羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
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行き当たりばったりについての何度目かの書き込み

演出家のブログなのだから、たまには創作について話をしよう。

つまり、どのようにホンを書くかである。ここに何度も書いてきたことであるが、新しい読者も3人くらいは存在すると思うので。

 

私には普段、書きたいことがまるで無い。作家によっては日頃からテーマをいくつか抱えていたりもするらしいのだが、私にそんなものは無い。

私に創作意欲が湧き出てくるのは、俄然やる気が出てくるのは、出演の役者がはっきり決まったときである。それまでは台詞なんぞ一行も書きはしない。

だから、麻理枝やEricoから出演の依頼があったとき、役者たちは「どんな役なんだろう」とか「台詞はいっぱいあるのだろうか」と考えても無駄である。私はまだなーんも考えていないのである。

過去、Ericoに誘われた役者が、私と直接話したいとのことで電話をかけてきたことがある。(ここにも書いたことがある。)

どんなストーリーなのかと探りを入れ、自分がどんな役なのか更に探りを入れたあげく、彼は言った。

「稽古期間と映画の撮影が重なるが、もし芯を取る役なら玉組の稽古を優先してもいいとマネージャーが言っている」

なんと、私と取り引きしようと言うのだ。驚いた。

探りを入れられている間、今は何も決まっていない旨を、私はホンの書き方を交えながら丁寧に説明したのだが、何も理解していなかった、というか私の言葉を信じてもらえなかったのである。

 

ホンの書き方は作家によって千差万別だと思う。まずストーリーを箱書きしてから書き始めるという作家もいれば、行き当たりばったりに書くという作家もいるだろう。私は完全に後者である。

「何もないところからなどと言うが、そんなことはおよそ信じられない。書きようがないではないか」

当然の疑問である。

私が最初にやる作業は、チョーメンの第1ページに、出演する役者の名前を縦にずらっと書き、横に役名を付けていくことである。(この作業はなぜか手書き。PCではない。たぶんオマジナイみたいなものなのだろう。)

それから、いったいここはどこだと考える。物語の背景となる場所(湖畔とか深い森とか)と、実際に役者が芝居をする場所(バンガロー風の邸宅とか階段があるとか)を考えるのだ。

そしてキャラクター同士の関係を仮に、あくまで仮として考える。この人とこの人は叔母と甥とか、この人達は幼馴染みとか、そんなことだ。この時点では仮でしかない。

そんなことを集中して考えている間に、何かがぴかんとひらめく。私はそれを演劇の神様のご降臨と呼んでいる。神様は私に何かを授けてくれる。それはたいがい「絵」であることが多い。湖畔に轟く銃声と飛び立つオオハクチョウ、クローバーの絨毯に寝転ぶ幼い兄弟、月光輝く湖で泳ぐ馬とかね。そんな絵を結びながら物語の筋ができてゆく。

今私は『いななきの森』を例にとったわけだけれど、これも役者の顔ぶれを見て4人兄弟の話にしようと思った。4人兄弟の物語にしたいから4人の男優を集めてね、と言ったわけではない。

『いななきの森』は内藤家の家政婦である砂子の長台詞から物語は始まる。なぜ砂子に喋らせることにしたのかは思い出せない。過去を語るのは内藤家の当事者ではない方がいいと思ったのかもしれないし、単にEricoの長台詞を聞いてみたい衝動にかられただけなのかもしれない。(危険な衝動である。)もう忘れたけれど、Ericoに長台詞を喋らせたかったから、Ericoを家政婦にしたのかもしれない。

そうやって物語は創られていく。書き始めてから創られてゆくのだ。

 

まだ書き始めてもいないのに、何かの「絵」を見てしまうこともある。私のいけないところはそれを黙っていられないことだ。書き始めていない時点で思いついちゃったことなんぞ大概が変更になるのに、よけいなことを口走ったせいで役者に妙な期待を抱かせてしまったりする。

「Erico、次は演歌歌手だからね」

「えっ、イメージで言うと坂本冬美ですか」

「うん、そう」

で、髪の毛をドッカーンと結い上げた妖艶な演歌歌手をEricoは想像しちゃうわけである。当然である。

ところが稽古が始まると「髪型はオカッパ」などと言われてしまう。Ericoのガッカリは想像に難くない。

というわけで何が言いたいかと言うと、役者達は初読みの際、ホンを読んでガッカリしないでね、ということだ。ストーリーはまだわからない。キャラもわからない。何もわからない。だから何も想像しないで。想像するときっとガッカリする。

今この書き込みをしている今日、物語は何も決まっていない。オジサンたちが歌を歌うとか、舞台を半地下にするとか口走っているが、はっきり言ってそれもどうなるかわからない。

私はまだ、一行も書いていないのである。チョーメンに、役者の名前さえ記していない。

 

めっちゃ言い訳がましい書き込みになったぞ。

私の真意は伝わったかな?

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 16:40 | - | -
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