羽生ノート

羽生一家玉組座長・羽生まゆみが気儘に綴る日々雑感です。
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モリエールの楽屋(お詫びに代えて)

モリエールがやっちまった。(もちろん一番の罪は主催者にあるが、こんなヒトタチ、私の知り合いでもなんでもないのでどうでもいい。)

それを知ったのは、私たちの公演中止発表について玉組会議のみんなと電話会議をしたときであった。

新宿の劇場でコロナが発生したらしいというので、いったいどこだと麻理枝に訊いたらモリエールだと言う。その時点での感染者は3人だか4人だかで、電話が終わってネットを覗いたら14人になっていた。

モリエールはその昔、小劇場のコヤとしてそれなりに一世を風靡した。Ericoなどもモリエールに立つのは憧れだったと言っていた。この頃ではもっぱら芸能事務所や吉本芸人が使っていて、もはや小劇場の殿堂ではなくなっている。それがどーのというわけではなく、ただ下北沢の劇場などとは風合いが違ってきたということだ。

玉組では5回使っている。劇団を揚げたばかりの頃に3回使って、そのあと下北に移り、再び戻っている。なんで戻ったのか理由は忘れた。戻って打った『地下室のダンディ』はモリエールにとてもよく似合っていて、コヤも含めて作品なんだとあらためて知った。

つまりモリエールの思い出はいっぱいだ。一つ一つのシーンが鮮明なのは、モリエールを使っていたのが劇団を成功させようと懸命だった頃だからだろう。

 

モリエールの楽屋については屈辱的な思い出がある。初代主演俳優の中神に丸椅子一個渡されて言われた。

「羽生さん、そこに座った方が役者たちがよく見渡せますよ」

たぶん化粧前の数より役者の数が多かったのだろう、私の化粧前を用意してもらえなかったのだ。

それはいい。よくないけどまあ我慢する。私が傷ついたのは、「役者たちがよく見渡せますよ」というおためごかしである。まるで私のためであるかのような言いっぷりは、大人が子供を納得させるときによく使う手である。

「あらマリエちゃんはピンクがとっても似合うのね。ピンクは可愛い子しか似合わないのよ。じゃ、このお洋服を買いましょう」

本当はピンクの方が黄色より安いからである。私は三歳児の頃からこういった大人のおためごかしを見抜いていた。別に傷つかなかったのは、自分が子供だということをちゃんと知っていたからである。

私は役者たちが顔をそろえた満座の楽屋で恥をかかされ、恥ずかしさに震えた。頭のいい役者ばっかだったので、私の屈辱を推し量ってさぞ居心地が悪かっただろう。いたたまれなかったに違いない。私の顔から急いで視線を逸らしたと思う。

もしこれが匡人なら、丸椅子を渡しながらこう言う。

「じゃまだからそこにポツンと座っておけ」

これなら私は傷つかない。

 

玉組の公演が中止になったことを、楽しみにしてくださっていたお客様と、キャスト・スタッフに心からお詫び申し上げる。本当に申し訳なかった。

また、2020玉組会議の面々には、この騒動に巻き込んでしまったことを特に詫びたい。ホン書きにかこつけて後始末をさせていることが心苦しい。あと少し、よろしく頼む。

2作品連続上演という私にとっても楽しみな企画だった。残念である。しかしこの状況では致し方ない。

悔しいからホンは上げる。ホン読みを目指して書く。

 

役者たちにお詫びと愛を伝えたら、役者たちからも愛が返ってきた。

鹿児島のゆかり(玉組の元演助。2トントラックの運転もする)からも愛を伝えるメールがきた。『双子の庭』で恋をして『23時のブランチ』で愛に変わったと書いてあった。

芝居の中止とは関係ないと思うが、匡人からも「一世紀に一度羽生さんが恋しくなる」とメールが来た。Ericoが激怒しそうなので言いたくないが、「私は常にあなたが恋しい」と返信した。

 

私はまだ頑張れると思う。

| 羽生まゆみ | 2020玉組会議 | 23:40 | - | -
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