前が思い出せない。電話帳の「あ」から順番にさがしていき「み」で見つかった。こういう時お友達の少ない私はラッキーである。これがKAZUHOやEricoだったら登録件数が多すぎて明日の朝までかかるだろう。

 

長くなるので管理会社との細かい遣り取りは省く。とにかく「早く来てくれ」と叫びまくった。

耳にスマホを押しつけたまま階段を駆け上がる。1003号室のドアをノックし、ドアノブを回して引っ張った。あら? 開いた。居るの? 洗濯機の回る音が聞こえた。

私は奥に向かってわめいた。

「ちょっと! 何やってるの! 洗濯機のホースが外れてるわよっ!」

休日を楽しんでいたに違いない青年が「へ?」という顔で出てきた。

不幸中の幸いだった。これですぐに水は止められる。

「洗濯機! 水! 早く止めて!」

休日男子はなんだかわからないという顔でいったん引っ込み、再び出てきた。

「ホース、外れてたでしょっ」

「はい」

「うち、水漏れでとんでもないことになっているんだからねっ!」

「すみません」

私は役者を怒鳴るときと同じくらいの声を張り上げた。

「すみませんじゃすまないわよ!」

シマッタ、携帯はまだ管理会社と繋がったままである。

「ごめんなさい。今の1003号室に言ったの」

「はい、わかってます」

「とにかく早く来て。生易しい水漏れ事故じゃないんだから。すごいんだから。滝みたいに落ちてるんだから」

「わかりました」

電話を切ってから青年に、

「一緒に来て」

二人で階段を下りた。

玄関に立ち、二人で流れ落ちる滝を眺めた。

青年は言った。

「ホースが外れるとこんなふうになるんですか?」

わりと落ち着いた声だった。

私は答えた。

「そうだね。なるみたいだね。なってるよね」

この時点ですでに怒りは収まっていた。なんかもう笑っちゃいそうになっていた。

 

この後、大量の給水シートを抱えてやってきた、本人言うところの「施工会社の下請けの下請け」という人とのやり取りも面白かったが、ここまでの書き込みですでに長すぎるのでこれも省く。

 

重ねて不幸中の幸いと言うか、不幸中の幸いが二個あればたいした物だが、滝は電化製品を避けるように落ちており、滝の大きさの割に被害は小さかった。

1003号室の兄弟はちゃんとしており、夜、兄がビシッとスーツを着て挨拶に現れた。菓子折持参である。

「弟がごめいわくをおかけしました」

私は「もう怒っていないから」と言った。それから、こうも付け加えた。

「今後一生私に使い倒されることになるんだからね。重たいもの動かすときは呼ぶからすぐ来てよ」

実際、間近に濡れたカーペットの取り換え作業がある。カーペットはすでにAmazonに発注済である。

「わかりました。いつでも呼んでください」

いい子だ。私の男優たちよりよほど役に立つと思った。

 

そんなわけで電話番号を訊き、しばらくしてスマホの電話帳に登録した。

すぐさまラインが来た。

「登録しました」

びっくりした。ひょんなことから貴重なライン友達ができた。

 

「おやすみ」のスタンプを送っておいた。

 

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